2010年11月16日 10時52分 更新:11月16日 16時29分
【ソウル西脇真一】韓国統一省は15日、北朝鮮を逃れて韓国入りした脱北者の累計が2万人を超えたと発表した。1948年の韓国と北朝鮮の建国後、韓国入りした脱北者は90年代末から急増。07年に1万人を突破してから、わずか3年で2万人となった。だが、厳しい競争社会である韓国社会で差別や就職の壁にぶつかる人も多く、最近のアンケート調査では約7割が生活状況を「困難」と回答している。
かつては政治的理由での亡命者が多く、韓国では「帰順者」と呼ばれていたが、最近は経済的理由での脱北が多い。統一省によると、韓国入りする脱北者は00年に年間312人だったが、09年は2927人に増えた。脱北を手引きする人が増え、費用を積めば脱出しやすくなったことなどが要因とみられる。
韓国入り後は、施設での一定の教育期間を経て社会生活を始めるが、苦労は絶えない。金栄宇(キム・ヨンウ)国会議員が今年9月に実施したアンケート調査によると、生活状況について約7割が「困難」と回答。1人当たりの1カ月平均収入は、約8割が国の定める単身世帯の最低生計費約50万ウォン(約3万6600円)に満たないと答えた。また、差別や就職難から第三国への移住を希望する人も多かった。
一方、統一省は脱北者の社会定着には就業が最重要だとして、大手製鉄会社と業務協約を結び、関連会社に脱北者を積極雇用してもらうなどの支援策を進めている。脱北者2万人時代について同省は「彼らがすぐ隣に暮らしていることを意味している」と、定着に向けた国民の協力を訴えている。