船室貸切料金に関する若干の考察 | ||||||
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<0.はじめに> 私が船旅に行く場合は1人の事が多い。しかし船に1人用の船室を用意している所はあまりなく、2人用の部屋を1人で利用せざるを得ない。この場合、空席分を貸切料金として請求される事が多いが、その高さに驚いてしまう。この項ではその貸切料金についての現状と問題点を指摘し、適正な貸切料金について考えてみたい。 <1.貸切料金の実態?> では、はじめに貸切料金がどのように適用されているのか、実例を紹介する。 @貸切料金なしで個室を占有させてくれる。くわしく聞いたら、 相部屋には絶対しないとの事であった。(夏期以外の太平洋フェリー、東海汽船の特等など。) A混雑してきたら相部屋になる事を承諾して、貸切料金なしで個室に入室できる。夏休みなどで混雑しそうな日で相部屋 が絶対嫌なら貸切料金を払えば良い。多客期以外は問題ない。、 B特定の船室について貸切でないと発売しない。特等以上となることが多い。ただし、1等クラス以下となるとAの扱いと なるケースが多い。 その貸切料金の金額は? @大人運賃の75%(ぼったくり防止条例で摘発してほしい!) BHL西日本、大島運輸、マリックスライン、東日本フェリー、オーシャン東九フェリー A大人運賃の50%(子供運賃ということ。まあ妥当な処置) 太平洋フェリー夏期、新日本海フェリー、商船三井フェリー、マリンEXP、阪九フェリー、名門大洋フェリー他 B大人運賃の30%(良心的。個人的な考えでは適正価格と思う。) オレンジフェリー C大人運賃プラス数千円 有村産業の先島航路、関釜フェリー、カメリアライン <2.貸切料金はこんなに高い!> (数字は掲載当時のもので、以後改定されています。) 例えば、商船三井フェリーの大洗〜苫小牧航路の夜便「さんふらわあ つくば」に1人で乗船する場合の運賃を挙げてみる。(注:燃料油調整金400円が別にかかる) 2等6000円、2等寝台8500円ときて、個室は 1等A15500円、特等18500円なのだが、 1等Aは2名部屋で貸切でないと発売してくれず、貸切料金50%の7750円が加算されて23250円、 特等も同様で貸切料金9250円が加算されて27750円となる。 2等寝台と1等A、つまり相部屋と個室の差が14750円もあり、この不況の世の中、この差は大きく、1人で乗船する旅客の等級選択の幅を狭くしていると思う。1人なら2等に乗れってこと? ただ、上の例のように貸切料金を大人運賃の半額(つまり子供運賃)としている所はまだ納得できる。 納得いかないのが貸切料金を大人運賃の75%と設定している会社である。 BHL西日本で大阪〜志布志間に乗船する場合を例とする。 特等室に通常期に1人で乗船しようとした場合、 大人運賃20000円に貸切料金75%の15000円が加算されて合計35000円となる。 しかし、同じ航路で、大人1名と子供1名で乗船した場合、 大人運賃20000円と子供運賃は半額の10000円で合計30000円。 子供と大人の2名で乗船するより、1人で特等を貸切して乗船した場合のほうが、5000円も高い。 もっと皮肉を込めて説明しよう。 特等室で子供1名の人命を目的地まで安全に輸送する義務を負う運賃よりも、特等室のベッド1つを貸切する、つまり空気を輸送する料金のほうが5000円も高いのである。 当該等級に子供が実際に乗船する運賃よりも、貸切料金のほうが25%も高いとは、どう考えても納得いかない。貸切料金75%としている会社は、どうして子供が乗船するよりも25%もの高い負担を求めるのだろうか?いままで数社を利用する際に、なぜか?子供運賃では悪いのか?と問い合わせたが、どこも決まっているの一点張りで明快な回答をしてくれた会社はない。 この件に関して、会社のHPの記載の誤り(本当は75%なのに50%と記載していた。)を指摘し、75%の貸切料が必要な理由を質問したにもかかわらず、HPのミスを速やかに修正したくせに(メールは読んでる)その後無視し続けている ブルーハイウ●イライン●日本 さん! 答えられなくてもHPのミスを指摘したのだから、何らかの反応はあってもいいんじゃないの(怒!) <3.貸切料金は必要だ!> いままで、高額な貸切料金を批判したが、批判するだけならどこかの●でもできるので、もっと冷静に考えたい。ごくまれにだが、上級船室を定員以下で利用しても、貸切料金もとらず、相部屋にも絶対しないという会社もある。我々利用者にとってはうれしい配慮だが、これでは逆に公平性という観点で問題がある。2人部屋を1人で利用する人と、2人で利用する人で、1人あたりの運賃が同額ならどちらが快適だろうか?値段が同じなら1人1室が良いに決まっている。貸切料金不要、相部屋なしの場合、船室を定員で利用している人の権利を阻害することになる。定員以下で部屋を広く使用する人は、いくらかの割増を負担する必要であろう。極端なはなし、2人で乗船する場合でも、わざと別々に予約して1人1室とする人もいるかと思う。従って、公平性という観点から、貸切料金は必要であると思う。 <4.適正な貸切料金は?> それでは次に、適正な貸切料金について考えてみたい。 まず、船の運賃は等級制であり、1等、2等などの運賃が別個にあり、それに寝台や指定などの料金が加算されることになる。