きょうの社説 2011年1月13日

◎ネット被害防止 もっと大人が実態把握を
 石川県教委によるインターネット上の巡視で、昨年4月〜12月に中高生が書き込んだ 不適切な文書が278件見つかり、昨年度1年間の件数を超えた。自身の不良行為や特定の個人を誹謗(ひぼう)中傷するなどの書き込みが後を絶たず、トラブルが生じやすい実態があらためて浮き彫りとなった。

 これらの事例は「氷山の一角」との見方もあるが、県内では書き込みが原因で事件に発 展したこともあり、いじめや犯罪などの深刻な事態につながらないように早めの対応を続けてもらいたい。

 昨年1月、小中学生に携帯電話を持たせないよう努めるとした改正「いしかわ子ども総 合条例」が施行された。実効性を高めるには、まず親がネットトラブルの危険性を十分理解する必要がある。ネット上の有害情報などに対応できる情報モラル教育の推進が求められており、指導する側の親や教師がもっと子供たちのインターネットや携帯電話の利用実態を把握して、ネット被害を防ぎたい。

 問題のある書き込みは「学校裏サイト」などの掲示板型サイトから、自己紹介をする「 プロフ」などに移行しているといわれる。県教委による巡視で確認できた不適切事例の件数は昨年度を50件上回り、飲酒や喫煙など「不良行為」をつづった内容が146件と最も多く、誹謗中傷や生徒同士のキスの写真などを張り付けた事例も見られた。

 不適切な書き込みには指導改善と文書削除が行われているが、学校、保護者、警察、携 帯電話会社などの関係機関が連携を強めて、適正なネット利用の一層の啓発やフィルタリング機能の活用の徹底が求められる。

 インターネットが絡む青少年の犯罪被害は、規制が強化された「出会い系」よりプロフ などの「非出会い系」サイトで増加傾向がみられる。警察庁の調査によると、昨年上半期に「非出会い系」を通じ、18歳未満が性的犯罪などの被害に遭った事件の9割以上はフィルタリングに未加入だった。背景に親の認識の甘さがあり、親の放任やサイト利用を親に黙っているケースが目立った。親はあらためて子どもたちの日常に目を向けたい。

◎B型肝炎訴訟 和解案を歩み寄る一歩に
 B型肝炎訴訟の和解協議で札幌地裁が示した所見(和解案)は、最大の焦点であるウイ ルスに感染していても症状の出ていない「無症候性キャリアー」について補償を促す内容となった。損害賠償請求権を否定する国の主張に配慮し、和解金を「過去の検査費用」という受け入れやすい名目にしたことで、和解協議の前進を阻んだ大きな壁を乗り越える下地は整ってきたといえる。

 金額面では原告側の主張と大きな隔たりがあるとしても、キャリアーを含め、全員救済 につながる一定の枠組みが示された意味は大きい。B型肝炎訴訟は金沢など全国10地裁で争われ、和解協議が先行する北海道訴訟の行方は解決への試金石となる。今回の和解案を双方が歩み寄る一歩にしたい。

 B型肝炎訴訟で問われているのは、集団予防接種の注射器使い回しに対する国の責任で ある。救済対象は厚生省(当時)が注射針を交換するよう通達を出した1988年1月までに6歳以下だった人たちで、キャリアーについては不法行為から20年たつと損害賠償請求権が消える民法の除斥期間を理由に国は支払いを拒否してきた。

 これに対し、札幌地裁の所見では「過去の定期検査などに要した費用」として1人50 万円の支払いを提案した。原告側が求めた1200万円との開きは大きいが、今後の検査費助成など他の政策的対応も合わせて考えれば、決して折り合えないことはない。

 発症者については国に上積みを求め、死亡や肝がん、重症の肝硬変は3600万円にな った。予防接種の証明についても母子手帳などがなくても本人や関係者の陳述で判断可能とし、幅広い救済をめざす裁判所の姿勢がうかがえる。

 厚生労働省によると、全国の感染者は110万〜140万人、予防接種が原因で救済対 象になる未発症者は最大44万人いる。過去の感染症救済策と比べてもケタ違いの財政支出が見込まれているが、すでに06年の最高裁判決で国の責任が認定されており、財源を理由にいつまでも背を向けているわけにはいかない。解決へ向けて最大限の努力を続けてほしい。