石巻3人殺傷:15日初公判 少年事件初の死刑求刑も

2010年11月14日 9時3分

 宮城県石巻市で2月に起きた3人殺傷事件で、殺人や未成年者略取など5罪に問われた同市の元解体作業員の少年(19)の裁判員裁判が15日、仙台地裁(鈴木信行裁判長)で始まる。少年は3人殺傷の起訴内容は認める見込みで、死者2人という「結果の重大性」から少年の裁判員裁判で初の死刑求刑の可能性も否定できない。弁護側は「反省を深めている」として保護処分にすべきだと訴える方針。主張の隔たりは大きく、裁判員に大きな負担がかかりそうだ。【須藤唯哉】

 少年は、家庭内暴力(ドメスティックバイオレンス)をふるっていた元交際相手の女性に復縁を迫り、反対する女性の姉らを殺傷し女性を連れ去った、とされる。公判前整理手続きで主な争点は(1)刑事処分ではなく、少年法に基づく保護処分が妥当か(2)殺意の程度(3)略取の故意の有無--に絞られている。

 (1)に関し少年法55条は保護処分相当の場合、家裁への移送を定める。弁護側は「被害は極めて重大だが、矯正のために保護処分とすべきだ」と訴える。

 15日は午前中に裁判員選任手続きがあり、午後に初公判が開かれる。公判は5日間連日開廷し、凶器の牛刀を準備したとして殺人ほう助罪などで起訴された無職少年(18)ら5人の証人尋問がある。遺族ら被害者参加人の弁護士も独自の求刑をする見通し。19日の論告求刑後、3日間の評議を経て判決は25日に言い渡される。

 ◇職業裁判官も分かれる判断

 今回の事件を審理する裁判員は、職業裁判官の間でも判断が割れてきた「少年と死刑」という難しい問題に直面する可能性がある。

 少年法は、死刑相当の罪でも18歳未満は無期懲役とするよう規定。18~19歳の「年長少年」への死刑判決は禁じておらず実例がある。だが「更生可能性を重視する少年法の精神に照らし、年長少年も死刑は避けるべきだ」との反対論も強い。今回の元解体作業員も事件時18歳223日で、年長少年に当たる。

 事件時未成年の被告が1審で死刑を求刑された例は、永山基準(83年)後に5件。死刑確定は<2>一家4人殺害事件だけだ。強盗殺人罪などに問われた同19歳の被告に対し、最高裁は01年「4人の生命を奪った結果が極めて重大」と判断した。

 極刑か回避か、裁判所の判断が揺れるケースも。<4>光市母子殺害事件では同18歳30日の被告に対し、最高裁が06年「破棄しなければ著しく正義に反する」と1、2審の無期懲役を破棄。差し戻し控訴審で広島高裁は08年に死刑とした。<1>アベック殺人事件では名古屋高裁が96年、同19歳の被告に対し1審の死刑判決を破棄し無期懲役とした。

 今回の事件は、死刑の境界事例とされる「死者2人」のケースでもあり、裁判員はぎりぎりの判断を迫られそうだ。【比嘉洋】

 ◇石巻3人殺傷事件

 起訴状などによると、元交際相手の女性(18)に復縁を迫っていた少年は(1)2月10日午前6時40分ごろ、宮城県石巻市清水町1の女性宅に牛刀(刃渡り約18センチ)を持って押し入り2階寝室で、女性の姉・南部美沙さん(当時20歳)、女性の友人・大森実可子さん(同18歳)を刺殺=殺人、銃刀法違反罪(2)居合わせた南部さんの友人男性(20)も刺した=殺人未遂罪(3)その後、女性を車に乗せ連れ去った=未成年者略取罪(4)同4~5日には鉄棒で全身を殴るなどして女性に重傷を負わせた=傷害罪

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