しかし、利用者の感覚からすれば、2等運賃というのが、目的地まで輸送して貰うための「運賃」で、上等級の運賃と2等運賃の差が、快適な船室を利用するという付加価値に対する金額つまりJRでいう「料金」(特急やグリーンなどの)という感覚であると思う。 貸切料金の趣旨は、船室を定員以下で利用した場合に、定員で乗船すればその会社の収入となるのに、定員以下で占有すると会社の運賃収入を阻害することに対する補償であると思う。従って、その金額は最高でも当該等級を発売できる最低の運賃、つまり子供運賃であると考える。簡単にいえば、子供が乗船したと扱えば、その会社に何ら迷惑をかけていないといえる。 多客期については、子供運賃で良いと思うが、それ以外の時期については、船室を満室にすることは滅多にないはずなので、その船が埋めることのできない席まで補償する必要はないかと思う。閑散期についてはもっと割安な貸切料金の設定が適切であろう。 具体的には、当該等級の子供運賃から2等の子供運賃を控除してもよいかと思う。つまり、当該等級の子供運賃のうち、室料に値する部分のみ負担するという考え方である。もし、これを実施したと仮定したら、最初に例を挙げた商船三井フェリーの大洗〜苫小牧航路なら、貸切した運賃から子供の2等運賃3000円を引いた額となり、1等Aで20250円(約30%増し)、特等で24750円(約33%増し)と、約30%となりなり、より利用しやすくなる。 という事で、私の考える貸切料金の適正価格は、多客期で50%、それ以外は30%である。 <5.貸切料金値下げの弊害> ただ、貸切料金を値下げすると、不正乗船という問題が生じる。例えば2人で乗船する場合でも1人で船室を貸切しておいて、もう1人は2等で乗船するという手口である。現実に、貸切料金50%であっても、特等に2名で乗船する場合なら、これが通用する。(1等なら同額だが)また、相部屋の可能性を承諾して船室定員以下で乗船する場合でも、閑散期なら1人が1等で乗船し、他が2等で乗船して船室を不正利用する者の存在が予想される。これらのような、不正を行われない対策が必要であろう。これについては、小笠原海運で行っていた放送が適切かと思う。「部屋によってはベッドが空いている場合がございますが、絶対にお使いになりませんようお願いいたします。」これに、「場合によっては運賃を請求する場合もございます。」を付け加え、チェックインの際にも空いているベッドの使用をしないよう注意喚起をすれば効果があるかと思う。オーシャン東九フェリーの全ての個室のドアには「切符を持っている人以外の入室禁止。面会は外で。」との掲示もある。そして不正乗船が発覚した際には割増運賃など断固とした処置をとればよい。 <6.完全室料制という方法もある!> 個室を完全に室料制とする方法もある。野母商船で実施されているし、従来は神戸〜高松間のフェリーの一部で行われていた。これは、2等運賃を人数分払って、あとはその部屋に定員まで何人で利用しようが、一定の室料がかかるという方法である。これだと、定員以下での利用はかなり割高だが、極めて公平であるので子供運賃との不公平感はない。完全な室料制として、シーズンによって値引きをするという方法もあるかと思う。 <7.シングルルームの設置意義> 貸切料金の問題を解消する方法は「シングルルーム」の設置であると思う。1人部屋があればどんな人数で乗船しても予約さえ取れれば人数ぴったりでの部屋割りができるので貸切料金の問題が生じない。たしかに1人部屋は面積あたりの効率は悪いが、閑散期に4人部屋等に定員以下で多くの乗客が別々に入室して部屋を清掃するよりも良いのでは ないか?タオル、せっけん等の備品を定員分しっかりと持ち帰る乗客もいるので無駄が多いし、ひどい客はベッドも汚しているのではないか?また、シングルの設定があるのなら、満室などでやむなく他の部屋を貸切する場合に貸切料金の請求はしやすいと思う。 関西汽船の「さんふらわあ あいぼり」「同 こばると」の船室設定はよくできている。 特等には1人部屋と2人部屋、1等には1・2・4人部屋と多彩な船室設定をしている。しかも上手いなと思うのが、1人部屋でも4人部屋でも同等級としている所である。もし、1等1人部屋を1等Aなどの名称をつけて別等級とすると、閑散期には必ず安い4人部屋(仮に1等Bとでもするか?)を希望する乗客が出てくるので、結局1人のために4人部屋の1等Bを使う必要がある。同社のように同等級としておけば、1等でも利用する人数に応じて効率的な部屋割りができるのである。 ただし、シングルルームでも、特等クラスの快適な船室を設定して頂きたい。阪九フェリーにあるようなキャビンタイプのカプセルホテルのような部屋(寝台特急のB個室ソロに似ている)や新日本海フェリー「らいらっく」のS寝台のようなものでは窓もなく快適でないので利用する気にならない。関西汽船やダイヤモンドフェリーの特等のような部屋を見本として各社検討していただきたい。 <8.むすび> 高額な貸切料金は1人で利用する乗客の等級選択の幅を狭くしている。多客期には子供運賃までの貸切料金はやむを得ないが、閑散期には値下げしても良いのではないか。但し、不正な部屋利用については十分な対策を行って公平にしてほしい。また、新たに船を建造する際は、快適な特等クラスのシングルルームの設置を検討して頂きたい。 |
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