本当は100円の品物を「200円から50%引き!」とうたい、さもお得なように売りつける──こうした「不当な二重価格」は古典的な手法だが、いま「フラッシュマーケティング」という最新のネットサービスで、この古くて新しい問題が浮上してきている。
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通常価格より大幅に割り引いて商品を購入できるクーポンを、期間限定で販売する――米Grouponが構築した「フラッシュマーケティング」と呼ばれるビジネスが昨年から国内でも急速に盛り上がり、提供事業者は100を超えているとも言われる。
各社がユーザー獲得にしのぎを削る中、問題点も見えてきた。この正月、日本のGrouponで“半額”で販売されたおせち料理が、期日までに届かなかったり、届いた商品が事前の説明と違うといったトラブルが起き、ネットで騒ぎになった。“おせち料理を期間限定で半額”という販売形態そのものを疑問視する声もあったほか、「元の価格での販売実績がなければ、不当な二重価格になるのでは」という指摘もあった。
●「不当な」二重価格とは
Groupon系サービスは、「二重価格表示」を前提にしている。二重価格表示とは、実際の販売価格にほかの価格を併記して表示すること。例えば「通常2万1000円のおせちが50%引きの1万500円」「通常5000円のネイルケアコースが70%引きの1500円」といった表示は、二重価格表示に当たる。
二重価格表示は、正当なものであれば消費者の判断材料になったり、業者間の競争を促進するというメリットがある。だが、販売実績のない価格を「通常価格」などと表記し、あたかもお買い得であるように偽装する二重価格表示は、「不当な」ものとして景表法違反となる。
不当な二重価格表示規制の目的は消費者の保護だ。違反すると、状況の改善と再発防止を命じる措置命令が内閣総理大臣名で出され、これに従わない場合は企業の代表者などは2年以下の懲役か300万円以下の罰金刑、法人に対して3億円以下の罰金が科される。
元の価格を正当に表示するために必要な販売実績とはどれぐらいだろうか。公正取引委員会がまとめた価格表示のガイドラインでは、1つの基準として、「セール時からさかのぼって過去8週間のうち、元の価格で販売されていた期間が過半」かつ「最後に元の価格で販売されていた日から2週間以上経っていない場合」は問題ないとしている。
逆に、元の価格での販売実績がほとんどなかったり、最後に元の価格で販売されていた日から2週間以上経っていた場合は、景表法違反に問われる可能性がある。例えば、「通常2万1000円のおせちが50%引きの1万500円」と書かれていても、実際には2万1000円で販売したことがなかったり、実績があっても昨年の価格だったり――といった場合、不当な二重価格表示に当たるおそれがある。
●「通常価格で提供している料理とは思えない」 国民生活センターに相談も
フラッシュマーケティングサイト上での「これは不当な二重価格表示ではないか」という事例は、ネット上でたびたび指摘されている。飲食店のメニューの通常価格が、グルメサイトで公表されている同じメニューよりも高く設定されていたり、クーポンを実際に利用してみたら、通常価格ではありえないような粗末な料理が出てきた――という報告もある。
国民生活センターによると、フラッシュマーケティングサイトで購入したクーポンでレストランを訪れたというユーザーから、「通常価格で提供している料理とは思えず、不満が残った」という相談があるなど、不当な二重価格表示の問題が表面化してきている。
●消費者相も言及 業界は自主的な努力を
不当な二重価格表示が行われないよう、厳しい審査を行っているサイトもある。リクルートが運営する「ポンパレ」では、価格審査専門部署を設け、厳しくチェック。過去一定期間内に、元の価格での販売実績があるかなどをクライアント企業に書類で申告・署名してもらったり、店舗メニューやWebサイトなどをチェックし、価格根拠の確認が取れない場合は掲載を断るなどしているという。
グルーポン・ジャパンは今回の問題を受け、商品の提供会社に対する事前審査の厳格化など対策を発表している。
フラッシュマーケティングサイトの二重価格問題について、景表法を所管する消費者庁は、「個別の事案にはコメントできない」とした上で、「ネット上の不当な表示一般については、把握に務めている」と話す。岡崎トミ子消費者担当相も5日の会見でGrouponおせち問題にコメントしており、近く同庁はおせちを製造した飲食店経営会社の社長から事情を聞くと報道されている。
相次いで参入した事業者が市場を荒らし、結果的に行政の規制を呼び込むことになって新ビジネスの発展の芽を摘まれていく──この10年、ネット業界で繰り返された「また来た道」は避けるべきだ。フラッシュマーケティングサイトは、不況下で急成長してきた事業。「ユーザーの自己責任」や「自由な市場」を言い訳にせず、便利でお得なサービスを維持発展させていくためにも、業界の自重と努力が必要になりそうだ。