現在の竜騎士07さんを支えているのが、公務員としての社会人経験です。一見自由気ままに見えるクリエイター生活ですが、そこには会社に所属するビジネスマン以上の責任感やコミュニケーション能力が必要。いったい竜騎士07さんは、公務員時代になにを学び、学んだことを今の仕事でどう生かしているのでしょうか? 詳しくお聞きしました。
―知識や技術だけでなく、精神力やコミュニケーション能力が身につくんですね。
そう思います。もの書きという職業は、上司もいなければ後輩もいない、非常に狭い世界での仕事です。ひとりでパソコンに向かって黙々と作業をしていることも多く、視野が狭くなりやすい。ところが、最初から最後までひとりで仕事ができるのかといったら、決してそんなことはありません。書いた原稿を本にしてくれる出版社の方や、デザイナーの方、
宣伝をしてくださる広報の方など、本当にたくさんの方と関わらなければならないんです。そのときに「社会人経験がきちんとあるかどうか」の差は大きい。私の場合は公務員の経験があったからこそスムーズに多くの方との仕事ができているのだと思いますし、また、もの書きとしての仕事を「大変だ」と思わずにやれているのだと思います。
―その他に、なにか公務員時代に学んだことはございますか?
ビジネスマナーというか、社会人としての常識みたいなものを学びました。たとえば、上司から「8:30に出社しなさい」と言われたとしますよね? だからといって素直に8:30に出社していたら、これは社会人として失格です。「8:30に出社しろ」といわれたら、少なくとも新人は30分前に出社して、机を拭いたり、お茶の用意をしたりしなければいけない。そういう「社会人として当たり前の配慮」や「ビジネスの上での常識」を学ぶことができました。
他にも、いくつもの仕事を並行して進める際の優先順位の考え方や、納期を守るという責任感などなど……。当たり前のことをきちんと身につけられたと思っています。
―その自信や責任感があるからこそ、しっかりとご自身を律しながら作品作りを続けていくことができるのでしょうね。
そうですね。よく「どうしたら作家になれるんですか?」と聞かれるんですけど、まずは当たり前の責任感を持って、自分の作品を完成させてほしいなと思います。長い作品を書いていると飽きてきて、途中で次の作品を書き始めてしまう……という人が多いんですが、それではダメ。ほら、企画だけぶち上げて途中で投げ出してしまう社会人っているでしょう? でっかい風呂敷を広げたはいいけど畳めない、みたいな。それじゃ誰も信用してくれませんよね。小さな風呂敷でもいいから、広げたらきちんと畳むこと。これが作家活動においても社会人生活においても大事だと思います。
―では最後に、竜騎士07さんご自身の目標をお聞かせいただけますか?
『月姫』や、私が作った『ひぐらしのなく頃に』が登場するまで、コミックマーケットは二次作品を生む場でしかありませんでした。なにか有名な商業作品があって、それをパロディ化したり、マンガ化した作品が大半だったように思います。
しかし最近は、まったく新たなオリジナルコンテンツが生まれる場として認知されるようになってきました。個人の趣味人が、オリジナルの、質の高い作品を発表する場になってきているんです。それの流れをもっと活性化させていきたいですね。私のうしろに続く人たちが、今まで以上にスピーディに、正当に評価されるようになると嬉しく思います。また私自身ももっともっと勉強して、新しい作品を生み出していきたいと思っています。世の中に無駄なことなんてひとつもありません。人生すべて勉強。常に学び、糧にして皆さんに喜んでいただける物語を作っていきたいですね。
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竜騎士07さんからフレッシャーズ読者のためにサインをいただきました。 |