社説

菅首相年頭会見/いばらの道を開く初志貫徹

 年初に誓いを立てる。課題山積のまま越年したのであれば、覚悟はひとしおであろう。
 菅直人首相のきのうの年頭記者会見を聞いていて、乾(けん)坤(こん)一(いっ)擲(てき)という言葉を思い出した。運命を懸けて大勝負する年にしたい。意気込みはとりあえず伝わってきた。
 恐らく、いばらの道になる。理念を果敢に実行に移すこと、小手先ではなく正面突破を図ることでしか事態は開けまい。首相には不退転の決意で難局に立ち向かってほしい。
 会見で首相は(1)平成の開国元年とする(2)不幸の最小化(3)不条理を正す―ことを約束した。
 縮み志向にとらわれているのは若者だけではない。首相の念頭に環太平洋連携協定(TPP)への参加問題があることは明らかだが、「開国」の二文字が意味するところは何も貿易に限らない。
 人も企業も地域社会も他者に開いていくことによって活力が生まれ、自らの存在を高めることができる。政治が果たすべき役割とは、国民一人一人がその可能性を十分に発揮できる環境づくりにほかならない。
 不幸の最小化は菅首相の持論で、貧困と失業は不幸の最たるものだ。新卒者が職にありつけない事態をわれわれは深刻に受け止めなくてはならない。
 社会保障への不安が、国民が一歩踏み出す際の足かせになっている。消費税を含めた税制の在り方を早急に議論しなければならない。首相が言うように「誰の目にも明らか」なことを政治が放置し続ければ、不幸は最大化する。
 人の死は避け難い不条理だ。それは宿命と言い換えてもいい。だが「政治とカネ」の問題は、対処可能なのに繰り返されてきた宿痾(しゅくあ)ではないか。
 民主党の小沢一郎元代表について、首相はあらためて国会でしっかり説明するよう求めるとともに、強制起訴されたら議員辞職を含めて進退を明らかにするよう促した。
 この1年、この問題で国会は空転し、民主党内の権力闘争も重なって決着が先延ばしされてきた。政策以前の「国民がおかしいと思っている」(菅首相)問題にけじめをつけることに心血を注いでほしい。それは政権浮揚策などではなく、政治に信を取り戻す第一歩だからだ。
 とはいえ、今月末に召集される通常国会は波乱含みだ。参院で問責決議を受けた仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の交代を含めた内閣改造、党役員人事が取り沙汰されている。
 衆参の「ねじれ」も相変わらずで、解散総選挙に打って出たところで展望が開けるわけではない。仮に自民党が政権に復帰したとしても、参院で多数を占める保証はない。「数の呪縛」を乗り越える知恵が与野党問わずに求められているのだ。
 菅首相は政治家としての出自が、ロッキード事件を機に噴出した政治不信を正そうとの思いにあったと述べた。
 政治家の年頭の誓いに意味があるとすれば、原点を再確認することだ。初志ゆめゆめ忘れることなく、と注文しておく。

2011年01月05日水曜日

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