チラシの裏SS投稿掲示板




感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[25333] 【チラ裏から】我が名はシン・アスカ
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/09 22:37
チラ裏で完結した作品ですが加筆修正して再投稿してます。

シン・アスカ主体。
プラント(デュランダル派)側寄りの二次創作です。
原作好きの方注意。



[25333] 第1話 「瑞夢」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/10 15:40
「さんどぉ~ぶゎっぐに~♪」

ども、シン・アスカです。
現在家族の仇である憎くき敵のフリーダムと交戦している。

嘘の情報を流して誘いだすことに成功し1体1のガチンコに持ち込めている。
この日のために数日間も缶詰になってシミュレーションで何度も対策を練りあげたおかげで正面から戦えている。
正直言って厳しい戦いだが流れは俺に傾いてきてる。

とは言ってもライフルを必中のタイミングで撃てば避けられ、接近戦を仕掛けたらビームサーベルの出力の差で競り負ける。
集中し続けてるせいで体力もガンガン削られて苦しくなってきた。
おまけに激しい機動のせいでインパルスのバッテリーも凄い勢いで無くなっていく。

けど相手はスタミナ無尽蔵。
なんてったって核動力ですから!
こっちなんて戦闘開始して15分たってないのにもう残量が半分近くになってるってのに。

これなんてピンチ?


『シン! キラは(ry

艦橋から通信が入ってたんで受信したら俺の心配じゃなく敵を擁護する声だったでござる。
とりあえず聞き流すことにした。
あんなアホなことに対応してる暇なんてねーよ。
戦ってるんだよコッチは!?
敵の擁護してないで助言の一つくらい寄こせ!

「このぉ!!」

本来の許容できる範囲を超えた加速と機動を繰り返し続けているインパルス。
ついに各関節部から警告を知らせるアラームが鳴だした。
このままの動きを続けたら空中分解♪
それでもフリーダムと対峙し続けるために止まるわけにはいかない。

画面には最初の不意打ちのおかげで翼の一部をもぎ取ってやったフリーダムが映っている。
機動性こそ落ちているが動きは変わらない変態じみたものだ。

必死にサーベルを振るいながら思う。

――― こんなに強かったのかキラ・ヤマト。

まるで初めて戦ったあの時のように。
戦いの流れを取られないようしつこく無謀なアタックをかけてもあっさり防がれる。
しかも手加減してるのがわかるからムカつく!

『いい加減にしてくれ! 僕たちが争う必要はないんだ!』
「オメーの返事は聞いてねぇがら!」

心配して声をかけてやるほど俺は弱いって言うのかよ。
かっぺむかつく!

にしてもインパルスの反応が思ったより鈍い!
ザコ相手だと気にならなかったってのに。
もっとカスタムしてもらうよう頼み込むべきだった。

やべ、走馬灯が見えてきやがった。


しかし何度も人生を繰り返すのも疲れる。
ホント宇宙クジラ調査にいかなけりゃこんなことには。



俺の最初の人生は有体に言えば酷いの一言に尽きる。
生まれた国が戦争に巻き込まれて攻撃されて目の前で家族が死んだ。
生きたままの姿のようで違和感を感じる光景が俺の精神を壊すのは簡単だった。

生まれた国―――オーブの軍人のトダカさんが戦後の忙しい中、あれこれとケアしてくれたおかげで辛うじて立ち直ることができた。
が、俺は生まれ故郷を後にした。
親もなく金があるガキなんて詐欺師にしてみればいいカモだ。
親身になってくれるとはいえ他人であるトダカさんでは助けられることに限界がある。
その時、プラントが減少した人口を補うためコーディネーターを募集している話を聞いたという。
財産等の保証を全面的に約束する。
裏をかえせば人材と金を体よく回収できる話だ。
ただ保証の内容は相当で数百項目に及ぶ書類の審査を通れば衣食住すらも確約してくれていた。
かなり迷ったそうだがトダカさんはこの話を俺に受けさせることにし、完璧な書類と保証人にまでなって俺を見送ってくれた。

この話をトダカさんの部下から聞かされ、プラントであてがわれた部屋の中で不貞腐れるのをやめた。
たいしたコーディネートをされてなかった俺が就ける職業は軍人くらいでその日のうちに入隊した。

比喩とかじゃなく血反吐を吐き続ける日々だった。
同期の中じゃ下から数えたほうが早い程度の成績だった。
入学したその日から移住組ということもあってイジメのターゲットになった。

何度も死にたいと考えた。
恩を忘れるなという営業マンだった父の言葉が俺を支えてくれた。
座学のテキストを空で言えるほど読み込んだ。
基本を大切にしなさいという技術者だった母の言葉を信じた。
お兄ちゃんはカッコいいとウンザリするほど妹が俺に言った。
自慢の兄を押し付ける妹を裏切りたくなかった。


気づけば成績は上がり体力もつきパイロットの腕も抜きん出ていて念願の赤服になっていた。
さらに新型のMSまで貰えた。
その日は興奮して眠れなかったのを覚えてる。
おまけに配属先は新造艦。しかも最初の任務は式典の警備。
楽勝気分で仲間と買い物に行く余裕すらあった。
しかもステラのおっぱいも揉めるという素晴らしい特典もあった。
まさに我が世の春が来た! と感じてた。

楽な任務と思ったらMS強奪劇に巻き込まれ、あれよあれよで地獄の最前線に突き落とされた。
それらを皮切りに戦って戦って戦い抜いた。自殺するとしかいえない任務もやらさたけど生き抜いた。
途中でステラと再開して、でも死に別れて。
上官になって帰ってきたアスランに殴られたりもして最終的にやっぱりアスランにボコられたなぁ。


戦争が終わって軍に残った俺はなぜかルナと付き合うこととなりまして。

精神的に成長した今だからこそ言えるけど間違った結婚でした。
吊り橋効果の結婚が長続きしないってのはマジです。
お互いが私生活を禄に把握してなかったもんで小さなことでギスギスしちゃってね。
ちゃんと恋愛してからなら結果も変わったろうなぁと後悔しましたよ。
それでも多少はアホでも素直なほうが俺は向いていると実感したよハハハ……。

1年持たずに俺達は離婚した。
そして俺は軍を辞めてぶらり傷心旅行の旅in地球ツアーをすることにした。
コーディネーターの迫害よりプラントにいることのほうが辛くなったからだ。
わざわざ送別会を開いてくれたかつての男仲間に感謝した。
皆凄く羨ましげだった。

とりあえず地理の分かるオーブで地球の情報を集めて世界中に行った。
俺の口座はけっこうな額が貯まってたから贅沢しなければわりかし色んなとこいけた。。
たまには贅沢しつつ比較的安全なの観光地を満喫できた。

数ヶ月が経つころにはコーディネーターだということを隠して行動するのにもすっかり馴れて現地の人と酒を飲めるくらいになれた。
ただ金もだいぶ減って困っていたんで職を探す。
わりかし早くMSを使う建設会社に就職できた。
持ってて良かったMS技能。
軍人だったおかげで危険職の免許もたくさんあったし。
そのおかげでバリバリ活躍できたんで給料もウハウハ。
ぶっちゃけプラント居た頃よか充実できた。
おかげで独身貴族に返り咲くことができて幸せでした。

近況を仲間に連絡したら「ネシ」の文字が限界まで書きこまえたメールが何通も来たケド。


そんなこんなで生活と性活の両方が充実した生活を満喫していた。
プラントを出て3年が過ぎ、そろそろ現地で帰化の手続きでもしようかと悩み始めたそんな時、アスランが訪ねてきた。
とりあえず話をしたいということなんで聞いたらとあるプロジェクトに参加して欲しいというものだった。
期間も2ヶ月と短かったし金払いもよかったので引き受けてみたんだが……。

(偶然、宇宙クジラの化石を発掘しちまったよな。作り物とばかり思ってたのに実在するとは)


気がつけば映像いっぱいに映されたビームサーベル。
慌ててパイルダーオフしてなんとか避ける。
正直ギリギリでした。

この野郎殺す気満々じゃねーか。
不殺のに文字をどこに捨てやがった!

走馬灯なんて有り難くないもんを懐かしがってる場合じゃない。
気合入れんと本気で殺されてしまう。

「キラ・ヤマト。テメーは俺を怒らせた」
『これで落ちないなんて』
「話を聞けよ」

自分の世界に入り浸りやがってこのナルシスト!
中ボス的な強さしかない俺なんてアウトオブ眼中ですかそうですか。
意地ってのを見せてやる。
やぁってやるぜ!

というわけで。

「こんにちは死ね!」
『え?』

インパルスに設けられたリミットをカット。
たちまち狭いコクピットの中に警報が鳴り響く。

フリーダムがサーベルを振りかざす右腕―――その肘めがけ短距離をサーベルを最速で走らせる。
限界を超えた速度で振るわれたインパルスの右腕は正確に狙い通りの場所にたどり着いた。
出力を上げたサーベルは安々とフリーダムの肘の内側を貫く。
自分の動く衝撃に耐えずインパルスの右肩が自壊する。

キラは瞬時に状況を理解したようだ。
文字通り手が足りない今が止めを刺す絶好の機会。
距離を詰めて無事な方の腕でサーベルを構えようとするが、遅い!

