尖閣映像流出:海保に安堵感なし…保安官逮捕見送り

2010年11月15日 21時42分 更新:11月16日 1時5分

第5管区海上保安本部が入る神戸第2地方合同庁舎前で中継する報道陣=神戸市中央区で2010年11月15日午後5時48分、小川昌宏撮影
第5管区海上保安本部が入る神戸第2地方合同庁舎前で中継する報道陣=神戸市中央区で2010年11月15日午後5時48分、小川昌宏撮影

 警視庁と検察当局が出した捜査方針は「任意捜査の継続」だった。沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡るビデオ映像流出事件で、国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで事情聴取を受けていた神戸海上保安部(神戸市)の海上保安官(43)は逮捕されないことになった。だが、海上保安庁に安堵(あんど)の雰囲気はない。映像の管理問題や内部調査力の欠如が指摘され、近い将来には保安官の処分をどうするのかという問題が横たわっている。【石原聖、近藤諭、佐藤敬一】

 ◇海上保安庁

 東京・霞が関の海上保安庁。捜査当局の方針が報道を通じて伝わっても、職員は手を止めず黙々と仕事を続けた。

 内部調査で把握できなかったとしていた映像流出の経緯が、警視庁などの捜査で次々と明らかになり、15日の衆院予算委でも「(通信の)履歴を見れば分かることが、なんで分からないのだ」と議員が海保を追及。所管する馬淵澄夫・国土交通相が苦しい答弁を余儀なくされた。取材に対する職員たちの口は重く、疲労感が漂う。

 海保によると、保安官は勤務する巡視艇「うらなみ」から下船し、事情聴取が始まった10日に年次休暇を申し出ており、形の上では現在は休暇中だ。休暇の取得可能期間に捜査が終わらなかった場合、保安官を通常勤務させるかどうか考えなければならない。

 さらに「海保として保安官や上司らの処分をどうするか、頭の痛い問題だ」と政府関係者は打ち明ける。保安官の行為を肯定的に受け止める世論も強く、判断は難しい。関係者は「厳重管理が指示された後に映像を外部に出し、世間を騒がせた。服務規定に反している。しかし、映像は海上保安大学校が出元で、5管や2管で見た人もいる。その管理責任はどうなるのか」と指摘した。

 ◇神戸海保 

 保安官に対する捜査当局の事情聴取は15日朝、神戸第2地方合同庁舎(神戸市中央区)で3日ぶりに再開された。逮捕の可否が判断されるとの見方から、同庁舎にある第5管区海上保安本部や神戸海上保安部には大勢の報道陣が詰め掛けた。

 逮捕見送りの一報が流れた夕方、5管は情報確認に追われた。職員は取材に、10日から同庁舎8階に宿泊している保安官について「(外に)出すのか出さないのかもまったく未定」と繰り返した。

 逮捕見送りのニュースに神戸海保の職員は「逮捕見送りでも、部内にホッとしたという雰囲気はなく、それぞれが自分の仕事をするだけだ」と硬い表情を崩さなかった。

 ◇石垣 

 尖閣諸島の地元・沖縄県石垣市では、保安官が名乗り出た後も同情論が強かっただけに、逮捕見送りを支持する声が目立った。

 漁師、具志堅用治さん(53)は「ホッとした。船を衝突させた中国人船長は釈放されたのに、映像を流した海上保安官を逮捕するのはおかしい。やるべきことをやってくれただけだ。悪いのは公開すべき情報を隠した政府の方だ」と語った。

 砥板芳行・石垣市議(41)も「逮捕見送りは当然。国家公務員である以上、処分はやむを得ないと思うが、寛大な処置を望みたい」と話した。

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