2010年11月17日 11時23分 更新:11月17日 15時53分
議員1人当たりの有権者数を比較した「1票の格差」が最大5.00倍となった今年7月の参院選を巡り、東京都と神奈川県の弁護士10人が「法の下の平等を定めた憲法に違反する」として、両都県の選挙管理委員会を相手取り、2選挙区の選挙無効を求めた訴訟の判決で、東京高裁は17日、請求を棄却した。岡久幸治裁判長は「現時点で違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態であるとまでは言えない」と述べ、合憲判断を示した。
選挙無効訴訟は公職選挙法の規定で高裁が1審となる。5.00倍の格差は、議員1人当たりの当日有権者数が最多だった神奈川選挙区と最少だった鳥取選挙区の間で生じた。
岡久裁判長は「選挙制度見直しには時間がかかり、今回選挙までに是正措置を講じなかったことが国会の裁量権の限界を超えているとは言えない」と判断。一方で前回07年選挙の4.86倍から格差が拡大したことに触れ「大きな不平等が存在する状態であり、国会で緊急の課題として適切な検討を行うことが望まれる」と指摘した。
7月の参院選を巡っては、別の弁護士グループも全国8高裁、6高裁支部に選挙無効訴訟を起こしており、17日午後に東京高裁の別の裁判長が1件目の判決を言い渡す。
参院選を巡っては、最高裁が昨年9月、07年選挙を合憲としつつ「選挙制度の仕組み自体の見直しが必要」と指摘していた。参院は今年10月、格差是正を協議する「選挙制度の改革に関する検討会」の設置を決めている。
原告の中久木邦宏弁護士は判決後の会見で「裁判所が立法や行政に対する司法の役割をどうとらえているのか疑問だ」と話した。三竿径彦弁護士も「1対5以内なら平等という感覚は普通の人には理解されない」と語った。【伊藤一郎】