「やらせるかよ!」

残った左腕をフリーダムの首にしっかりとまとわりつかせてチェストフライヤー射出。
推力全開のチェストフライヤーを引き剥がすことが出来ずフリーダムは俺との距離を開いていく。
これが最後のチャンスだ。

「ソードシルエットを早く!」
『安心しろシン。もう射出は終わっている!』

頼もしい相棒の声。
レーダーで確認すると間近まで来ていた。
過去最高の完璧さで素早く合体。
覚悟完了。当方に迎撃の用意有り!
エクスカリバーを胸元に持ちフリーダム目がけて突っ走る。

「にくい~あんちくしょう~の~かおめが~けぇー」
『うわぁあ!』

チェストフライヤーを無理やり引き剥がしたフリーダムは大きく体勢を崩していた。
そして突っ込んでくる俺を見るやいなや無理な姿勢でライフルを乱射してくる。
レールガンやビーム砲が嵐のように迫りインパルスの装甲削り頭がもげる。

「たたけーTATAKE-☆叩け~」

大丈夫、インパルスはつよいこ。
これくらいヘッチャラさ。
回避も減速もしない。最初からクライマックスだ。

「ちねぃ!」
『!!』

核動力といっても所詮はPS装甲。
僅かな抵抗のあと安々と突き刺さる。
フリーダムの胸もとにエクスカリバーは貫通した。

『キラぁ!』

アスランが何か言ってるけど無視。
運がいいから生きてるよ。

フリーダムはビクンビクンとエレクトしてたがすぐに動きが止まった。
同時に機体の色が灰色に変化していく。

「フリーダムを倒しました」

息を整え百舌の早贄のようにフリーダムを頭上高く持ち上げる。
その瞬間。

『うぉおお!』
『やったぜ、見てるかアイ。あいつがお前の敵を取ってくれたんだぞ』
『急いで動画を上げないと』
『くそ、大穴だったか!』

みんなの歓声が応えてくれた。
ありがとう、こんなに嬉しいことはない。

だが最後、テメーはダメだ。




フリーダムを串刺しにしたまま格納庫に戻った俺を待ってたのは整列した乗組員みんなの敬礼だった。
頭に包帯を巻いり松葉杖で体を支えた痛々しい姿の人たちもいる。
本来ならベッドの上で安静にしないといけないはずなのに。
彼らは共通して目から涙を流して、けれど気丈にも震える唇を真一文字に結んでいた。

全員の視線が俺から後ろににある貫いたままのフリーダムに気付く。
驚いた顔を浮かべる人、射殺さんばかりの眼差しを向ける人たちがいるが華麗にスルー。
大事な人を殺された恨みは分かるけどまだ安全が確認できてない。
放射能漏れの事態にはならなくてもパイロットが生きている可能性がある以上、専門の人以外が近付くのは危険過ぎる。
不満だろうけど我慢してくれ。
なんてことを思っているとようやく艦橋から通信が入った。
すぐに繋ぐと珍しく満面の笑みを浮かべたタリア艦長が映った。

『シンお疲れ様。まさかフリーダムを捕獲するなんて夢にも思わなかったわ』
「レイと一緒に訓練したおかげです。アイツも褒めてやってください」
『そうね……そうするわ』

寂しげな顔を覗かせるが直ぐに元の笑顔に戻るタリア艦長。
その後ろでアスランが『恨みはらさでおくべきか』的なまなざしをワタクシめに向けております。
アンタ自分の出した被害者の目の前でも同じ顔できないのに睨むなよ。

『大金星よ。フリーダムから戦闘データを抽出できればMS開発が進む可能性が高いわ。議長からも祝辞があったから後で確認するように』
「……ありがとうございます」

それから艦橋のクルーたちから入れ替わり立ち代わりに数分間も褒めちぎった言葉を嫌になるほど貰ってやっと通信が切れた。
嬉しかったがそれ以上に疲れた。
もうアスランの視線が怖すぎ。呪われるかと思ったわ。
あと艦長、キャラじゃないテンションのあがり方にブリッジのみんなビックリしてましたよ。
あまり見せない笑顔に何人かが顔を赤らめてたし。
映像のログを取り出して議長に見せたら面白いことにならないかな。

そうだ、忘れないうちにレイと連絡を取らねば。

「レイ、いるか?」
『なにかあったか?』
「もしかするとキラ・ヤマトは生きてるかもしれない。念のため麻酔ガスを流しこんでおいてくれ」

普通は死んでると思うだろうが相手はキラ・ヤマト。
ありえんほどのしぶとさを持っている。
しかも反則級の強さまで兼ね備えるというチートっぷりである。
これだけは何度戦っても変わらなかった。
下手すればGすら超えるかもしれない。

『そこまでするなら爆弾でいいと思うが?』

ボンバーマンじゃないんだからさ。
むしろマシンガンをぶち込んだほうが効率はいいぞ?

「なるべく生きたままにしておきたい。コイツは司法で裁かれるべきだ」
『シン、お前は……わかった。すぐに手配しておこう』

言いかけていたことの予想はつく。

『家族の仇を討たないのか?』

そう言いたいんだろう。

大丈夫だレイ。
心の整理はとっくの昔に終わっちゃったんだ。
憎む気持ちも悲しい気持ちもひっくるめて制御できてしまうんだよ。

でも、何度会ってもお前はイイヤツだよな。


コクピットから降りた俺に向かって仲間たちが一斉にかけ出してきた。
そこのカワイコちゃん、できれば君から飛び込んできてください。

計画通りカワイコちゃんに抱きしめられロマン回路を滾らせることに成功した俺はブリッジへと向かった。
不思議なことに他の乗組員とすれ違うことがなかった。

艦橋はメイリンを除くいつもの愉快な仲間たちが笑顔で迎え入れてくれた。
通信であらかた話終わっていたことを改めて報告し任務完了。
さっさとシャワー浴びて休もうと考えてたらアビーに食堂へ向かえと言われてしまった。
その声に倣って他の面々も食堂へレディーゴー!とまくし立てる。

もしかしてアビーからのお誘いですか?
万が一そうならせめてシャワーだけでもお願いします!
などという我ながらアホすぎる妄想のおかげで目が覚めた。

「おいおいアビー。汗臭いんだからせめてシャワーを入ってからでだろ?」
「うーん……そのほうが時間的にもちょうどいいですね。ただし15分以内で済ませてください」
「わかりましたよーっと。ではシン・アスカ、退室します」

おざなりの敬礼でスタコラサッサと部屋に逃げ帰る。
パパっと服を脱ぎ捨ててシャワー浴びてサッパリした。
半乾きの頭を新しいタオルで拭きながら時計を見れば既に15分が経過しようとしていた。
慌てて服を着こみ扉を出た瞬間、ヨウランとヴィーノが。

「お前らなにやってんの?」
「今日のパーティーの主役を捕まえに来たんだ」
「それじゃあエスコートさせてもらいまーっす!」

そのまま二人に引っ張られ食堂へ連れてこられた。
一歩中に入ると凄く目立つ場所に『祝!フリーダム撃墜記念』と横断幕が飾られている。
大半は端に寄せられ残ったテーブルの上には美味しそうな食事が所狭しと並ぶ。
食堂から見事にパーティー会場へ変貌した部屋は既にえらい騒ぎとなってた。

主賓と書かれた名札を付けられあちこちのグループに顔を出さされる。
おまけに呼んでもいないのに脳内麻薬どぱどぱ出まくりんぐの人たちは入れ替わり立ち代わり俺に酌をしてくれた。
ろくに飯を食うヒマもない。
しかもエアコンが効かないほどの熱気に包まれているおかげで汗も出てきた。
キスをしてもらったりして役得だったけどね。

なんとか捌ききり余裕が出来たんでテーブルの料理をつまんでいく。
結構うまい。今まで食べた艦の料理の中じゃ一番かもしれない。
議長に頼み込んでキッチンシステムを豪華にしてもらったからな。
出される料理もさりげなくいい素材になってて美味かった。
酒は飲めなかったけどしょうがない。
まだアークエンジェルが付近にいる可能性がある以上、警戒を怠るわけにはいかないしな。

壁際に集まった人たちは出された料理を肴に今日の俺の映像を何度も繰り返し見てた。

複雑そうな表情を見せる人たちがなんとなく気まずくて俺はパーティーを抜けだした。

コーヒーをすする。
まずいインスタントでも気分を落ち着かせてくれる。
それにしても今日は忙しかった。
今になって眠気が襲ってくる。
頑張れマイボディ! まだ夜は始まったばかりだぞ。
仲間の痴態を見ずにして眠ってなんかいられるかよぅ。

「ここにいたのか」

その声とともにレイが部屋へ入ってきた。
両手に持っている二つの湯気のたつコーヒーカップの一つを俺に差し出した。
ついさっき飲んでいたインスタントと雲泥の差がある香りが鼻に注がれる。


「既に飲んでたようだな。せっかくだからこれも飲め」
「こんなに旨そうなコーヒーなんだから腹いっぱいだろうが飲ませてくれとお願いするよ」

笑いながら差し出されたコーヒーをさっそく一口。

……うまい。
焙煎したのをそのまま持ってきたのか。
貴重品をわざわざくれるなんて嬉しいなぁ。

「どうだ?」
「決まってるよ。こんなうまいコーヒーは初めてだ」
「気に入ったならなによりだ」

しばらく無言でコーヒをすすり合う音が部屋に響く。
コーヒーの味と香りが高ぶる神経を完全に沈めてくれた。
ちょうどお互いのコーヒカップの底が顔を出しとたところでレイが話を切り出した。

「キラ・ヤマトのことだが。打撲とムチ打ち。あとは足の単純骨折だった」
「うそだろ? 普通だったら死んでたはずだぞ?」
「事実だ。俺もこの目で見るまで虚偽報告だと思ってたくらいだ」

やっぱ生きてたか。
無傷じゃないだけマシなんだろうと割り切るか。
普通なら圧死か焼死してるはずなんだが。

「そういやキラ・ヤマトの処分はどうなるんだ? 妥当なとこだと死刑になるはずだけど」

機動兵器の無断持ち出し、戦争への無許可介入、さらに機密兵器の無断回収及び修理。さらに保持と言い出したらキリがねーな。
こっちとしても初めて捕獲できたことだし今後の憂いを取り除くためにも縄で出来たネクタイを渡して欲しいところなんだが。

「……シン、本国と通信が取れなくなった」

なん……だと?

