2010年11月16日 2時37分 更新:11月16日 3時8分
「対中強硬派」として中国が警戒する前原誠司外相が、持論を封印し日中関係修復に動いている。横浜で日中首脳会談を受けて14日に開かれた日中外相会談は、前原氏ら日本側の働きかけを中国が受け入れて実現した。楊潔※(よう・けつち)中国外相との信頼関係構築を模索し、慎重な発言をするようになった前原氏。中国側も同氏の「軟化」を歓迎しているとみられ、2人のつながりを関係改善に結びつけようとする両国の思惑が重なる。(※は竹かんむりに褫のつくり)
前原氏は以前から中国脅威論を唱え、中国メディアから「タカ派」(中国国営新華社)と批判されてきた。尖閣諸島沖の漁船衝突事件後、前原氏が中国の対抗措置を「ヒステリック」と批判した後はさらに燃え上がり、中国が10月末のハノイでの首脳会談を拒否した理由を「前原外相の言動」とした中国メディアもあった。
政府関係者によると、中国側からは、前原氏の発言が首脳会談開催の障害になっていることが非公式に伝えられていた。13日の首脳会談も中国側は受け入れの表明を最後まで先延ばしした。政府高官によると「前原氏も『自分のせいで2回も首脳会談が流れたと言われてはたまらない』と、最近は発言に注意するようになった」という。
前原氏はハノイで初めて楊氏と会談した際、横浜での外相会談を持ちかけ、「横浜は観光客が多く、ぜひ直接案内したい」とまで提案したという。案内は実現しなかったが、日中首脳会談の後、13日夜に開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の夕食会で、両外相は約2時間、隣同士の席で話した。「私は野球でしたが、スポーツは何をやっていますか」(前原氏)、「卓球です」(楊氏)など和やかな会話を交わす中で、外相会談の開催に合意した。
ただ、外相会談では楊氏が「首脳会談は、双方のハイレベル(の政府高官)が何度かの有益な接触を踏まえて実現した非常に容易ではないものだ」と訴えた。首脳会談までの道のりの険しさを強調することで、前原氏にくぎを刺し、軟化姿勢を定着させたいという思惑も透けて見える。【犬飼直幸、西田進一郎】