[「普天間」問題]再交渉こそが打開策だ

2011年1月4日 09時24分この記事をつぶやくこのエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 政権交代を実現した2009年8月の衆院選、その後の各種選挙で示された県民の意思は決定的である。この流れは不可逆であり、もう後戻りすることはないであろう。

 基地と引き換えの振興策という従来の構図が破綻したのが、地元名護市ではっきり示され、県経済界にも意識の地殻変動が起きている。

 それなのに、民主党政権のアメとムチ政策は自民党政権時代と何ら変わらない。名護市に対し前市長時代からの継続事業として内示していた再編交付金を凍結したことなどに端的に表れている。

 米軍普天間飛行場の移設先を名護市辺野古とした昨年5月の日米合意。「最低でも県外」と公約した鳩山由紀夫前首相は辺野古に回帰し、辞任した。後任の菅直人首相は日米合意を引き継いでいる。

 昨年末、仲井真弘多知事と会談した菅首相は低姿勢に終始したように見せながら、「沖縄にとって辺野古はベストではないが、実現可能性を考えるとベターな選択でないか」という方針を伝えた。理不尽と言うしかない。

 仲井真知事が「勘違いをしている。県内はすべてバッドだ」と切り返したのは当然である。押し付けは沖縄の民意無視であり、民主主義の否定につながるからである。

 県内ではもはや、どんな選挙であれ、「県内移設」を掲げて当選するのは不可能といっていい。仲井真知事が知事選で「県外移設」を公約としたのも民意を読んだからにほかならない。菅首相もそこを見誤ってはならない。

 在沖米海兵隊は、西太平洋の同盟諸国と演習したり、アフガンやイラクに派遣されたりして沖縄を留守にすることが多い。日本防衛のためでもなく沖縄にいる必然性もない。「地理的優位性」「海兵隊の抑止力」など意図的につくられた「神話」にだまされる人はもういないはずである。

 米国の軍事予算は逼迫(ひっぱく)しており、ゲーツ国防長官でさえ、海兵隊の見直しを指示している。そもそも紛争地に海兵隊が最初に乗り込む戦闘形態はもはや考えられない。

 オバマ大統領は7月から、アフガンに駐留している米軍撤退を始める。在沖米海兵隊8000人と家族9000人を含むグアム移転協定で米上下両院は11会計年度の移転費を7割カットした。14年移転を事実上断念するなど流動的要素が出ている。米軍の海外展開の在り方も変わる可能性が高く、沖縄の海兵隊を見直すチャンスである。

 戦後66年、冷戦終結からも20年以上が過ぎてなお米軍が駐留し、時に占領軍のように振る舞う異常さ。今春訪米する菅首相は「対等な日米関係」に向かい、オバマ大統領と実質的な戦略対話を始めるべきだ。普天間見直し交渉はその突破口になるはずである。

 米軍基地を点検し整理縮小につなげていく。日本が周辺諸国と自立的な外交・安全保障関係を築くことにつながると考えるからである。

 安保が国民的論議とならないのは「構造的沖縄差別」を改めないからだ。普天間問題は日本の国としてのありようを問うているのである。

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