「タリア艦長の権限で刑の執行は難しく議長に直接の判断を求めようとした矢先に起きた。調べてみると通信システムのハードとソフトの両方がやられていた」
「おいおい。つまりそれって」
「そう、スパイがいる。それもかなりの人数がいるということだ」

こんな時期からスパイ網が完成しきってるのか。
恐るべしラクス軍団。
そこまで実力あるなら政界に行けばよかったのに。
こりゃ急いで始末つけないと奪取される可能性が出てきたな。
だったら俺がこっそり撃ち殺しておくか?
……暗殺されちゃうからやめとこう。

「じゃあ尋問だけでもしとこうぜ。アイツは目を覚ましたか?」
「まだだ。医師の診察によれば明朝には確実だと言っていた」

誰も信用できん状態から困る。
医務室なんて誰が出入りしても問題ない場所だから余計に面倒だ。
とりあえず先手を打っとくか。

「今から身柄を移動しよて営倉に裸にひん剥いて拘束具で拘束しておこう」
「裸にするのはどうかと思うが……それより医師が許さん」
「フェイス権限で行動する。あとアスランには内密に処理しようぜ」
「賛成だ」

迷いもなく同意するレイ。
躊躇するそぶりすらなかった。
ホントにアスランのこと嫌いなんだな。

「じゃあ今から行動な」
「ずいぶんと急だな」
「思ったときに行動したほうがいい。他の乗組員が一箇所に集まってる今だからこそ性急に行動できる」
「そうか。では準備しながら艦長にだけ話を通しておこう。それと艦の見取り図から監禁に適切な部屋も探しておく」
「頼む」

銃と手榴弾、スモークにECCMを取り出して、と。
盗聴器の探知機も忘れちゃいけないよな。
通信で艦長と話をつけたレイがこっちにOKの合図をくれた。

「いくぞ」
「ああ」

俺達は急いで医務室に向かい、到着するなりすぐさま権限を発動し医者に黙ってもらった。
幸いなことに看護師もパーティーに参加していて部屋には医者しかなかった。
渋る医者へレイが艦長の許可と事情を何度も説明していく中、俺はキラの手足を拘束し終わった。

運良く誰ともすれ違わずレイの指示の通りに進み営倉についた。
ストレッチャーから部屋の簡易ベッドに降ろす。
足がギプスで固定されてるんで上半身だけ裸にして拘束具をつける。
さらに足には電子式とアナログ式の手錠4つで固定して終了。
あとはさるぐつわを噛ませて……。

最後の写真を取るのを忘れちゃいかんな。
レイに扉の前で監視してもらっている間に済ませるか。

ひん剥いて写真を何枚も取っていく。
裸のやつも撮っといたから安心してくれ。
下半身だけ裸にしてはい、チーズ!
しかし毎度のことだがキラのウタマロにはビビる。
急いでネットに晒す準備をせねば。



[25333] 第2話 「混沌の先に」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/09 23:52
他の基地を中継してようやく本国へと短い時間だが通信しに成功した。
相手が相手なだけにプラントへ輸送して欲しいと命令を受けた。
通信機器の調査を進めつつ指定した基地へ連行するよう言われ従うこととなった。

その際にキラ・ヤマトの処遇を決める方法の一つとして監禁を進言したら通った。
既に実行していることは当然ながら秘密である。
実際、誰がスパイかわからない状況なので下手すれば奪取されてしまう可能性がある。

ということで、現在は全乗組員が用事なく部屋から出ることが許可されてない。
それこそ艦長自身も。
さらに非戦闘員は完全に隔離した。
整備班もおやっさんが判断した信頼できる部下だけが頑張っている。
こうなると警戒するにしても人手が足らないが指定した基地につくまでの辛抱ということで大体の人が納得した。

それからキラの営倉前にはレイが率いる警備兵が陣を張ることになった。
「憎いあンちくしょうを俺の手で裁いてやる!」と叫び出す人もいたそうなので対策として配置したとか。
俺ですら侵入したら撃ち殺されるほど厳重です。

とにかく信頼できる基地まで全速で2日で到着するという。
それから俺はアークエンジェル対策としてブラストインパルスに座りっぱなしだった。
トイレと風呂を除いて常にコクピットの中というのは恐ろしく疲れた。
そんな長かった苦行もあと2時間ほどで終わる。
できればこのまま来ないで欲しいなぁ。

そう願ったのがフラグだったのか、やっぱ来た。
急いで基地に支援をお願いしたらテロが発生して無理との返事。

やっぱりな!

艦長が援軍としてレイとルナを呼ぼうとしたが止めた。
基地の方もテロリストを制圧するのはすぐに終わる。
少なくとも合流すれば同時に叩ける。
だからここを凌げれば勝つ。
レイも危険なポジションだが他に信頼できる人間がいない。
スパイの猛攻を止められるがレイしかいないんだ。
さらにルナも機体がない。
体が戦闘に耐えれるかどうか微妙なところだ。
正直いって出てこられても足手まといにしかならない。

『それじゃ貴方が独りで戦うことになるわ』
「大丈夫です。基地にたどり着くまでなら持たせてみせます」
『……わかったわ。こっちもルナが出撃できるように整備班にがんばってもらう。やり遂げなさい』

大丈夫。
急いでソフトの設定も直したし整備具合もバッチリだ。
出撃前に何度見直したことか。

『ねえ、本当に大丈夫なの?』
「ルナ? なんで通信を」
『バカっ! 心配だからに決まってるでしょ』
「ありがとう。生きてる砲座で少しでも敵の目を引いてくれ。それだけでもありがたい」
『ゴメンね。あのときザクが壊れなかったら……』
「気にするな。今度なにか奢ってくれよ?」
『アンタねぇ……。もうちょっと気の利いた台詞をいいなさい!』

通信が切られちゃった。
笑ってたし大丈夫だろう。


余裕ぶっこいて出撃した。
調子にのって普段使わないブラスト装備を選んでみた。
敵はたった3機だし艦の支援砲撃と組み合わせれば余裕だろと考えてたんだ。

あの時の俺を絞め殺してやりたい。
ストライクは余裕だけどムラサメがしつこいくらい鬱陶しい。
おまけに特別色のムラサメが他の2機の隙を埋めるようにフォローしてきやがる。
もう一機のノーマルカラーが隙を見つけてはミネルバに特攻かけようとする。
ライフル撃ってもきちんと防ぐし。

なによりアークエンジェルはこっちの攻撃を避けすぎだ。
ブラストの射撃をデカイ図体で避けるなボケっ!
少ないチャンスを無駄にさせやがって……ああエネルギーがもったいない。

わかりきったことだがブラストで空中戦はやりづらい。
エネルギーもどんどん減ってく。
虎の子のミサイルも底を尽きた。
ケルベロスも撃てなくなっちゃったよ。
こうなったらジャベリン一本でやるしかない。

『ザフトのパイロット君、凄いねぇ! こんな凌ぐのはキラ以来だよ!!』
「じゃあ早く堕ちてくれ!」

わざわざオープン回線で軽口を叩いてくるコイツ、なんて名前だっけ?
砂漠の虎だったか獅子だったか。

『それは出来ない相談さ。僕たちにとってキラは大事な仲間だ。仲間を取り返そうとするのは当たり前だろ?』
「テロリストのいうことかー!!」
『キラはテロリストなんかじゃない!』

誰だよ微妙に聞き慣れた声はってオーブの姫さんか。
また鬱陶しいのが。

「そうだなカレーだな」
『なっ!? 人の話はちゃんと聞け!』
「安心してください。首相閣下は洗脳されておられても必ず救出いたします」
『私は自分の意志でここいる!』
「余計にタチ悪いだろ。オーブ代表としてどうよ、それ?」

うん、いい子なんだよ。
アホなとこもあるけど頭は悪くないし真面目だし。
融通聞かないとこもあるけど人望も悪くない。
スタイルもいいしね。抱き枕にすると照れて可愛いんだ。
あんときはお世話になりました。

