横浜2人殺害:厳刑言い渡しへ 主文後回しに…裁判員裁判

2010年11月16日 10時38分 更新:11月16日 11時20分

死刑求刑の出された裁判員裁判の傍聴券を求めて集まった大勢の人たち=横浜市中区で2010年11月16日午前9時29分、三浦博之撮影
死刑求刑の出された裁判員裁判の傍聴券を求めて集まった大勢の人たち=横浜市中区で2010年11月16日午前9時29分、三浦博之撮影

 男性2人を殺害したなどとして強盗殺人など9罪に問われ、裁判員裁判2例目の死刑求刑を受けた住所不定の無職、池田容之(ひろゆき)被告(32)の判決公判が16日午前、横浜地裁で始まった。朝山芳史裁判長は通常は冒頭に言い渡す主文を後回しにして判決理由の朗読から始めた。厳刑が予想される。裁判員裁判での死刑判決は例がない。

 検察側は論告で、死刑選択の基準「永山基準」に沿って▽殺害方法の残虐性▽動機▽被害感情--などを詳述。東京・歌舞伎町のマージャン店経営者(当時28歳)と会社員(同36歳)の首を電動のこぎりや果物ナイフで切って殺害したとして「鬼畜としか言えない」と指弾した。

 事件の発端は、店の経営権などを巡り被害者ともめた元経営者で、覚せい剤密輸を指示したとされる近藤剛郎容疑者(26)=強盗殺人容疑などで国際手配=の依頼だったと指摘。「覚せい剤密売の利権欲しさから面識がない2人の命を奪った自己中心的な動機」と非難した。「極刑を望む遺族の思いを最大限考慮すべきだ」と被害感情も強調し「死刑しかあり得ない」と主張していた。

 弁護側は「密輸事件で逮捕後、正直に話し自首した。殺害の最終決定は近藤容疑者」などと主張し「少しでもためらう気持ちがあるなら死刑判決を出してはならない」と極刑回避を求めた。永山基準に関し「裁判員裁判が始まる前の基準」と指摘。裁判員裁判初の死刑求刑だった耳かきエステ店員ら殺人事件で無期懲役とした東京地裁判決(1日)にも触れ「判例の傾向だけではなく、良識・経験に従って公平誠実に考えていただきたい」と訴えた。

 池田被告は最終意見陳述で「どのような判決にも誰一人恨むことなく刑に服したい」と語っていた。

 裁判員の負担軽減のため審理を分割する「区分審理」が適用され、前半は主に密輸事件、後半は強盗殺人事件を審理。後半の裁判員(男女各3人)は前半の「有罪」の部分判決も踏まえ、11、12、15日に評議、全9罪を通じ量刑を判断した。

 地裁は、補充裁判員も法律上の上限に当たる6人を選んだが、結審までに3人を解任した。審理経過を踏まえ3人で対応可能と判断したとみられる。【中島和哉、山田麻未】

 ◇起訴内容

 池田被告は、東京・歌舞伎町のマージャン店の元経営者である近藤剛郎容疑者(26)=強盗殺人容疑などで国際手配=と覚せい剤密輸を通じて知り合い、店の経営権などを巡り近藤容疑者ともめていた経営者(当時28歳)と会社員(同36歳)の監禁などを依頼され▽09年6月、経営者ら2人を千葉県のホテルに監禁=逮捕監禁罪▽経営者の婚約者らに計約1340万円を持参させ奪った上、首を果物ナイフや電動のこぎりで切断し2人を殺害=強盗殺人、殺人罪▽遺体を切断し横浜市の海などに捨てた=死体損壊、死体遺棄罪。

 ◇永山基準

 4人を殺害した永山則夫元死刑囚(97年執行)に対する83年の最高裁判決が示した死刑選択の基準。(1)事件の性質(2)動機(3)殺害手段の執拗(しつよう)性、残虐性(4)結果の重大性(特に被害者の数)(5)被害感情(6)社会的影響(7)被告の年齢(8)前科(9)事件後の情状--を総合考慮し、刑事責任が重大でやむを得ない場合には死刑適用も許されるとしている。

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