佐賀市で知的障害者の安永健太さん(当時25歳)が警察官に取り押さえられた直後に急死した問題で、県警巡査長、松雪大地被告(30)が特別公務員暴行陵虐傷害罪に問われた審判の第9回公判(昨年12月16日)。松雪被告に対する被告人質問で、被害者参加人の弁護士による尋問が続いた。
参加弁 パトカーの車中で安永さんの蛇行運転を発見した時の(被告に同行した警察官)Aとの会話は。
被告 「危なかですね」などと言った。
参加弁 あれはヤク中(薬物中毒)だとかアル中(アルコール中毒)だとかの話は。
被告 ありません。
参加弁 Aが手錠を掛けるぞと言った時点から両手錠まで何分くらいか。
被告 3分くらい。
参加弁 片手錠と両手錠、どちらがよりてこずったか。
被告 両手錠にはできなかったのでそっちの方が難しかった。
参加弁 冥福を祈る、という言葉以外に遺族への言葉はあるか。
被告 安永さんの遺族や関係者に対してお悔やみを申し上げます。
参加弁 職務執行中に起きたこととして、知的障害者が心肺停止になったことを振り返り、真摯(しんし)に見つめ直したり、どこがいけなかったのか考え直すことは。
被告 私としては正当な職務行為をしたと思っている。
参加弁 精神錯乱者というのは意思疎通ができない人と定義しているか。
被告 コミュニケーションが取れず意味不明な言動をする人。
参加弁 保護する場合、精神錯乱者なのか知的障害者か区別の必要はないのか。
被告 そういうものを区別する訓練を受けていない。
参加弁 安永さんが授産所にいたことは。
被告 後から知った。
参加弁 授産所に通っている知的障害者は、一般的に、ゆっくり話せば大抵のことは意思疎通できることは知っているか。
被告 はい。
参加弁 意思疎通するためには幼稚園児を相手にするように、ゆっくり根気よく接するように、と一般的に言われていることは知っているか。
被告 はい。
参加弁 あなたは幼稚園の人と話すような、そういう気持ちで安永さんに接しようと努めたか。
被告 そのような問い掛けをできる状態ではなく、してない。
参加弁 自転車の蛇行運転について、犯罪行為だと思ったのか。
被告 道交法違反に当たる。
参加弁 事故の危険性があると。
被告 はい。
参加弁 安永さんは(パトカーからの)警告を無視して走り続けたか。
被告 無視したかどうかは分からないが、蛇行運転が変わらなかった。
参加弁 聞こえたかどうかは分からないか。
被告 私は聞こえるよう、普通の交通違反者と同じように注意したが、聞こえたか無視したかは分からない。
参加弁 安永さんの耳が遠いことについて知っていたか。
被告 知らない。
参加弁 現場交差点で自転車とバイクが接触したことについては間違いないか。
被告 状況で判断し、ぶつかったのは間違いない。安永さんがうつぶせに倒れていたので交通事故と判断した。
参加弁 周辺の車から状況を調べたことは。
被告 私はそのようなことをする時間はなかった。
参加弁 安永さんが事故の被害者だったという可能性は。
被告 状況から考えられるのは、自損事故か追突だった。
参加弁 バイクが安永さんの進路妨害をしているという可能性は。
被告 私が見たとき、バイクは停車しており、妨害されたかどうかは分からない。(被告人質問は終了)=つづく
毎日新聞 2011年1月12日 地方版