なんて冗談を言う暇もなくなってきた。
本当にヤバい。

時間もないし相打ち覚悟で突っ込むか?
けど相手も読んでし分が悪いな。

『避けて!』
「!? 了解!」

声に反応して機体を右にそらす。
さっきまで俺がいた場所を高エネルギー砲が通過した。

『なんとかザクは動いたわ。支援するからがんばって』
「サンキュー!」

ツギハギだらけの一見するとスクラップなザクがミネルバの片翼に膝を立てオルトロスをこっちに構えていた。
まともに動くことも出来ないはずなのによくあそこまで修理を。
ルナ、おやっさん、ヨーランにヴィーノ。
この機会は無駄にしないぞ。
心意気に応えて見せる。


もう換装する余裕はない。
ルナだけじゃ押えきれない今、いかに早く相手も倒すかが鍵だろう。
ただザクの射撃で牽制してくれてるおかげで相手も慎重になっている。
十分ありがたい援護射撃だ。
残念だけど射程が足りなくてアークエンジェルには届かない。
これ以上は高望みだな。

「ルナ、もう一機をなんとかして押さえててくれ」
『OK。まっかせなさいよ。私だって赤なのよ』

トランスフェイズ装甲を最低ラインに。
コクピット周りを残して灰色になる機体。
残るエネルギーを搾り出してでもケリをつけてみせる。

まず狙うのは弱いカガリだ。
あとは無視してやる。

『カガリ気を付けろ! 君が狙われている』
『わ、わかった!』

素早くこっちの狙いを看破するのは凄いが実行できるか?
なにせトラブルメーカーなお姫様だぞ。
俺だって苦労しまくったんだ。
クーデターの親衛隊経験をナメんなよ!

最後のレール砲をバラけるように撃つ。
簡単に回避される。
推進剤を使い切る気持ちでストライクとの距離を詰める。
そうはさせないとムラサメは俺を狙っているだろう。
賭けになる。
レーダーと勘を頼りにケルベロスの一門で狙い撃つ。
あと2発!

『ぐお!? そこで撃てるのか?』
『バルトフェルド!?』
『よそ見をするな!』

この隙、貰った!
ジャベリンでサーベルを抑えつけた。
盾の上からでも防ぎきれないだろ?
ゼロ距離でごちそうしてやる。

『キャア!』
『カガリ―――!』

バルトフェルドって名前だったな。
そいつが左肩が吹っ飛んだストライクを慌てて支えに行く。
片足が無くなっていてふらついている。
今なら落とせるだろうが……。

下を見るとルナがピンチだった。
接近したムラサメの攻撃を捌き切れてない。
このままじゃ落とされる。

「ルナ、もう少しだけ我慢しててくれ!」
『……シン!』

ガス欠寸前のスラスターを全開で吹かす。
アラームが鳴り止まない。

アークエンジェルの後部エンジンへが見えた。
これ以上近づけないか。

「一つでも落とせれば……」

正真正銘、最後の一発。
当ててみせる!

「いっけぇー!」

回避行動を見せたアークエンジェル。
予想した進路とややズレた。
けどケルベロスの砲撃はアークエンジェルのエンジンの一つをかすめた。

運良くエンジンが暴発した。

追撃する余裕があるわけなく必死になって降下を制御してる。
まさか地上でAMBCする機会がくるとは思わなかった。
エネルギーもカラッポ同然で微妙にしか動かせないのが悲しい。

それでもやりくりすれば無事に着艦できるはず……?

『見事だザフトレッドのパイロット!』

あのムラサメはバルトフェルド! 近づいてくるってことは。

『君は危険だ。今後のことを考えてここで落とさせてもらう!』

ぎゃー!
くそテメエ卑怯だぞ。こっちは死に体だってのに攻撃するなんて。
さすがはテロリスト。やることが違いすぎる。

エンジン、ダメだ。燃料を使ったら着艦できない。
ジャベリンも起動しない、か。
下手に動くとすぐにエネルギーが切れる。
くそったれ!

「ぐぉ!?」

あーっとインパルス君右足が吹っ飛んだーって何いわせんだ!
今度は左足か。
なんで一思いにコクピットを狙わない?
考える暇はないか。
せめてバルカンで反撃を。

『おっと。そんなのは食らってやれないね』

あっさりかわされた。
バルカンの位置が頭にあればもう少しいけそうなんだけど。
仕方ない。
腕を動かして盾で3射目は防げた。
危ね。コクピット直撃コースかよ。
あ、右腕吹っ飛んだ。

あれだけの腕のパイロットが連発して外すなんてことありえない。
たぶん射撃管制装置がいかれてるな。

ちょっと余裕出てきた。
そういえばと下を見ればルナがムラサメにマウント取られてる。
やべ。サーベルを押し込まれてる。
このままだとルナは殺される。

「だからアークエンジェル軍団は嫌いなんだよ!」

正真正銘、最後の推進剤を使ってその場から脱出した。
向かう先は下。
ルナを殺そうとしてるムラサメ。

『ダコスタ君逃げろ!』

後ろから撃たれるが当たらない。
システムが狂ってるから当然だ。
進路クリア。横風なし。進入角OK。
シン・アスカ、突貫します!

まさにザクのコクピットを貫こうとするムラサメの横からインパルスは突っ込んだ。



さよなら僕のインパルス。

コアスプレンダーの中からムラサメを巻き込んで沈む相棒に敬礼を送る。
こういう使い方もできるの忘れてた。
物資が少ない状況でやりたくなかんだよな。

急いで格納庫に戻り半壊したレイのザクに乗って出撃する。
おやっさんから止められたが時間がない。
外に出るとバルトフェルドのムラサメがもう一機を助けようとしてる場面だった。
ルナがオルトロスを撃とうとするのを止めた。

『なんでよ? 今なら絶対に倒せるのよ』
「……上空のストライクを警戒してくれ。頼む」
『っ~~~~! わかったわよ!』

めっちゃ怒ってる。
あとで謝んないとヤバいな。

「元ザフト軍バルトフェルド。聞こえるか?」
『……ああ、バッチリさ。どういう風の吹き回しだい?」
「少なくとも今回の戦闘は終了した。人命救助してる人間を殺す必要はない」
『甘い、甘いよ。甘いすぎるねぇ。僕たちは必ず君たちの前に立ちふさがる。だったら今撃つべきだ』
「戦争にもルールはある。それを順守しなければお前たちの同類になる。それは嫌だ」
『フン。青臭いことを……』

一応、ライフルで狙ってはいるけど大丈夫だよな?
ザクの調子が悪すぎて戦闘できません。
戦ったら今度こそ死ぬ。

『今回は君に免じて引き上げるとしよう。だが忘れないでくれ。キラがいる限り僕たちは諦めないよ』
「了解した。しっかり覚えておく」

バルトフェルドはムラサメを引き上げミネルバの上方に移動していく。
ついでにカタパルトにブラストの上半身を落っことしてくれた。
部品が使えたら御の字な壊れ具合ですね。
ごめんヨおやっさん……。

ザクも構えを解いてムラサメを見送る。
バルトフェルドのムラサメを支えるように横からストライクが肩を貸す。

長い数分間だった。
誰も一言も話さず息を飲んで互いの動向を見守り合う。
3機を収納したアークエンジェルはこっちを睨むように停滞してた。
暫くして空の向こうに消えていった。



[25333] 第3話 「安寧」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/09 23:52
ヒャッハー! 汚物は消毒だー!

ルナのおっぱいにダイブしてるヨウランの鼻の穴めがけてビールを発射してやる。
奥のほうまでビールが入ったのか激しくむせながらのたうち回るヨウラン。
セクハラされた本人はヨウランを指さしてケタケタ笑う。そして服を脱ぎ始める。
汗に濡れた締まった腹とピンクのブラが白日の目に晒されてしまう。
そんな可哀想なことをさせてはならないな、うん。
ここは一つ、シラフの僕が両手でもって隠させていただきます。
今が駆けるとき。目標のおっぱいを補足。ツインハンドライフル発射します!

あと少しでおやっさんに殴られた。

あと少しで我が悲願が達成できたというに。
床に倒れ伏した俺の背中にヨウランとヴィーノが乗っかって動けない。
そうこうしているうちに他の女性陣にルナは連れて行かれてしまった。
oh……jesus。

まだチャンスはある。
豊満な女性のシンボルを必ず鷲掴みにしてやる。
新たな目標を立ててしまった。
それはいいとして背中に乗ってる二人とも、そろそろ退いていたただけたら幸いなのですが?

「いい加減に降りろよ。重くて動けねー」
「よくも友達の至福の時間を奪ってくれたねシン君。どうしてやろうか」
「ヨウランさん、ここは一つバツゲームなんてどうですか?」
「ほほう? ヴィーノ君には何かいい考えがあるのかね?」

激・嫌な予感。
ヴィーノが指を鳴らすと何故かレイが『もしもしボックス☆』と書かれた箱を持ってきた。
お前何してんの?





