現在位置:asahi.com>健康>メディカル朝日コラム> 記事 内視鏡検査2007年02月12日 先日からおなかの調子がよろしくない。痛みの周期が長い気がする。時々ものすごく痛くて、夜中に目が覚めてしまう。2〜3時間置きなので睡眠不足だ。食欲はある。便通も悪くない。それでもおなかが重いようなすっきりしないような感じで、トイレに何度も行ってしまう。胃腸風邪かなぁ? 体もだるいような気がするし。それとも消化管の疾患かしらん?
そんなわけで3日前から痛み止めと抗生剤と胃粘膜保護剤を服用しているものの、すっきりしない。 医者のくせして、この不定しゅう訴(注1)のような書き出しは何だ、と思われるかもしれませんが、だって、本当なんだ! 何だか分からないけど、調子が悪い! 一向に良くならないので、とうとう観念して「消化器外来」を受診した。超音波検査くらいしてもらおうと、一応朝から絶飲食にて受診。「あ〜、カメラ! カメラ予約して。うん〜絶飲食で来た? あ、そ。じゃ、今日飲んじゃおう。内視鏡室行って。電話しとくから」 消化器内科医長のY先生はおなかも触らずにめんどくさそうにのたまった。「センセ〜、超音波検査くらいやってよぉ。膵炎かもしれないし、石(注2)とかあるかもしれないし」「じゃ、寝て、寝て。ちゃっちゃっとやっちゃうからね」「丁寧にやってよぉ!」「うるさい患者だなぁ」 本日の外来最後が私。たいてい自分の病院で診てもらおうとすると、外来の最後に回されます。それは別にいいんだけど、もうちょっと優しくっていうか、親切っていうか、一応、患者なんだから丁寧に扱ってほしい。Y先生は朝からの外来で疲れているのと、そろそろおなかが空いてきているのとで、投げやりモード。それでもとりあえず超音波検査上は膵炎を疑う所見も石もなし。「大丈夫、何にもなし。じゃ、僕、飯食ってくるから。内視鏡室で待っててね〜」Y先生はプローベ(注3)を投げ出すとそそくさと外来を出ていってしまった。 おなかの上にたっぷりと超音波検査用のゼリーを塗られたまま、一人残された私。近くにあるタオルを取ろうとおなかを全開にしたまま(その上ゼリーがたれないように水平に保ったまま)、無理な体勢で腕を伸ばした。よほど変な格好だったのだろう。「何やってるんですか?」通りかかった看護師さんに笑われる。 さて、内視鏡室。Y先生からの連絡が通っていたらしく、若い看護師さんが不機嫌にお出迎え。1件仕事が増えてお昼休みが遅れたから不機嫌なんだろうが、もうちょっと愛想ってものがあるだろう。ああ、みぞおちの辺りがきりきりと痛い。検査前の薬を少々乱暴に注射され、麻酔薬のゼリーをのどの奥にふくんで上を向いた。さぞおかしな格好だろうなぁ。惨めだ。私ともあろう者が。こんなことなら家で寝ていればよかった。のどの奥にゼリーを置いておこうとするものの、かえってむせてしまう。その度に看護師さんからキッとにらまれる。 受診したことを少々後悔し始めた頃、Y先生が食事から戻ってきた。 「お、準備できた〜? ちゃっちゃっとやっちゃいましょう」涙目で上を向いている私ににこにこしながら話しかけるが、どうにもこうにもこんな姿勢では返事ができない。 「あ〜、これだわ。ご立派な胃潰瘍。胃壁もただれてるね〜」Y先生はうれしそうに言う。「ねぇ、潰瘍あるよったら」Y先生はわざわざ私の顔をのぞき込みながらおっしゃる。 何でもいいからさっさと終わらせてくれ〜。目で合図するものの、分かってない様子。「んじゃ、写真撮るからげっぷ我慢ね〜」Y先生の内視鏡テクニックはすばらしいものだろうが、私の「げっぷ我慢テクニック」は入門クラスだ。送気されて胃壁が張ってくると、ことごとく出してしまう。 「真田先生げっぷ我慢して!」Y先生の叱責が容赦なく飛ぶ。我慢してったってねぇ……。「ぶげぇぇぇえええ……」「げっぷ我慢しないと検査終われないよ!」そんな脅かさなくっても早く終わってほしいのはこっちのほうだ。情けない。情けなさすぎる。涙とよだれが頬を伝う。 体調が悪いうえに、さらに体に悪いことをしてしまったような気がする。惨めなこと、この上なくストレスもたまった。潰瘍も悪化するかもしれない。かわいそうな私。さてその結末は? 次号、乞うご期待。 (注1) 不定愁訴:漠然とした症状の訴え。 (注2) 石:結石のこと (注3) プローベ:探触子 筆者プロフィール
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