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【参院選2010】

長野

<争点の現場から>(1) 子ども手当

2010年7月6日

子育て政策に関心を寄せる大畑さん。育児と仕事が両立できる環境を望んでいる=上松町内で

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 おもちゃ遊びに興じる1歳の長男祐貴ちゃんの小さな背中を見つめながら、上松町の大畑智里さん(28)はつぶやいた。「この先何があるか分からない。将来には漠然とした不安がありますね」

 子育てを社会全体で支援するとして、昨夏の政権交代で誕生した民主政権の子ども手当の支給が6月から始まった。4、5月分として計2万6000円を受け取った大畑さんは全額、貯蓄に回した。夫とも話し合い「今後も、将来の子どもの学資のために積み立てです」と話す。

 大畑さんは長男を出産前、自宅から30キロ以上離れた木曽町内のスキー場に勤めていた。通勤は自宅から車で山あいの道を通って片道50分。

 出産後も仕事を続けようか迷ったが「子どもに何かあったときが不安」と退職を決めた。保育園に預けても、風邪をひいたり熱を出したりしたときに迎えに行くには時間がかかるからだ。

 現在は、同町内にある親せきの会社で事務の仕事をしている。同じフロアに祐貴ちゃんを遊ばせ、いつも目が届く。病気になったときは休みや勤務時間に融通を利かせてもらっている。

 「今の環境は幸運です」。育児との両立ができず、仕事をあきらめた友人もいた。それを思うとこんな実感を抱くという。

 同町の小松あいさん(28)は7歳、4歳、2歳の3姉妹の母。家計の足しにとパートに出始めてすぐ、3女が風邪をひいた。自宅で看病したが、長女と次女も相次いで風邪をひき、結局仕事を1カ月近く休まざるを得なくなった。

 「保育園しか子供を預けられる場所がない。いざというときに、友人や祖父母など頼める人を見つけておくほかない」と語る。

 受け取った子ども手当は、やはり将来のために貯蓄に回した。ここに来て、来年度以降の満額支給が財源問題を理由に事実上、断念されたことには「最初から期待させないでほしかった」と厳しい視線を向けた。

 木曽郡の4月1日現在の人口は約3万1000人で、10年前から14%減少した。だが、0〜4歳児数は10年前から約400人減って約1000人となり、減少率は人口を大きく上回る28%。

 松本、長野両市はいずれもほぼ10年前と同水準を維持しているのとは対照的。雇用の確保はもちろん、働きやすい子育て環境の整備も大きな課題になっていることがうかがえる。

 長男を出産後、子育て政策に一層関心を寄せるようになったという大畑さん。子ども手当は「ありがたい」としつつ、削減分は保育施設を増やすなどの政策に向けてもいいのではと思い、こう言った。

 「働き口が少ない田舎でも、安心して子育てができる環境がほしいですね」

    *  *

 終盤戦に入った参院選。政権交代や民主政権への評価、景気対策や地域づくりといった数多くの争点を、県民の暮らしの現場から見つめた。 (参院選取材班)

  子ども手当  中学生までの子ども1人あたりに本年度は月額1万3000円を支給する民主政権の目玉政策。県によると、県内の支給対象は約27万5000人で、支給総額は約428億円。満額は月額2万6000円としたが、民主党は来年度以降、保育所定員増などの現物サービスでの代替を提案。野党の一部は全面見直しを掲げ、自民党は保育所整備などを主張している。

 

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