アークエンジェル軍団の撃退に成功した後、必死こいて半壊のMSを操作しミネルバに戻った。
コクピットから降り疲れた体に活を入れ一歩踏み出した俺の前に並ぶルナとおやっさんを筆頭にした整備員軍団たち。

「お疲れ様」と一人ひとり熱い肉体言語をプレゼントしてくれる愉快な仲間たち。
嬉しさのあまり流れたのは心の汗だ。
疲労困憊の上さらにフルボッコという状態でタリア艦長に報告にいったら驚かれた。
そんなに戦闘が激しかったのかと沈痛な面持ちで声をかけられ「違います」と言えなかった俺を許してください。
あの夜の包容力を覚えさせたあなたが悪いんで俺は悪くない。

今すぐに眠たいが自室で基地につくまで我慢して待機しておくよう命令された。
基地とは目視できる距離まで近付いているが念のためだとか。
たぶん襲ってくることはないと思う。

時間があいた今のうちに隠し場所にあるPCにキラの写真のデータを入れておこう。
どうやって加工すれば面白カッコイイぜ☆な絵になるんだろう。
悩む。
アーサー副艦長が噴出すレベルに加工すれば。
それともアビー副操縦士が「データを寄こせ」と脅してくるレベルにするか?
一般ネタか特定ネタか。どっちに絞ればいいんだろう。

ウンウン唸って考えてたらいつのまにか船が止まっていた。
窓の外を見るとごつい機械や作業服を来た人たちが集まってきている。
もう基地に着いたみたいだ。
しかたないので海苔で重要な部分を隠すだけにとどまる。
この海苔もでかくてインパクトはあるがもっといけるはず……。
帰ったら再編集だな。

元の場所にPCを隠し身なりを整えているとレイが戻ってきた。
目の下にクマが出来ている。
冷蔵庫から栄養ドリンクを渡すと砂漠の中にオアシスでも見つけたかのような勢いで一気飲みした。
本当に疲れてたんだなぁ。

「基地についた。これから交換手続きがあるから集まるようにと命令だ」
「マジかよ。一応準備はしてたけど辛いな。眠てしかたない……」
「俺もだ。とにかく行こう」

愚痴っても仕方ないので素直にレイと艦橋に移動する。
途中でルナとも合流し一緒に行くことに。
まだ戦闘のときのことを根に持ってるのか睨んでくきます。
僕はHAHAHAと乾いた笑いで逃げるしかできません。
艦橋に着くまで針のむしろにいるようだった。

艦橋に着くと微妙にタリア艦長とアーサー副艦長が小物臭のする基地司令官とあーだこーだのやり取りをしていた。
ひとまず挨拶し経緯を見守る。
聞こえてくる内容は主にキラをどう取り扱うべきかで一貫していた。
結局は俺とレイがアーサー副艦長と交えて話し合った案が通った。

アーサー副艦長も影でホッとしていないで胸を張ればいいのに。
なんだかんだで俺達の拙い意見を綺麗に纏めてくれた能力はかなりのもんだよ?
仕方ないから今度いいお店でも紹介するとしよう。

話し合いの結果、キラは基地の施設の修理が終わるまでミネルバの営倉に放りこむことになった。
テロリストが狙ったように基地の収容所を攻撃したせいで入れられないらしい。

砂漠の虎め。ここまで用意周到とは恐れいった。
それで追撃をかけてこなかったのか。
次に会ったら万全の状態で落としてやる。
密かに次の目標を胸に秘め熱血してると嬉しいお知らせが。

なんと酒盛りができるらしい!

え? 未成年の飲酒はいけないって?
ザフトの法律だとOKだから大丈夫。
こういう趣味に寛容なところはザフトが一番だ。
それでラクスにフリーダムを盗まれたんだろうけど今は感謝しておく。

汚してもいい基地の一室を貸し出す上に、ご丁寧にも会場の準備をしておくとのこと。
イヤッホウ! 眠気も吹っ飛ぶぜ。
艦内放送で知らせを流したとたん、艦が揺れた。
どれだけ鬱憤たまってたんだろう。
もしかしてこれも計算して宴会をさせてくれたのか?
なんにしても基地司令官殿もやりますな。
大いに楽しませてもらいます!

退艦許可書を発行してもらった人から順々に会場へと急いでいった。
俺も同じ穴のムジナ。レイとルナを引っ張り急ぐ急ぐ。

会場はかなり広かった。
これなら盛大に騒げるぜと意気込む整備班が会場のセッティングを意気揚々と始め、コック達がキッチンへ急ぐ。
手の空いた者は率先して飾り付けをしているので手伝うことに。

ものの1時間で会場は出来上がり、残すは料理だけだ。
まだ30分ほどかかると連絡があったのでもう一度シャワーを浴びてスッキリすることにした。

広い風呂場で湯船に浸かりリフレッシュして会場に戻ると美味そうな匂いが……ヨダレ出てきた。
人もだいたい集まったところで宴は始まった。



やっぱ現地の酒はうまい!
飯もツマミも最高。
特に魚、鮮度抜群だ。
好きなだけ飲み食いできるなんて幸せすぎる。
寝不足なのも影響して気分は最高にハイッってやつだ!
無愛想なレイも今ばかりは笑いまくってる。

不機嫌だったルナに酒の力を借り拝み倒したら許してくれた。
俺が飯をおごるハメになったが一向にかまわん。

「わかった。そのデートは気合を入れていくよ」
「ちょ、なによそれ! 私は別にそんな気じゃ……」
「俺が勝手に思ってるだけだって!」
「もう! 悪い気はしないけどね……」

照れ隠しにルナは近くのグラスを一気飲みした。
俺も飲んだやつだけどブラッディマリーだったが大丈夫か?

おもしろいから黙ってよ。




そして冒頭に至る。


目を覚ますと女性陣がルナを連行していた。
倒れてる位置からはルナのスカートがベストアングルです。
ミニスカを履く君が悪いのだ。

神秘のトライアングルを満足するまで拝みたかったがヨウランさんの笑顔が怖いんで自重した。
二人とも背中から降りてくれたが両脇をがっちり固められちょっと抜け出せない。
目の前の笑顔のレイが嬉しそうに上に一箇所だけ大きな穴の開いた箱を俺に差し出した。

「中にある紙を一枚引いてくれ。それを実行すれば許してやる」
「『鼻の穴からスパゲティを食え』とかだったらマジで抵抗するぞ?」
「そんなもん見てもつまらんだろ。このヴィーノ様が選んだ罰だから安心しろ」
「余計不安だ」

仕方ない。
俺が悪かったし言うとおりにしておこう。
じゃあさっそく引かせてもらおう。
……これだ。

「うし、引いたぞ」
「ちょっと待ってろ。ふむふむ……『女装して全員に酌をしろ』か。普通のに当たったな」
「あ、俺ちょっと急用思い出したから戻る」

さっと出口までの距離を目測。
大股で8歩か。
人もいない絶交のチャンス。
大きく一歩を踏み出して、コケた。

「くそっ離せレイ! 後生だから見逃してくれー!」
「約束は守るべきだ。気にするな、俺は気にしない」
「おーい、誰かシンに女装させてくれるヤツはいないかー?」
「集めるなー!」
「私、やってみたい」
「アビー!?」

おやっさんまで悪ノリしないでくれよ。
いかん、もう逃げられない。

「やめろマジぶっ飛ばずぞ!」
「男なのに肌がきめ細かいですね。化粧のしがいがあります」
「ビデオの準備できたぞ」
「やめてぇ!」

ああ、もうダメだ。
さよなら俺、こんにちは新しい僕。
父さん、母さん、マユ。
俺は新しい道を逝きます。
どうか見ないで貰えると嬉しいです。

『こんな面白そうな物を見逃すわけにはいかない』

なんで三人とも同じ答えを―――!!





アレですね。抵抗は無駄でした。
バッチリメイクさせられた上に下着まで付けることになるとは……。
下だけはボクサーパンツで納得してもらったがブラジャーとか誰得よ。
ちゃんと詰め物してるのが余計に惨めにしてくれる。
鏡で自分の姿を見て「イケるんじゃね?」と思ったのが一番のショックだった。

「さーシン子ちゃんに酌をして欲しい人は手を上げてくださーい!」

「「「「「「はーい!!!」」」」」

「全員ですね。ではシン子ちゃん頑張って下さい!」
「やればいいんだろチクショー!」



僕は今日、大人になりました。





サバトも過ぎ去り正気を保ってる男衆総出の片付けも終わった。
最後の最後まで女装のまんまだった。
終わって速攻で着替えて自室へダッシュした。
ベッドに倒れこむと凄く気持ちイイ。
化粧臭え。またシャワーに浴びないと。
浴びなきゃ……浴びるんだ。
眠気をごまかしてシャワーを浴びて頭も半乾きのまま俺は眠った。

目が覚めたら昼前でした。
うわー寝過ぎだろ。
隣のベッドでレイは熟睡している。
頭を触ると寝ぐせが凄いことに。
シャワー浴びよ。

人心地つき部屋に戻ると見事に酒臭い。
あーこりゃやべーな。
換気扇を回し、レイの枕元に水差しと薬を置いて部屋を出た。
生きろ……。


ミネルバを降りて艦長のいる部屋に着いた。
警戒態勢で少しピリピリしてる人たちに睨まれる。
物怖じしてないのを装ってタリア艦長の前まで移動した。

「シンじゃない。なにか用事?」
「あの、外出許可が欲しいんですけど出来ますかね?」
「あら。さっそく落としたコとデート? 手が早いわね」
「デートなのは認めます。でもそんなんじゃありませんよ」

