菅直人首相は4日の年頭記者会見で、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加判断の時期について「6月ごろが一つのめど」と強調した。これを受け、政府は農業対策の検討を本格化させる。戸別所得補償制度の拡充、農業への新規参入促進などが焦点となる。
判断時期をめぐっては、仙谷由人官房長官が昨年11月に6月前後と表明。その後、大畠章宏経済産業相が国会で「秋ごろ」と述べるなど閣内で食い違っていたが、菅首相が「6月」と発言したことで足並みの乱れは収束する見通しだ。
政府は今月中に菅首相を議長とする「食と農林漁業の再生実現会議」の第2回会合を予定しており、農業対策の議論を急ぐ。生産性向上など農業の体質強化が最大の課題で、戸別所得補償制度の見直しなどによる農地の集約を検討する。
菅首相は「若者が参加できる農業の再生」も訴えた。企業の農業参入を活発化させることで、若者の雇用を増やす方策も話し合う。
政府に先駆け、民主党のプロジェクトチームは、3月中に農業対策を取りまとめる方針。政府は、6月に農業対策の基本方針を決定し、10月には中長期的な行動計画も策定する予定だ。
ただ、地方からは、TPPに参加して農産物の関税を撤廃すると、安い外国産が大量に流入し「農業に壊滅的な打撃を与える」として、政府に慎重な対応を求める要望が相次いでいる。4月の統一地方選の争点にもなりそうで、選挙の結果次第では民主党内でもTPP反対の声が高まる可能性がある。
米国やチリなどTPP関係国は関税撤廃などの交渉を着々と進めるとみられる。米国は11月にハワイで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での妥結を目指す。日本は情報収集などのための協議を関係国と開始しているが、政府内には「乗り遅れ」を懸念する声がある。
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