【ソウル=箱田哲也】韓国全羅北道・群山市沖の黄海で中国漁船が韓国警備艦に体当たりして転覆した事件で、韓国の検察当局は25日午前、現場で救助し、特殊公務執行妨害の疑いで取り調べていた中国人船員3人を起訴せず、中国側に引き渡した。3人は同日中に帰国。韓国政府は事件が外交問題に発展することを避け、早期の解決を図った形だ。
韓国海洋警察庁は18日、韓国の排他的経済水域(EEZ)で不法操業していた中国漁船団を発見。漁船の一隻に乗り込もうとした同庁職員4人が暴行を受け、重軽傷を負った。さらに、別の漁船が警備艦の進路を妨害しようと体当たりし、転覆。漁船側の1人が死亡、1人が行方不明になっている。
韓国国内では、悪質な事件だとして厳しい処罰を求める声が出たほか、中国政府が21日に韓国側に損害賠償を求める考えを示したことに、韓国メディアは強く反発した。だが、当局側は3人が捜査に協力的だったことなどから、起訴を見送ったとしている。
不起訴の判断には、韓国政府の強い意向が働いたとみられる。韓国政府は北朝鮮の核開発問題や大延坪島(テヨンピョンド)砲撃を巡る中国との関係、中韓間の経済分野への悪影響などを懸念し、慎重な対応が望ましいとの意向を示していた。