社説
2011年1月6日

綱領制定に着手/民主は目指す国家像の明示を

 民主党は今月、党の綱領制定に着手する。制定作業が新たな党内対立の火種になるとの消極論もあるが、政権与党として目指す「国のかたち」を明示すべきだ。

迷走続いた政権運営

 政党の綱領は結党の理念や基本政策などを定めた文書で「政党の憲法」と言われる。自民や公明など各党が持っている中、民主党には綱領がない。他党の批判を受け、菅直人首相は綱領制定を指示し、13日の党大会を経て年内には文案をまとめたい考えだ。ただ民主党には保守系から旧社会党系までさまざまな議員がいるため、憲法や安全保障政策では考えの違いが大きい。このため、綱領制定に消極的な意見も強い。

 しかし民主党は一昨年の衆院選で大衆迎合的なマニフェスト(政権公約)を掲げ、政権交代後には内外の政策で迷走を続けた。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題では「最低でも県外」と訴えていたのが、昨年5月に公約を破って「県内移設」の日米合意に方向転換した。これでは沖縄県民の信頼を得られないのは当然だ。

 民主党政権が揺らぐのは、どのような国家を目指し、そのためにどのような政策を実現するかを綱領で示していないことが大きいのではないか。綱領がなければ、将来も場当たり的な政権運営が続くに違いない。

 先の臨時国会は衆参ねじれの下、民主党政権が指導力を発揮できないまま終わったと言える。政権運営にもたがの緩みが目立ち、仙谷由人官房長官が自衛隊を「暴力装置」と呼ぶなど閣僚が失言を連発して国民の信頼を失った。

 また尖閣諸島沖の中国漁船領海侵犯事件ではその場しのぎの対応に終始し、結果的に漁船衝突のビデオ流出を引き起こした。メドベージェフ露大統領の北方領土訪問にも有効な対抗措置を取れず、北朝鮮の韓国・延坪島砲撃では危機管理能力の欠如を露呈した。

 民主党は日本をどう導きたいのか、綱領を制定して原点に立ち返る必要があろう。小沢一郎元代表の国会招致問題で亀裂が生じてはいるが、菅首相は制定に向けて党内をまとめるべきだ。そのためにも党大会後の内閣改造・党役員人事で挙党一致を図らなければならない。

 綱領では日本を守り、世界平和に貢献できるよう憲法改正への決意を強く打ち出すべきだ。これと併せ、党代表選の在り方も変える必要があろう。昨年の代表選は事実上、首相を選ぶ選挙だった。ところが民主党の代表選は、国政選挙権のない在日外国人でも党費を払えば投票できる。これは明らかにおかしい。代表選の投票権は日本国民に限定すべきだ。

憲法改正の機運高めよ

 自民党の谷垣禎一総裁は、仕事始めのあいさつで「政権を追い込んで、政権奪還への道筋を切り開かなければならない」と述べた。野党第1党として政権奪還が目標となるのは当然としても、いたずらに党利党略に陥ることがあってはなるまい。国益を第一に、時には与党と一致することも求められよう。目前の課題に対処しながら、憲法改正の機運も高めるべきだ。


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