2010年11月17日 20時30分 更新:11月18日 1時3分
議員1人当たりの有権者数を比較した「1票の格差」が最大5.00倍となった今年7月の参院選を巡り、東京都内の有権者が「法の下の平等を定めた憲法に反する」として、都選挙管理委員会を相手取り、東京選挙区の選挙無効を求めた訴訟の判決で、東京高裁は17日、請求を棄却する一方、「違憲」との判断を示した。南敏文裁判長は「5倍前後の不平等状態が十数年継続しており、選挙制度を決める国会の裁量権の限界を超えている」と述べた。選挙制度改革に影響を与えそうだ。
参院選を巡っては、最大格差が6.59倍だった92年選挙について大阪高裁が93年に「違憲」、最高裁が96年に「違憲状態」とした例があるが、最高裁は6倍以下を「合憲」と判断してきた。一方で、最高裁は格差4.86倍の07年参院選を合憲とした昨年9月の判決で「選挙区の定数を振り替えるだけでは格差の大幅縮小は困難で、選挙制度の仕組み自体の見直しが必要」と指摘し、国会に抜本的な改革を求めていた。
南裁判長は「投票価値の平等は民主主義の基礎をなすものであり、国会もこれを損なわないよう配慮しなければならない」と指摘。旧参議院議員選挙法制定時の最大格差2.62倍が拡大しないよう「不断の配慮が必要だった」と述べた。
そのうえで、94年に「8増8減」、06年に「4増4減」の定数是正がされたものの、格差が5倍前後に固定されている現状に触れ「国会における格差是正の試みは事実上停滞し、近い将来に具体的に是正される見通しは立っていない」と指摘。「是正措置が講じられなかったことは有権者を居住場所により差別することとなる」としたうえで「不平等状態の積み重ねの結果を考えると5.00倍の格差は到底看過できない」と結論付けた。
また、「隣接県と合わせた選挙区を設定するなどの見直し」も提言した。
ただし「違法でも公の利益に著しい障害が出る場合は請求を棄却できる」とした「事情判決の法理」に沿って、請求自体は棄却した。
選挙無効訴訟は、公職選挙法の規定で高裁が1審となる。5.00倍の格差は神奈川、鳥取両選挙区間で生じた。東京高裁では17日、今夏の参院選を巡って他に3件の同種訴訟(うち1件は2選挙区を判断)で、それぞれ別の裁判長が「合憲」判決を出し、判断が分かれた。東京以外の7高裁と6高裁支部にも同様の訴訟が起こされており、違憲か合憲かの最終判断は最高裁によって示されることになる。【伊藤一郎】