フェリーは揺れるのか?〜船酔いの話〜
船というと、すぐに船酔いをイメージされる方が多いと思います。せっかく船に乗って酔ってしまったら、旅行が台無しになってしまいます。よく、船酔いは大丈夫か?という質問を受けますが、こればかりは答え様がありません。

どこかのフェリー会社のパンフレットには、「フィンスタビライザーが揺れを防いでくれるので安心です。」とありますが、これは絶対に嘘です。ここでは船酔いについて書いてみましょう。

(Special Thanks:匿名希望 様)


  冬景色の航海(新日本海フェリー)
大型のフェリーが揺れるのか?
はっきりいえば、揺れます。大きな船だから揺れないと思って、油断して乗船すると、ひどいめに遭うこともあるでしょう。なんといっても気象状況に左右されるとしか言い様がありません。しかし、逆にべた凪で全く揺れない事もあります。1万トン以上の外洋を航海する大型フェリーを想定して考えてみましょう。

気象状況を調べ、波の高さを見るのは、おそらく多くの人が考えることでしょう。個人差はありますが、だいたい2mを超えると揺れが気になるかと思います。しかし、重要なのは波の向きなのです。同じ波高でも揺れ方は全く違います。

・船の針路に対して向かいからの波では、縦揺れ(ピッチング)します。 エレベーターで上下するような感じで船酔いしやすいでしょう。
・船の針路に対して横からの波では横揺れ(ローリング)します。揺れている感じはしますが、ピッチングよりは楽でしょう。
・船の針路に対して後ろからの波では、少々の波(3m?)があってもあまり揺れることもなく、意外と楽に航海できます。ただし、高速(25ノット以上?)で航行すると、波と同調して大きくローリングや大傾斜しますが、意外と船酔はしません。

波の他に、「うねり」という要素もあります。うねりは、その場所の気象状況ではなく、遠くの波が伝わってくるものなので、一見その場所は平穏でも実はうねりで揺れることもあります。例えば、日本のはるか南から台風が接近している場合は、うねりが伝わってくるので意外と揺れます。太平洋は広いので、いったん台風などで時化ると、けっこう長い期間うねりが残ります。日本海は狭いので、時化たとしても、うねりはすぐに収まります。

ここで結論ですが、夏は日本海側が平穏な事が多いのでお勧めです。太平洋側は遠くの台風の影響でうねりがあります。逆に冬は太平洋側の方が平穏な事が多いのでお勧めです。冬の日本海は皆様の想像どおり時化ます。

船旅の前に、波浪予想のサイトをご覧になって乗船することをお勧めします。
(本当はココ→とリンクを張りたかったのですが、リンクが要許可だったのでやめます。検索サイトで「波浪予想」と入力したら簡単に探せます。波高や向きもあり、けっこうマニアックです。ぜひお試しを!)
揺れを抑える装置があるといいますが・・・
船が揺れて喜ぶ人はごく一部を除いていませんので、フェリーも少しでも揺れないように工夫しています。一般にお客が乗っているからと思われますが、トラック転倒による貨物損傷防止の意味合いも強いはずです。
最も有名なのが、「フィンスタビライザー」です。これは船底の両側から翼のような羽根をだして、横揺れしないように作動するものです。従って縦揺れには効果ありません。瀬戸内のみを航海するフェリーを除いて、ほとんどのフェリーで装備されています。さて、これが本当に効果あるか?ですが、これは前に説明した波の向きが全てです。要はローリングしている場合には効果大といえますが、ピッチングの場合には意味がありません。また、揺れを皆無にできるわけではなく、緩和される程度と考えて下さい。ローリングに効果大ですが、船底に抵抗物を出すわけですから、船速が落ち、結果ダイヤを維持するためには燃料をたくさん使うことになります。燃料油価格が高騰しており、「燃料油価格変動調整金」なるセコイ料金を加算しているご時世ですから、省エネのため、使用をためらう事もあるのでは?と想像できます。
他、横揺れを防ぐ装置にはビルジキール、アンチローリングタンクなどがあります。

装置ではありませんが、揺れが少なく走り易い向きに船の針路をかえるのも効果あります。(距離のロスがあります。)
船酔いの予防法は?
船酔いに自信がなければ、酔い止め薬を服用するのが良いでしょう。酔い止め薬も、錠剤タイプよりも、ビンに入ったドリンク剤風のものが高価でよく効きます。カプセルですが、「ア●ロン」という薬は効果抜群です。1錠で24時間効くそうですが、12時間をこえると効果が落ちます。薬屋さんで聞いて、最も良さそうな薬を選択してください。フェリー船内でも、たいてい1種類は酔い止め薬を販売しているようです。

他、波を見ないとか、睡眠不足にならないとか、食事をとるとか、本を読むな等、酔い止め薬の説明書に書いてあるとおりです。また、煙草の煙は船酔いには良くありません。特に他人の煙は悪影響が強いです。時々「船に酔う前に酒に酔え!」といって酒を飲めという説を聞きますが、私はお勧めできません。適度な飲酒により眠気を誘って寝てしまうという意味なら良いですが、酔っ払うまで酒を飲むと余計に危険です。

そして、最も重要なのは揺れない場所に乗る!ということです。
乗船する場所ですが、荒天の日は絶対に船体の中央の揺れが少ないです。船首側の部屋は、エンジンの騒音・振動が少なくて静かというメリットがありますが、荒天のとき、特にピッチングがきついときは最悪です。余談ですが、外洋を航海するフェリーのなかには最上級船室をよく揺れる船首に配置していない気の利いた船もあります。荒天の日は船首側の部屋は避たほうが無難です。(こちらから頼みもしないのに、船首の部屋は揺れるからと、場所を変えてくれた親切な船もありましたよ!)
船酔いしてしまったら、どうする?
船酔いした場合、寝るのが一番です。寝るにしても向きが重要です。寝る場合は、船首側を頭に、船尾側を足にして進行方向に水平に寝るのが楽だと思います。場所はもちろん船体中央で寝るのが良いでしょう。もし、あなたの部屋が不幸にして船首にあれば、船体中央部の場所にうつりましょう。仮に個室に入っていたら、満員でなければ揺れの少ない2等室を探すと良いでしょう。酔い止め薬は酔ってからでは遅いのですが、飲まないよりは緩和されますので、飲んでいなかったのなら飲みましょう。食事は少しでもよいから無理してでも食べたほうが良いです。後で、吐くときに胃の中に物がないと、とてもつらいので、少しでも食べておきましょう。

もし、気持ちが悪くて吐きそうになったら吐いたほうが楽です。我慢したほうがいいという説もありますが、我慢しすぎて部屋の中で吐いてしまったら最悪です。船によってはエチケット袋があるので貰っておくと良いと思います。

また、酔ってしまっても時間がたてば体が船体動揺に順応して、すこしずつ楽になってくるはずです。気持ちが不安になると、船酔いも増幅するかもしれません。気持ちを大きくもって、天候の回復か、体の順応を待ちましょう。
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