大人の余裕でいなされる。
これが熟女の底力か。

「そうねぇ。司令官、部下数名の外出許可は可能でしょうか?」
「近くの町までなら車ですぐの距離ですし問題ないかと」
「と、いうことで許可します」

やけに艦長ニヤニヤしてる。
司令官、アンタらもか。
よくよく見れば俺を睨んでた人たちもニヤけてるし。
今回は本当にデートだけだっての!
別に普通だよな。

無事(?)に許可ももらえたところでルナを誘いに行く。
部屋をノックするとメイリンが出てきた。
なんか睨まれた。

「ルナは起きてるか?」
「今シャワーを浴びてます。あと30分したら来て下さい」
「わかった。あり<ガシャン>う」

……怒るようなことしたっけ?
仕方ない。食堂で軽くつまんでこよう。

食堂で偶然出会ったヴィーノからデータを受け取れた。
すっかり忘れてた。危なかった。
我慢できずにその場でチェックしてみた。

ローアングルで撮影されたカメラの映像の中、様々な色の逆三角が映しだされる。
途中から嬌声が入りカメラが向いたその先にはあられもない姿のルナが。

「パーフェクトだヴィーノ」
「感謝の極み」

札を3枚握らせて別れた。


などという些細なやりとりも終わりルナの部屋の前に再びいる。
予定した時間より20分過ぎたけど大丈夫だろう。

「ルナー? いるかー?」
『シン? 開けていいわよ』

部屋の中にルナしかいない。
よかった。また睨まれるかと思った。

「メイリンは?」
「なんか仕事があるって行っちゃった。それより用事って何?」
「都合着いたら今日、一緒に食事いかないか?」
「へ?」

本人、思い切り忘れてたとさ。
「冗談だと思ってた」なんて言うなよ。男として悲し過ぎる。
冷めた目で睨んでたら慌てだした。
やっぱ忘れてやがったな。

「そんなことより許可とったの?」
「艦長直々にOK貰った。車も使っていいってさ」
「ふ、ふーん? それで何時からいくの?」
「あと2時間くらい後を予定してるけど」
「オッケー! じゃあ2時間後に基地ゲート前で集合ね!」

言い放つと扉を閉じられた。
大急ぎで服を見繕ってるんだろうな。
俺も準備しとこ。



[25333] 第4話 「日常」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/11 13:32
俺は服に対してあまりセンスがない。
基本的に服屋の店員にコーディネートしてもらったのを纏めて買っている。
さらに着こなし方もメモさせてもらっている。
そのメモのとおりに服を着こなして準備は完了した。
副業で肥えた財布と携帯も持ったしいつでも出れる。

約束の時間まで30分前。
そろそろ待ち合わせの場所に用意してもらった車で移動する。

着いた門の前にはルナがいた。
何度も時計で時間を確認したが約束の時間までまだ25分もある。
早すぎじゃね?
そわそわと落ち着かない様子で時計と冊子を交互ににらめっこしてるのが可愛い。

「ずいぶん早いな~」
「そう? 30分前行動は基本よ」

なんでもなさそうに言う割に服は気合入ってますね。
スカートの丈もさらに短くなってるような。
瑞々しい白い肌に映える黒のニーソックス。
いい仕事してますねぇ~。

「それより早く行きましょう。食事の前にショッピングよ!」
「おい引っ張るなよ」

運転席に押し込むな。
暗いより明るいほうがデートも楽しいけど浮かれすぎ。
クスリでもキメたか?
横目でのぞき見ても鼻歌を歌い出しそうなくらいご機嫌なのが顔に出てる。
う~ん。特に親しくした覚えはないはずだが。

汗で透けたシャツを盗撮とか。
靴に仕掛けた隠しカメラにパンツを収めたとか。
格闘訓練にかこつけてあちこち触りまくったとか。
愚痴に付き合うかわりに体を舐め回すように眺めたとか。

碌なことはしてないはずなんだが。

傍目から見れば難しい顔をする男とやたらハイになってる女の怪しい二人組。
道行く人が怯えた顔でこっちを見てることに最後まで気付くことはなかった。


地図に指示してある場所に車を預けてショッピングへ。
おもったより町は繁盛してるらしく商店がたくさん並び活気にあふれてる。
さっそく最寄のよさげなファッションショップへ突撃するルナ。
苦笑いして俺もあとに続く。


いきなりランジェリーコーナーから買うのかよ。
どうてみても罰ゲームです。本当にありがとうございました。

「シ~~ン。これなんてどう?」

真っ赤に燃えた太陽のブラを胸元にもってくるな。
俺はむしろ前に見せてくれたようなピンク系のほうが。
こら、ストライプの上下とか反則だろ。
お前どこで勉強した?

「大胆な彼女ですね? 活発そうなので逆に大人しい感じの服もいいですよ」

店員め。
連れてる女が彼女かどうかなんぞ関係なく男が貢ぎそうな匂いを嗅ぎつけたな。
ぜひお願いします。
もういくらでもつられちゃう。
お嬢様プレイを所望しても断られまくったんだもん
奮発しますんで見事なコーディネートに期待させてください!

「おまかせあれオホホホ!」
「え? なんです、ちょ、どこ連れて行くんですか!」
「服を見繕ってくれるってさ」
「さー行きましょうね~。大丈夫よ彼氏さんが気に入るようバッチリおめかししてあげるわオホホホ!!」

面白そうだと暇そうな店員も寄ってきた。
助けを縋るまなざしを向けてくるルナ。
いと萌ゆるナリ。

「ルナ」
「シン、助け……」
「グッドラック」
「いやぁー!?」

今のうち金を下ろしに行こう。
20万あれば足りるだろ。

「ブラボー! おお…… ブラボー!!」

様変わりしたルナを見た瞬間に叫んでた。
イイ、実にいい。ウィッグでも長髪を見るのは初めてだ。
照れた上目遣いとか指で髪をいじる仕草とか。
パイロット家業で体が締まってるおかげで華奢な感じがしてたまらない。

「店員さんたち。ありがとうございました!」
「こちらこそ楽しませていただきました」

さりげなく渡された領収書は8万だった。
思ったよか安かったな。
レジでニコニコ現金一括払いして元々着てた服が入った袋を受け取る。
なんか店員たちから色々アドバイスを言われては顔を赤くして戸惑ルナの姿。支払いをしてくれた最初の店員さんが手に持ったデジカメでその姿を映してた。
迷うこと無く札を数枚手渡し買い取る。

「今日のことは忘れません」
「たくさん買い物して頂きまして誠にありがとうございました。これは支配人からのメッセージです。お受け取り下さい」

カードには買い物してくれたことへの感謝と支配人のサイン。そしてレストランの名前。

「これって?」

聞くとデートしているカップルの男に支配人が渡すそうだ。
レストランのオーナーは古くからの友人でこのカードを見せれば融通が聞くという。

「ここってネットや雑誌に絶対載せないお店なんです。関係者か紹介がないと入れないんです。いい機会でなので行かれてみてはどうでしょう?」

ここまで押してくるということはハズレはないか。
金も余ってるし行くことにしよう。

「じゃあ連絡をしといてください。今からすぐ行きます」
「かしこまりました」

まだ店員に弄られてたのか。
そろそろ解放してあげてください。

「ルナ~! そろそろ飯に行こうぜ」
「いいけど着替えたいから袋渡して」
「似合ってるよ? 着替える必要ないって」
「恥ずかしいのよ! それに私のキャラじゃないし……」
「ルナ。君は実にバカだなぁ」

殴るなよ。
店員さんたちが驚いてるだろ。
肩口から覗いてたブラは白か。細かいレースが眩しいぜ。

「ここに知り合いは誰もいないんだぜ。いつもと違ったことしたって気にするな。俺は気にしない」
「あんたって本当に鈍感よねぇ。悩んでた私がバカみたいじゃない」

いつもの調子に戻ってきたな。
これでこそルナマリア・ホーク。

「エスコートをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「喜んで」

差し出された手に口づけをする。
ニヤニヤする店員たち。

そしてルナ。いくら知り合いがいないからといって油断は禁物だ。
横からビデオ録画してた店員さんもいるんだぜ?

あとでデータくださいね?

楽しい時間も終わって最高の気分で基地に戻ってきた。
真に遺憾だがルナは服を着替えてしまった。
ウィッグを外し忘れてるあたりがルナらしい。

「さすがに知り合いの前だと恥ずかしい」

お前は俺を萌え殺す気か!


