2010年11月15日 21時14分 更新:11月15日 21時24分
宮城県石巻市で2月に起きた3人殺傷事件で、殺人や未成年者略取などの罪に問われた同市の元解体作業員の少年(19)は15日、仙台地裁(鈴木信行裁判長)の裁判員裁判初公判で、3人殺傷の起訴内容をおおむね認めた。検察側は冒頭陳述で「凶暴性が際立っており、もはや更生の可能性はない」と重い刑罰を求め、弁護側は「専門家によると矯正の可能性がある」と保護処分とするよう訴えた。
2人を殺害したとされる結果の重大性から少年の裁判員裁判で初の死刑求刑の可能性がある一方、少年の更生も考慮せねばならず、男女各3人の裁判員は難しい判断を迫られる。19日に論告求刑、25日に判決がある。
少年は、元交際相手の女性(18)を連れ去ったとする未成年者略取罪などについて「無理やり連れていってない」と一部否認した。
冒頭陳述で検察側は、女性の姉の南部美沙さん(当時20歳)ら3人殺傷の状況を「無抵抗の南部さんを深々と牛刀で刺した」などと詳述し「残忍で悪質」と非難。動機に関し「女性との仲を引き裂こうとしている姉を殺そうとした。現場に行く前から強固な殺意があった」と指摘した。
一方、弁護側は「女性と話したいと思って自宅を訪れた時に殺意はなかった」として、現場で突発的に殺意が生じたと反論。「深く反省し謝罪の気持ちを持っている」と述べ、保護処分が相当で家裁への移送を主張した。
検察側は裁判員に、被害者の傷口や事件直後の現場などの写真をモニター画面で見せ、凶器とされる牛刀(刃渡り約18センチ)や鉄棒の実物も示した。
起訴状などによると、少年は2月10日、石巻市清水町1の女性宅に牛刀を持って押し入り2階寝室で、南部さんと、女性の友人の大森実可子さん(同18歳)を刺殺。居合わせた南部さんの友人男性(20)も刺して重傷を負わせ、女性を車に乗せ連れ去った。同4~5日には鉄棒で全身を殴るなどして女性に重傷を負わせた、とされる。【須藤唯哉】
「少年と死刑」という問題に直面する可能性がある元解体作業員の公判。初公判に先立ち15日午前にあった選任手続きに出席した裁判員候補者は、硬い表情を崩さず、報道陣の問いかけにも言葉少なだった。
裁判員に選ばれなかった石巻市の男性会社員(47)は「私には荷が重いと思っていたので、ほっとした」と漏らした。被害者方から比較的近所に住んでいるといい、「私にも娘がいる。(選ばれたとしても)とても公平に判断できるとは思えなかった」と話した。仙台市宮城野区の女性会社員(53)は「選ばれたくない」と話し「凶悪事件なのでいろいろ見せられるのでは。冷静ではいられないかもしれない」と話した。仙台地裁によると選任手続きには、42人が出席。裁判員6人(男女3人ずつ)と補充裁判員2人(男性)が決まった。【須藤唯哉、高橋宗男】