西日本新聞

正念場の菅首相 背水の陣で臨むしかない

2011年1月7日 10:56 カテゴリー:コラム > 社説

 首相として何をしたいのか、よく分からない。いったん目標を掲げても旗色が悪くなると腰砕けになってしまう-。

 そんな疑念や不信を、今年こそ払拭(ふっしょく)したいという決意の表れなのだろう。

 菅直人首相が新年早々、政権運営をめぐって積極的な発言を繰り広げている。

 持続可能な社会保障制度の確立へ向けて消費税を含む税制抜本改革に取り組むため、野党にも参加を呼び掛けて超党派で議論を始める。

 貿易立国として「国を開く」観点から、農業対策の議論も踏まえ、環太平洋連携協定(TPP)の参加問題で最終的な判断を下す。

 いずれも高度な政治判断を伴う重大なテーマである。首相は年頭会見で、どちらの問題も6月までにその方向性や結論を出したいと期限を区切った。

 消費税を含む税制と社会保障の一体改革について首相は、民放のテレビ番組で「政治的な生命を懸ける覚悟で臨みたい」とまで踏み込んだ。

 「政治生命」という表現に首相は不退転の覚悟を込めたつもりだろう。その意気込みは買いたいが、問題はあくまで実行力である。優柔不断だった過去の二の舞いだけは避けなければならない。

 首相は昨夏の参院選で「消費税10%」を掲げたが、大敗を喫した。民主党内から政治責任を問われ「唐突な提案だった」と反省し、事実上、その議論を自ら封印した経緯がある。

 TPPの参加問題も同様だ。首相が交渉参加に前向きな姿勢を示したかと思えば、これまた民主党内から慎重論や反対論が噴き出し、結論を先送りしていた。

 その意味では菅首相と民主党政権にとって、もはや失敗は許されない「再挑戦」と言うべきだろう。

 もう一つの重いテーマは、小沢一郎民主党元代表をめぐる「政治とカネ」の問題である。

 首相は、通常国会の召集前に衆院政治倫理審査会で小沢氏が自ら説明を果たすよう求めただけでなく、強制起訴された場合は「政治家として出処進退を明らかにすべきだ」と明言した。離党や議員辞職を含む政治的なけじめを小沢氏に強く迫った発言である。

 この問題では譲歩も妥協もしないという首相の意思表明だと受け止めたい。

 さまざまな決意を披歴する首相だが、肝心の「ねじれ国会」を乗り切る現実的な方策は見いだしかねている。

 参院で問責決議を受けた仙谷由人官房長官らの交代を含めて首相は内閣改造を検討しているが、切羽詰まった人事による政権浮揚の効果は未知数である。

 「予算の早期成立へ最も強力な態勢をつくりたい」と首相は力説するが、改造人事や小沢氏の問題も絡んで通常国会はその召集日すら確定していない。

 不退転の決意を実行へ移す「背水の陣」は本当に敷けるのか。首相はまさに正念場を迎えている。


=2011/01/07付 西日本新聞朝刊=

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