佐賀市で知的障害者の安永健太さん(当時25歳)が警察官に取り押さえられた直後に急死した問題で、県警巡査長、松雪大地被告(30)が特別公務員暴行陵虐傷害罪に問われた審判。昨年12月21日の第10回公判で、安永さんの司法解剖の鑑定資料(写真など)を基に鑑定を行った医師が出廷し、検察役の弁護士が証人尋問した。
検察役 この事件の鑑定で佐賀地裁から鑑定依頼があったか。
証人 はい。
検察役 成傷器(傷を生じさせる凶器など)の一つである鈍器の中で、軟らかいものと硬いものがあるのか。
証人 拳などは軟らかい鈍器で、鉄パイプなどは硬い鈍器に当たる。
検察役 軟らかい鈍器と硬い鈍器で、遺体の特徴に差が生じるか。
証人 硬い鈍器の場合は軟らかい鈍器に比べ、同じ外力であっても、より強い損傷が生じる。
検察役 遺体の鑑定で、凶器は何である、という断定は難しいか。
証人 はい。
検察役 表皮剥脱とは。
証人 鈍器の中でも表面がザラザラなもので、擦過されて皮膚の表面の部分がはがれめくられる損傷。
検察役 皮下軟部出血とは。
証人 皮下脂肪の筋肉や筋など、皮下より深いところにある出血。
検察役 今回安永さんの件で表皮剥脱は遺体のどの部分にあったか。
証人 額の部分と左足ひざ。
検察役 首の部分も皮下出血か。
証人 はい。
検察役 左胸辺りにも変化があるのか。
証人 はい。
検察役 右耳下の付け根に皮下出血はあったか。
証人 はい。
検察役 右耳部分の傷は、拳によるものかどうか言えるか。
証人 拳で傷ができたとされたとしても矛盾しない。
検察役 拳であるということの断定は。
証人 断定はできない。
検察役 法医学では凶器の断定はできないか。
証人 特定はできない。
検察役 (首の部分の傷は)どういう性状に基づく損傷とみられるか。
証人 筋肉の出血の回りに皮下出血が起こり、打撲よりも圧迫、押さえつけられたような損傷。
検察役 圧迫したような損傷と判断できるか。
証人 そうです。
検察役 圧迫とは。
証人 指が当たった可能性があり、指で押さえたなど。首を絞めた時によく見られる。
検察役 (右手の関節にあった)2本の線は手錠のようなものでついた傷ではないかと判断したか。
証人 はい。
検察役 左大腿(だいたい)部の傷は制圧行為の強い圧迫が作用したと思うか。
証人 体の内側にあるもので、殴打されるには不自然な場所。
検察役 (体の傷が)殴打行為によるものかどうかの断定は難しいとのことだが、殴打での傷と断定したことは今まであるか。
証人 殴る行為と偶然当たったのを区別はできない。=つづく
毎日新聞 2011年1月13日 地方版