2011年度の子ども手当をどうするかで迷走した政府内で、まったく新しい「子ども・子育て支援システム」の導入が検討されている。同手当の制度設計から抜本的に見直し、子供がいる世帯にも負担を求めて安定的な財源を確保。さらに、「子ども家庭省」の創設も視野に入れているという。子育て支援の充実で政権浮揚のきっかけをつかみたい考えだが、実現には曲折もありそうだ。
民主党の目玉施策である子ども手当は昨年末、3歳未満の支給額を来年度から月2万円に引き上げ、3歳〜中学生を従来通り月1万3000円とすることでなんとか決着した。引き上げに必要な財源(約2500億円)については、国が1550億円、地方が950億円を実質的に負担。国の負担分のうち200億円分は厚生労働省の予算を削減し捻出する。
政府は1月下旬からの通常国会に子ども手当法案(1年間の時限立法)を提出するが、野党の反対などで成立が4月以降にずれ込めば、6月からの引き上げ支給に支障が出る恐れもある。
子ども手当が迷走した背景には、財源をめぐる関係省庁の協議が難航したことがある。
子ども手当は、民主党が政権交代を成し遂げた09年衆院選でマニフェスト(政権公約)の筆頭に掲げた目玉施策。「子ども・子育てを社会全体で支援する」ことで少子化に歯止めをかける、いわば「1丁目1番地の重要施策」(民主党議員)といえる。
だが、税収が伸び悩むなか、11年度の国債新規発行額を10年度並みの44兆円台に抑えたい政府・与党にとって、財源確保は容易なものではなかった。
「頼みにしていた埋蔵金は底をつき、事業仕分けの成果も思うほどには上がっていない」(同)ことも事態を難しいものにした。
子ども手当の満額支給(月2万6000円)が実現しないのは、財源のメドがまったく立たないため。霞が関では「11年度の財源はどうにか確保したものの、12年度以降はどうするのか」(関係省庁幹部)と不安視する声は根強い。
こうしたなか、政府内部で練られているのが、新しい「子ども・子育て支援システム」の導入。現在の子ども手当を抜本的に見直し、「子供がいる世帯(の世帯主)からも資金の拠出を求める」(関係者)ことで安定的な財源確保を図る。具体的には次のようなものを想定しているという。
(1)国(一般会計)からの負担金・補助金と、労使や子供がいる世帯からの拠出金で「次世代育成支援特別会計」もしくは「基金・金庫」を創設する。
(2)その資金を子ども・子育て支援新システムの実施主体の市町村(基礎自治体)に設ける「次世代育成支援特別会計」もしくは「基金・金庫」に移すとともに、都道府県や市町村の一般会計からの補助金を加える。
(3)プールされた特別会計もしくは基金・金庫の資金を基に、基礎自治体が地域の実情に応じて、地域の裁量で配分する。
(4)資金の配分については、現金給付のほか、現物給付(地域の子育て支援などの幼保一体給付)も選択でき、両者を組み合わせることも可能−というものだ。
国、自治体、労使、子供を抱える世帯が一体となって子供や子育てを支えるもので、「社会全体で子供・子育てを支援する新たな枠組み」(関係者)ともいえる。
新システムの導入に向けて、政府は13年度からの施行を目指して法案を国会に提出する方針で、「新システムの導入に合わせて『子ども家庭省』の創設も視野に入っている」(関係者)という。
新システムが実現すれば、財源で右往左往することなく充実した子供の支援策が実施できるだけに、画期的なものとなりそうだ。
ただ、子供がいる世帯の世帯主本人などからも新たに資金の拠出を求める内容だけに、猛反発も予想される。政府に対する国民の信頼の度合いが新システム導入の成否を握りそうだ。