2010年11月16日 11時14分 更新:11月16日 14時34分
男性2人を殺害したなどとして強盗殺人など9罪に問われた住所不定の無職、池田容之(ひろゆき)被告(32)に対し、横浜地裁は16日、裁判員裁判では初の死刑判決を言い渡した。朝山芳史裁判長は「あまりにも行為の残虐性が非人間的で、最大限酌むべき事情を考慮しても極刑は免れない」と述べた。裁判員が量刑も判断する新制度が始まって約1年半。市民の司法参加は新たな段階に入った。
池田被告は、法定刑が死刑か無期懲役となっている強盗殺人罪も含めて起訴内容を認め、検察側は裁判員裁判2例目の死刑を求刑、弁護側は極刑回避を訴え、量刑が最大の争点だった。池田被告は公判で「どのような判決にも誰一人恨むことなく刑に服したい」と語っていたが、朝山裁判長は死刑言い渡し後「重大な判断になったので控訴を勧めたい」と異例の説諭をした。
判決は、死刑選択の基準「永山基準」に沿って▽殺害方法の残虐性▽動機▽被害感情--などを検討。東京・歌舞伎町のマージャン店経営者(当時28歳)と会社員(同36歳)の命ごいを無視し、電動のこぎりや果物ナイフで首を切った殺害状況に関し「極めて猟奇性が高い。想像しうる殺害方法の中で最も残虐で苦痛は想像に絶する。(家族に電話をという被害者の)最後の望みを聞き入れなかったことは冷酷この上ない」などと非難した。
動機では、店の経営権などを巡り被害者ともめた元経営者で、覚せい剤密輸を指示したとされる近藤剛郎容疑者(26)=強盗殺人容疑などで国際手配=の依頼がきっかけだが「(殺害で)自己の力を誇示し、覚せい剤の利権を手に入れようと考えた。身勝手で悪質」と指摘。被害感情についても「家族の受けた衝撃や悲しみは甚大」と述べ、「残虐性、悪質さ、計画性、結果の重大性などを考えると極刑を選択するほかはない」と結論付けた。
弁護側は殺害を自供し自首したとして刑を軽くするよう求めたが、判決は「過大評価できない」と退けた。
裁判員の負担軽減のため審理を分割する「区分審理」が適用され、前半は主に密輸事件、後半は強盗殺人事件を審理。後半の裁判員(男女各3人)は前半の「有罪」の部分判決も踏まえ、11、12、15日に評議、全9罪を通じ量刑を判断した。【中島和哉、山田麻未】