知的障害など、判断力が十分でない人に代わって財産管理などを行う「成年後見制度」について、後見を受けると選挙権も失うのは憲法に違反するとして、48歳の知的障害の女性が、選挙権を認めるよう求める初めての訴えを近く東京地方裁判所に起こすことになりました。
裁判を起こすのは、茨城県牛久市に住む名児耶匠さん(48)です。名児耶さんは、ダウン症で知的障害があり、4年前に父親が、判断力が十分でない人に代わって財産管理などを行う成年後見人になりました。法律では、後見を受ける人は選挙権を認めておらず、名児耶さんも後見を受けると同時に選挙権を失いました。しかし、名児耶さんは、20年以上にわたって選挙の際は欠かさず投票し、選挙公報も読んでいたということで、投票する判断力があると主張しています。このため、後見を受けたことで選挙権が失われたのは選挙権を保障する憲法に違反するとして、選挙権を認めるよう近く東京地方裁判所に訴えを起こすことにしています。名児耶さんは「選挙に行けないのは残念で、また行きたい」と話しています。父親の清吉さんは「娘の権利を守るために後見人になったのに、それによって選挙権が奪われるのは親として納得できない」と話しています。これについて総務省選挙課は「選挙のたびに個別に能力を審査するのは実務上難しいため、後見を受ける人は判断力に欠けるとして選挙権を認めていない」としています。成年後見制度は平成12年に始まり、知的障害や認知症などのために後見を受けた人はおよそ14万人に上っていますが、選挙権を認めるよう求める裁判を起こすのは初めてです。成年後見と選挙権を巡っては、平成17年に日本弁護士連合会が「後見を受けた人も投票は可能で、一律に選挙権を制限する規定は見直すべきだ」と提言しています。