|
きょうのコラム「時鐘」 2011年1月13日
ブリ街道と呼ばれる越中と飛騨を結ぶ古道がある。若狭にはサバ街道がある。日本海の幸を山国や都にまで運んだルートの通称である
昨年の正月、射水市の加茂神社氏子らが京都の下鴨神社で「鰤(ぶり)分け神事」を奉納した。平安の昔から越中のブリを京に届けた神事の復活だった。日本海の魚は古くから各地の人々に期待されていたことが分かる 「氷見ブリ」が産地偽装疑惑で揺れている。真相解明はこれからになるが、東京の築地市場で問題化したのが残念だった。以前からも関係者の間で疑惑がささやかれていたというから、地元の誇りと責任で未然に解決できなかったものか 皮肉にもブリの豊漁が続いている。氷見や能登の各漁港でも昨年の十数倍という記録的な水揚げだ。豊漁による価格下落はやむを得ない。心配なのは、ほんの一部の業者のブランド偽装による全体への風評被害だ 北陸の海の幸を都に吸い取られたと思えば千年前の先人たちがいとおしくなるが、遠くに待ち望む人がいたと思えば誇らしくもある。やせたブリをぬけぬけと市場と言う名の神棚に捧げるとはバチ当たりなことだ。 |