滞り無く基地に帰ってきた。
多少の金はかかったけど楽しかったな。

車を預けルナと歩いてミネルバに戻る。
みんなへのお土産もバッチリ買ったし貴重なデータも手に入った。
こんなに嬉しいことはない。
さっそくレイから配ろうと考えてたらアスランが俺に近付いて来た。
その後方からレイが慌てて駆け寄ってくる。

「二人ともちょうどよかった。これお土産です」
「お前ってやつは!」
「ありがとうございますっ!?」

アスランに殴られた。
めっちゃ痛い。

「ちょっと大丈夫? アスラン、いきなり殴るなんて、どういうつもりなんです」
「ルナマリアどいてくれ」
「今のアスランはおかしいです!」

激昂するルナを宥めてアスランと対峙する。
「怒り心頭なり」と少々逝っちゃってる目のアスラン。

そんなアスランから庇うようにルナは俺の頭を抱き抱えた。
目の前におっぱいがいっぱいだ。
なんという柔らかさ。いい匂いもする。
理想郷はここにあったのか。

しかし女に守られてばっかなのは俺の沽券にかかわる。
非常に残念だがルナの胸の中から脱出しアスランと対峙した。

「殴ったのはキラ・ヤマトを討ったからですか? アスランだってコテンパンにやられて悔しいはずでしょう?」
「……俺は、キラに討たれたことは気にしてなんかいない。お前が戦おうとしなかったキラを無理やり倒したのが許せないだけだ!」

なんでやねん!
仮にもフェイスが手も足も出ずに撃墜されたなんて憤死モンだぞ。
普通だったら俺に感謝とか憎まれ口とか叩くかも知れないけど。
一方的に殴られるいわれなんてねーよ。

レイが俺とアスランの間に割り込んできた。
おでこにはうっすらと青筋が。
切れかけてますね。

「アスランいい加減にしてください。それ以上シンに暴行を加えるなら拘束させてもらいます」
「キラは…お前を殺そうとはしていなかった!いつだってあいつはそんなこと!」

コクピットを狙われたの見てなかったんかい!
もう少しで体がバラバラになってたよ。

「キラもアークエンジェルも敵じゃないんだ!」

「「「その理屈はおかしい」」」

俺とルナとレイ、三人はアスランのその言語に突っ込んでしまう。

「以前に攻撃受けたわけですし。どう考えても敵ですよ」
「ちょっとレイ。アスランどうしちゃったの?」
「わからん。念のため精密検査をうけてもらおう」

ヒソヒソと頭を近づけて話す俺たちを尻目にアスランは頷いて震えております。
もしかして爆発する?

「アスラン。言いたいことがあるなら別室に行きましょう。ここは人の目がありすぎる」

現在進行形で注目の的である。
そこの外野ども、俺がアスランからルナを寝とったとか根拠のないこというな。
昔にメイリンを寝とったことはあるが今はやってない!
それに寝取りキラーは営倉にいるじゃないか。

ふてくされるアスランを宥める。ちゃんと状況を理解させる。
両方しなくちゃならないのが辛い所だよ。
覚悟はいいか。俺はできている。

『報告。パイロットのシン・アスカ、レイ・ザ・バレル、アスラン・ザラの三名は至急、基地司令室に急行してください。繰り返します……』


出鼻くじかれた。



[25333] 第5話 「新たな力」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/12 20:43
「……」
「……」
「……」

シン・アスカです。突然ですが現場の空気が最悪です。
一番年長者で実力派のアスランがふて腐れてます。
同僚のレイまで露骨に不機嫌丸出しです。
どうしたらいいのでしょうか?

議長なんて顔が引き攣ってるんだぞ。
せっかくの新型のお披露目なんだからテンション上げていこうぜ。

「す、凄いですね! これが新型ですか」
「そ、そうだ。ZGMF-X42Sを元に再設計された機体ZGMF-43S。通称デスティニーだ」

おお、俺の意見を取り入れてくたんだ。
睡眠時間削って嘆願書を送りまくったかいがあった。
それにしても
見た目はいつもと一緒ですね。
特別に変わった感じはしないんですが。

「動力部の見直しから始まり部品や武装を一部ザクなどの主力MSと共通化したそうだ。そのため整備性も上がり武装もパイロットの裁量で選択しやすくなっているんだよ」

想像よりも便利になってて感動した。
これでおやっさんに泣かれずにすみます。
いっつもディスティニーで戦ったあと整備性が最悪だと愚痴られまくって肩身が狭かったんです。


「こちらはZGMF-X19Aインフィニットジャスティス。アスラン、君の後継機だ」

相変わらず「トサカに来たぜー!」と叫びたくなるフォルムの機体。
格闘機なのに当たり判定が多いとはいかに。
使いやすいがリフレクターを取り外すのは微妙だった。
たまに撃墜されたし。
機動力ガタ落ちしたあとは空からフルボッコされて惨敗したときもあったなぁ。
あんときはシュミレーターだったことに感謝した。

「レイ。君のMSであるZGMF-X666Sレジェンドはシンのディスティニーとの連携も視野に入れて開発したMSだ」

感慨に浸ってたら話が進んでいたでござる。
いつのまにやらアスランとレイは真剣に話を聞いている。
俺の心配を返して!

「ディスティニーが奇襲をかけジャスティスが斬り込む。二機の隙をなくすためレジェンドが遠距離から援護する。これが理想とするポジションだ」

見事などや顔です議長。
前大戦じゃフリーダムとジャスティスがパクられて少数精鋭のチームワークできなかったらしい。
やっと実現できるんでテンション上がってるんだろうな。

「私は反対です」

レイー!?
いきなりどうしたんだ。
まさかの反抗期か。
中二病はとっくの昔に二人で乗り越えたじゃないか。

「理由を聞かせてくれないか?」

ちらりと横目で視線が来た。
俺も参加しろってんですか。
勘弁して下さい。

「アスランは過去に脱走経験があります。復帰し任務に誠実に対応してたならば私もこのようなことは言い出しません」

迂遠に「お前の信頼ねぇがら!」と言いたいわけだな。
確かにほぼ無抵抗でセイバーをダルマにされて落とされる。
なぜか敵であるテロリストを庇う。
今までが優遇されすぎてたってわけですよ。
わかったかそこの脱走兵。

「ふむ。ではシンとしてはどうしたい? こちらとしてはせっかくの機会を無碍にしたくないのだが」

はーい。無茶振りきましたー。
どっちの意見をとっても角がたつじゃないですか。

「俺としても。残念ですがレイに同意です。信用はできても信頼ができません」

ちょっと驚いた議長。
アスランは地味に傷ついてる。

アンタいきなり人を殴りつけたでしょうが。
これでも大分優しくしてんですよ。
簡単に落ち込まないでください。
だいたい仲の良い友達のほうを取るのは当然じゃないですか。
俺よかキラを擁護してたからこれでお相子です。

再びの沈黙が訪れた。
心なしかインフィニットジャスティスが泣いてるように見える。

なんとか議長の必死のフォローのかいあってレイは渋々、本当に渋々アスランの機体の受領を受け入れた。
本っっっ当に嫌そうだった。

アスランもいいとこあるよ。
結構面倒見がいい、冷静になりきれない、何を言っているかわからない、赤服のTOPだったから技能はいける。
ほら、こんなに沢山あるじゃないか。

あまりにも嫌がるのでインフィニットジャスティスの起動キーはレイに預けられた。
アスランに渡されたのはサブである。
仮に戦闘中に裏切り行為があった場合、特定のシグナルを出すことですぐに起動停止するらしい。
追い打ちにレイが近くにいないとインフィニットジャスティスを機動すらできなくなった。

これらのシステムは昔、フリーダムとジャスティスが奪われた教訓のたまものだそうだ。
と議長はこっそり俺にだけ教えてくれた。
……お疲れ様です。

話も終わり二人はミネルバにもどっていった。
なぜか俺だけ議長に呼び止められお茶会をしてる不思議!

「君にはお礼を言わなければならない」
「え?」

さっきの殺伐とした状況を作り出した原因の一人にですか?
議長、あなた疲れてますよ。

とは言わないのが俺クオリティ。

「私が知っているレイは人見知りしてたんだよ。アカデミーに入学したときも他人とは境界線をきっちり分けてた」
「あのレイがですか」
「そうだ。だが君と出会い生活を共にしていくにつれ我儘も言い出すようになってね。保護者としてこれほど嬉しいこともない」

最後に炎の中、議長の手を握りながら「お父さん!」と叫んでたのは光景。今でも記憶に焼き付いてます。
間違いなく議長はレイのお父さんです。

「だが今回のような事は予想外すぎた。よほど鬱憤が溜まっていたんだろうね……」

事件は現場で起きてるんです。
そりゃストレスもウナギ登りってもんです。
特にキラを捕縛しちゃったからなぁ。
警備のやり取りで疲れてもいましたからね。

「いえ、今回のケースは正当な理由があります。レイは正しいと思います」
「そう言ってもらえると助かる。しかしこうなるとアスランの籍をミネルバに置いておくのも心配だ。かといって本国に返すのもなかなか難しい」

眉間にシワを寄せてウンウン唸り出す議長。
アスランの処遇かぁ。
たいていキラのほうに転がり落ちますんでこのままだと確実に裏切られますです、はい。
綺麗サッパリ切り捨てるのが一番ですよ。
しかしだ。
なまじパイロット技能と頭が切れるもんだから敵に回すと面倒くさいことこの上ない。

「体に爆弾でも埋め込んどきます? ミネルバから10キロ離れたらボンッ……みたいなのでどうでしょう?」
「人道的観点から認められないよ。だが首輪をつけるという案はいいね」
「首輪に人手を割くくらいなら監禁しとくのも手ですよ。もしくは連合側の国に預けるのは?」
「……たまに君の考えからテロリストのような印象を受けるね」
「そうですか? 昔の国はけっこう似たようなことやってました」

自白剤で人格破壊はデフォルトだったみたいです。

あーだこーだと1時間話したが結論は出なかった。
結局は現状維持で収まるみたいだ。
ただ人員が少ないので何人かパイロットを送ってくれるという。
やっと寝不足の日々から開放される。

