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経済3団体:新興国成長に期待--企業トップ新年会

 経済3団体の新年祝賀パーティーが5日、東京都内で開かれ、菅直人首相のほか、国内主要企業のトップら約2200人が出席した。円高やデフレなど厳しい経済状況が続いているものの、トップからは、中国など新興国の成長を取り込むことで景気回復につなげたいと期待する声が聞かれた。会場で、今年の景気見通しと政府に求める政策、今年の注目点について、トップの声を聞いた。【まとめ・井出晋平】

 ◆景気見通し

 ◇「後半から回復基調」多く

 景気見通しについては、「薄曇り後、晴れ。新興国に引っ張られる形である程度回復する」(小林健・三菱商事社長)、「新興国の経済成長に伴い、緩やかに回復するだろう」(北山禎介・三井住友フィナンシャルグループ社長)と、中国など新興国の経済に支えられ緩やかに回復に向かうとの意見が多かった。

 回復の時期については、「前半は円高、デフレ、景気対策の終了などで厳しいが、後半は明るさが見えてくる」(三浦惺・NTT社長)、「踊り場は今年の上半期まで。下半期から回復基調に向かう」(渡辺光一郎・第一生命保険社長)、「今は曇りだが、年後半に向けて晴れ間が見えてくる」(豊田章男・トヨタ自動車社長)と、今年後半からの回復を予想する見方が目立った。ただ、円高が続けば輸出にマイナスに働くことや、3月末に家電エコポイント制度が終了することによる消費落ち込みなど、懸念材料は多い。このため、「経済全体を見た場合は、ほとんど横ばい」(鈴木敏文・セブン&アイ・ホールディングス会長)と、慎重な意見も聞かれた。

 ◆求める政策

 ◇財政、社会保障改革の方向示せ

 菅政権に求める経済政策としては、「リーダーシップを持ってTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加する意思を示してもらいたい。将来の日本経済の行く末を決める象徴的な施策になる」(岩沙弘道・三井不動産社長)と、TPPへの交渉参加を求める声が相次いだ。ただ、TPPについては農業団体を中心に反対の声も根強いため、「専業農家を育てるためバックアップすべきだ。生産性向上のため、減税や補助金など具体的な政策が必要」(新浪剛史・ローソン社長)と、農業の強化策にセットで取り組むよう求める意見も聞かれた。

 また、財政と社会保障の問題については、「消費税の引き上げを含め、財政再建に取り組んでもらいたい。不安におののきながらでは日本が元気にならない」(田中孝司・KDDI社長)、「財政と社会保障の一体改革の方向性を示すべきだ。消費税を上げても社会保障に安心感が出ればバランスが取れる」(畔柳信雄・三菱東京UFJ銀行会長)など、抜本改革を求める声が強い。

 ◆注目点

 ◇米国景気、為替動向

 今年の経済動向で注目する点を聞いたところ、「米国の景気動向が大きな意味を持っている。それが、為替動向にも連動してくる」(鈴木茂晴・大和証券グループ本社社長)、「けん引力のある米国経済が復調すると、日本も回復に向かう」(志賀俊之・日産自動車最高執行責任者)と、米国の景気動向と答えるトップが多かった。日本経済の本格的な回復には、米国の景気回復が不可欠と考えるトップが多いことが分かる。

 ただ一方で、米国の金融緩和により大量の資金が新興国に流れ込んだ影響で、「新興国のバブルが崩壊しかねない」(隅修三・東京海上ホールディングス社長)と、影響を懸念する声も。また、「裾野が広い自動車などの産業が生き生きするには輸出拡大が欠かせない。円安を期待している」(大八木成男・帝人社長)と、為替動向に注目するトップも多い。

毎日新聞 2011年1月6日 東京朝刊

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