ニュースの中の言葉をわかりやすく説明する「ニュースの?」のコーナー。
今回は「子ども手当」についてです。
今年度から始まる、子ども手当の支給に向けて、県内の自治体では、必要な申請書の受け付け作業の対応などに追われています。
このうち長野市では、連休明けから多くの申請書が届けられ、担当の職員が書類を振込先の金融機関別に仕分けるなどの作業に追われています。
長野市は、およそ1万2000世帯に申請書を送り、一次の締め切りをきょうに設定しています。
この「子ども手当」について、まず仕組みについて説明してもらえますか。
はい。子ども手当は社会全体で子育てを支援しようと民主党が去年行われた衆議院選挙で公約の柱に掲げ、政権を獲得するうえで大きな原動力となったものです。
政権公約・マニフェストでは1人あたり月額2万6000円でしたが、財源の問題などがあって、初年度にあたる今年度は中学生までの子ども1人あたりに月額1万3000円が支給されます。
長野県では支給対象者は27万人あまりとなっています。
自治体に申請書が届けられていましたが、何もしなくても受け取れるということではないのですね?
申請が必要な場合があるんです。
これまであった「児童手当」は小学生までが対象でした。それが今回の子ども手当は、給付の対象が中学生までに広がっています。所得制限もありません。
新しく対象になる子どものいる家庭は、手続きが必要だということですね。
3月末の時点で、児童手当を受け取っている子どもだけがいる世帯は、手続きが必要ありません。
しかし、中学生の子どもしかおらず、これまで児童手当を受け取っていなかった世帯と児童手当を受け取っている子どもに加え、中学生の子どもがいる世帯。
こういった家庭は、手続きが必要です。
さらに、子ども手当には所得制限がありませんので、これまでこうした制限のため児童手当を受け取っていなかった家庭も手続きが必要になるんです。
自治体の窓口に行く必要はあるのですか?
いいえ。手続きが必要な家庭には、自治体から申請書が送られています。
書類に必要事項を記入して送り返せば、窓口に行く必要はありません。
子ども手当は年3回に分けて振り込まれ、今年度の4月と5月分は、6月に振り込まれることになっています。
このうち長野市は一次の締め切りを5月10日に設定していて、この日までの消印で申請書が届いた場合、6月15日に初めての子ども手当が振り込まれます。
ただ、締め切りのあとでも申請書は受け付けられ、9月の振り込み日に4月分からさかのぼって支給されます。
子ども手当の支給、子育てをする上でプラス面がある一方で、課題はあるのでしょうか?
課題は大きく分けて「自治体のサービスへの影響」、「今後の支給のあり方」の2点だと思います。自治体にはこれまで独自に子育て支援の政策を設けているところがありますが、この中にはサービスの一部を縮小しようという動きがあります。
県内でも、富士見町では「1人親世帯へ年間1万5千円を支給する激励金」と、「中学生以下で3人目の子どもがいる世帯へ年間2万円を支給する児童手当」の2つの制度について、廃止することを3月の町議会に提案しました。
国の子ども手当による恩恵が、廃止する額を上回ることと、町の税収減が廃止の原因です。しかし町議会で議論した結果、2つの制度の廃止を定めた条例改正案は否決されました。
この時にはこれまでの支援策をすぐにやめるべきではないという意見が多数を占めました。このような自治体独自のサービスの縮小は、将来的に支給額が満額になれば加速するおそれも指摘されているんです。
2点目の支給額ですが、今年度半額ということですから来年度は満額支給されないのでしょうか?
現在、どのように支給するかが大きな問題となっています。子ども手当をめぐる議論では、その効果が焦点となっています。現金で支給すると貯蓄に回してしまう人が多く、有権者の中には現金の給付よりも、待機児童を解消するための保育所の整備などにあてるほうが効果が高いという意見がありました。
こうした声を受けて、民主党の研究会は来年度増額して支給される月額1万3000円分は、現金ではなく子育て支援にかかわる財源にあてるべきだとする考えでまとまりました。しかしこれに対して長妻厚生労働大臣は、政権公約を変えるには相当な理由が必要だとして、2万6000円満額をあくまで現金で支給したいという考えを示しました。このため民主党の研究会も両論を併記した形で提言をまとめ、結論は、政府と党の執行部による議論に委ねられたかっこうとなりました。
来年度以降、子ども手当がどうなるかについては、この夏の参議院選挙の公約となるだけに、結論が注目されます。また、どのような形で支給するにせよ、満額支給するためには財源として5兆円以上が必要で、この財源をどのようにして確保していくのかも大きな課題です。