「議長。その人員って誰なんですか?」
「うん? 君もよく知ってる人物だよ」

胡散くさい笑顔をありがとうございました。



[25333] 第6話 「さまよう眸」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/13 22:00
「ミクに俺のヒットチャートを覚えさせるまで死ぬわけ無いだろ!」

笑顔と共に現れたハイネの一言目でした。
/(^o^)\ナンテコッタイ

原因は分かってる。俺だ。
昔に流行ったボーカロイドなんてソフトを教えなければこんなことには。
ここまでハマると誰も予想できねーよ。
さりげなくオリコンチャート(地球版)200位にランクインしてるのが恐ろしい。
パイロット職しながらこれなら戦争終わったらマジで世界トップ歌手になれる。

「シンには感謝してる。こんな楽しいことを教えてくれただけじゃなく命まで救ってもらった。」

ステラに殺されないようタッグを組んだ甲斐があった。
グフが大破したときは「あーこりゃ駄目かもしんないね」と思ったら当たり所がよくて生きてた。
急いで本国に送還する際に「俺のパソコンを……」とつぶやき続ける姿に敬礼を送ったことを鮮明に覚えてる。

「ちなみに俺のMSは新しく搬入したインパルスだとよ。それよか本国の部下を連れて来たかったが……すまん」
「いいですよ。ハイネだけでも十分頼りになりますって」
「そう言ってもらえると助かる。これから設定しなくちゃならないんで行くわ。あとでみんなで飯でも食おうぜ」

あいかわらずのテンションで安心した。
ところで小脇に抱えているノートパソコンはデータ構築用ですよね?
さりげなく初音ミクのシルエットが刻印されていて不安なんですが。

とりあえず見なかったことにした。



ミネルバのMS構成はデスティニーに俺。レジェンドにレイ。インフィニットジャスティスにアスラン。インパルスそれぞれにルナとハイネの4機構成になった。

ハイネは自分のインパルスの調整が終わってすぐにシミュレーションルームでパイロットを集めてミーティングを始めた。
現在のミネルバは柔軟なフォーメーションが組める機体が揃っている。パイロットの腕も確かで派遣部隊としても十分やっていけるほどだ。
同時に個人主義が拭えないザフト軍の意識改革の布石としてフォーメーションのデータ収集のための訓練も行っていく。

「そのデータとパイロットの腕前により友軍が危機に陥っても戦線を持ち直す、さらには押し返すようにしてくれ」

とハイネは話を切り出した。
全員ぽかーん状態。

「簡単にいえば超万能部隊として活躍しろってことらしい」

ハイネ、笑いながら言う台詞じゃない。

「しかし可能なんですか?」
「少数精鋭って聞こえはいいけど多勢に無勢だと潰されちゃうわ」
「俺もそう思う。せめてあと3人パイロットがいれば」

三人の言い分をうんうん頷いて聞き取り終わると嬉しそうに笑った。

「その通り! そんな部隊は無理だ。だが目標として設定するのはいいことだろ?」

さらに呆れる俺たち。
わかってるなら増員してもらいたい。
前みたいに一人で戦うなんてゴメンだ。


グダグダで不毛なミーティングはかなり早く終わった。
俺達は微妙な空気の中、シミュレーションで自分の訓練を始める。

小一時間経ち俺が出たのを皮切りに男3人も続けて出てきた。
シミュレーターはルナを除けば全員が慣れたもんで、おおよその戦闘ができる程度まで熟成してる。
ザクよりパワーのあるインパルスをルナは今ひとつ扱いきれてない。
ルナには悪いが暫く一人でシミュレーターに篭ってもらおう。
ハイネに聞いておかないといけないことがあるんだ。

ハイネに声をかけ報告することがあるとレイとアスランに話をし二人で食堂に向かった。



「ハイネ、一コーヒーでもどうです?」
「いーねー。ついでにミクの様子も見せてやるよ」

勘弁してくれ。
なんでいつもパソコンを持ち歩いているんだよ。
食堂の空いてる席に座ってコーヒーを待ってる間、ハイネから洗練された初音ミクの歌と踊りを拝聴。疲れを飲み干して質問を切り出す。

「ミーティングの命令。あれって本当なんでしょ?」
「ふふーん? あんな馬鹿げた命令が来るわけないだろ。本気にすんなよ」
「いや、ハイネの目は本気でした」

くだけた表情から一変、鋭い眼つきで周囲を見渡し小声で話し始めた。

「大真面目だ。このままだとザフト軍を維持できない。ただでさえ前戦争で人手が減ったのにすぐに戦争だ。人が足りないんだよ」
「それで組織戦を固めようとしたんですね」
「……個人プレーを悪くいう気はない。俺も好きだしな。でも連合側の数に対応しなくちゃならない。だからこそ対抗するための手段が必要だ」
「それでバランスよく部隊編成できる機体を集中して送り込んできたんですか」

面白くないがな。と言い放ち乱暴に残っていたコーヒーを飲み干すハイネ。その表情が渋いのは不味いコーヒーを飲んだからだけじゃないだろう。

「迎撃用のMSだったフリーダムが還ってきたのは僥倖だった。これで迎撃用MSの開発が一気に進む」
「迎撃用?」
「ああ。マルチロックシステムの開発が難航してたんだ。ザクやゲイツにフリーダムのバックパックを組み込んで数を用意してな。そのためのシステムだ」

あんなシステムで無双できるのはキラくらいだからな。
普通の赤服でも命中率は7割くらいのはず。

「恐らく議長は迎撃体制が整いきれるまで時間稼ぎをしたいんだろう。地球圏で俺たちに注目を集めさせたいんだ」
「だからあんな意味不明な命令まで……」
「俺達が時間を作れば本国が安全になる。そうすれば人員を前線なり民間なりに戻せるんだ。俺は議長の考えを尊重したい」

寂しそうな顔。
馬鹿な命令をしなければならないほど危機的状況なんだな。


「そして生き延びたらヒットチャートを……」

台無しだよコンチクショウ!



ハイネとの頭痛が痛い会話を切り上げ部屋に戻ってちょっと眠った。
正味15分ほどで目を覚ましシャワーを浴びてリフレッシュしてシミュレーターにもう一度向かう。
艦内はキラ・ヤマトがいるせいで戒厳令が解かれておらず行き交う仲間たちはうんざりした顔ばかりだ。

本当なら本国に送るべきだという主張もあったようだ。
襲撃されて奪還される恐れが高いのできないらしい。

・・・・・・そこは「出来ますよ!」と主張する部分では?

たぶんラクス・クラインの威光のせいだろうな。

「なんで戦場でしゃしゃり出た小娘の発言を意識するの? 馬鹿なの? 死ぬの?」

と声に出して撃ち殺されたときもあったなぁ……。


なんて感傷に浸ってたら着いた。
まだルナは続けていたらしく部屋の湿気が凄いことに。
……なんか背徳的な感じがしていいね!

しかし訓練開始から既に5時間は越えている。
あまり根を詰めて疲労を残すようなことになると大変なので止めることにした。

「そろそろ休めよ。まだ仕事があるんだぞ」
「もうちょっとなのよ。もうちょっとでコツが掴めそうなの」
「わかったわかった。最後に俺も付き合ってやるよ」
「ホント?」
「元愛機だったからまかせとけ」

というわけで。
ルナを膝の上に載せてシュミレーターにいます。
疲れて頭が回らないルナは俺の申し出をあっさり受け入れちゃった。
べ、別に狙ってやったんじゃないんだからね!
勘違いするなよ!

「ターンするときはこんな感じで、次はスロットをこう……てな具合」
「えっと……ここでこうして……出来た!」
「上手いぞルナ。基本動作はこれを軸にすればいい。時間がないからフォースシルエットを中心に鍛えとけば後は応用だけだ」
「ありがとう。ん~~~~~~っ……疲れたぁ」

安心して力が抜けたのかルナは体を俺の胸に預けてくる。
いいなぁ。こういうのいいなぁ。
ここで一句。

上から見えるおっぱいの 凄まじきこと山の如し。
シン・アスカ心の俳句

隠しカメラは、ちゃんとあった。
流石はヴィーノ。
あとでパソコンに保存しとこ。
ヨウランに採点してもらわないとな。
今回はいいとこまで行くだろう。

乱れた呼吸も収まってきてルナの揺れる頂き達も沈静化してきた。
俺も十分に堪能できたので満足。
よろめくルナの体を支えて一緒に立ち上がり、備え付けのタオルとドリンクを手渡した。
貪るように一気飲みしタオルで乱雑に頭をかいてさっぱりした表情を浮かべた。

頬を赤く染め心なしか潤んだ瞳に一瞬みとれた。
パイロットスーツっていうのがまたいいよな。

「ありがとうシン。おかげでなんとかなりそうだわ」
「別にいいさ。それよりシャワーを浴びてこいよ。ぶっちゃけ汗臭いぞ」
「もう……そういうこといわないでよね」

あれ? なんか指を絡めてモジモジしちゃったよ。
デレ期、デレ期なのか?
馬鹿な。まだアスランとメイリンを撃墜してないぞ。

甘酸っぱい空気の中で俺は激しく混乱していた。
どうする? どうするよ? 助けてライフカード!

1ちゃらける
2こっちも照れる
3なんとなく肩に手を置く
4いきなりハグする
5奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です。


続く!


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.108922958374