【ソウル=牧野愛博】韓国・群山市沖で18日に韓国警備艦に体当たりして転覆した中国漁船は、韓国海洋警察庁職員に暴行した漁船とは別であることが分かった。群山海洋警察署が明らかにした。中国漁船が最近、取り締まりを逃れるために集団で行動し、凶悪化している実態が浮き彫りになった形だ。
警備艦は韓国の排他的経済水域(EEZ)で不法操業していた中国漁船15隻を発見。このうちの1隻に接近した同庁職員4人が、中国漁船員から鉄パイプなどで暴行を受けて負傷した。その後、漁船が集団で逃げる際、暴行した船とは別の船が警備艦の進路を妨害しようと体当たりし、転覆したという。
転覆した漁船は10人乗りで1人が死亡、1人が行方不明になった。韓国が救助した3人を除く5人や、職員に暴行を加えた漁船は逃走した。
同庁によると、韓国近海で昨年、同庁が拿捕(だほ)した中国漁船は381隻。今年も20日現在で拿捕した外国漁船394隻のうち、ほとんどが中国漁船だという。韓国に近い山東省や遼寧省の漁船が多く、10隻以上で船団を組む。取り締まりに遭うと、隊列を作って逃げながら漁具や竹やりなどで抵抗するという。
一昨年9月、韓国南西部沖で取り締まり中の同庁職員が中国漁船の抵抗で死亡。先月29日にも、済州島沖で中国漁船員に暴行を受けた同庁職員6人が負傷した。
一方、韓国政府は22日、中国外務省が21日に韓国に損害賠償を求める考えを示したことを受け、事件当時のビデオ映像などを検証した。沈没地点は中韓のEEZが重なる暫定水域だったが、事件自体は韓国側EEZで発生し、韓国側の取り締まりに問題がなかったことを確認した。
韓国は18日に中国大使館に死者が出たことへの「遺憾の意」を伝えたが、中国政府から抗議や謝罪の要求はない。韓国政府によると、両政府は事件を外交問題に発展させない方針で一致している。韓国政府関係者は中国側の損害賠償要求について、「中国内の反発を考慮した発言ではないか」と語った。