きょうのコラム「時鐘」 2011年1月14日

 大学入試センター試験が行われる週末も、天気予報欄には雪だるまが並ぶ。雪の入試は北陸では珍しくない。3月の高校入試の日に、淡雪が舞うこともある

ドカ雪は願い下げだが、闘志を胸に雪の中を歩み出すのは、悪くない光景である。大事に立ち向かうときに、雪の白さが心を引き締める。赤穂浪士の討ち入りみたいで、絵になる

高倉健さん扮(ふん)する映画の侠客(きょうかく)もそうだった。見せ場の殴り込みに向かうとき、不思議と雪が降った。着流しで傘に雪が積もる。吹雪や嵐には絶対にならない。都合の良過ぎる雪の演出だと分かっていても、しびれた

赤穂浪士の討ち入りは、いまの暦では今月末。極寒の夜、足場の悪い雪の上でチャンバラをする難儀は、この地に暮らす者なら想像できる。ドラマは格好良過ぎる。実際は、雪に足をとられて負傷した浪士もいたという。播州赤穂の記念館で、そう教わった

大願成就の門出を、雪が静かに彩る。そんな週末であることを祈りたい。武運つたなくスベる人が出るのも世の常。だが、あの赤穂浪士も、雪に滑って転んでもひるまず、見事本懐を遂げたではないか。