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社説

交通基本法/地域で足を守る仕組みに 

 運賃を払えば、好きなときに好きな場所に行ける。公共交通網の発達した都市では当たり前の生活が困難な地域が増えている。過疎地のみならず都市近郊でも、マイカーの普及で鉄道やバスが廃止される例が相次いでいるからだ。特に高齢者や障害者には深刻な事態といえる。

 国土交通省が通常国会に上程する方針の交通基本法案は、地域の交通手段を守ることを目的としている。

 昨年6月に示した素案は(1)公共交通網の再生や活性化の促進(2)環境に優しい交通手段の普及に向けた税制や規制の活用(3)住民参加による交通計画づくり‐の三つの柱で構成されている。

 これまでの交通政策は鉄道、バス、航空など、主に交通手段別に整備されていた。法案は、そこに利用者の視点や温暖化対策といった観点を採り入れる。地域に根ざした形での政策転換を図る狙いは評価できる。

 29年前に同種の法律を制定したフランスでは自治体が交通計画を策定して運賃、便数、必要な路線などを決め、事業者も選んでいる。その過程で、住民や議会も参画している。

 地域の交通計画は地域で立案してこそ、実情に合い、需要を満たすサービスを提供できる。交通基本法案が想定しているのも、住民や自治体、事業者が一体となった取り組みだ。

 鉄道やバスといった公共交通には、国が関わる数多くの規制や許認可がある。地域が実効性のある交通計画を練るには、規制緩和や、許認可権限の自治体への移譲が欠かせない。

 一方、人口減が続く中で事業者の経営努力だけでは運行継続に限界があり、公的資金によって公共交通の維持や利便性向上に努める地域も増えている。既存の補助金制度を十分に精査し、新たな公的支援のあり方も検討する必要がある。

 基本法案にはこうした方向性も盛り込んで地域が主体的に計画をつくる形にし、それを国が積極的に支援する姿勢を明確に示すべきだろう。

 マイカーがあれば、鉄道やバスが衰退しても生活に不便を感じることはないとの見方もある。しかし、高齢になり、自ら運転することが困難な場合も出てくるだろう。公共交通の維持は避けて通れない課題だ。

 5年後、10年後も地域の足を守っていくにはどんな施策が必要なのか。地域全体の活性化にも関わる問題であることを踏まえ、交通基本法案を充実した内容にしなければならない。

(2011/01/11 10:03)

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