日本政治の先行きを暗示するようなシーンに出くわした。
菅直人首相は5日、東京都内3カ所で開かれた賀詞交換会に出席した。下町のホテルで開かれた連合主催の会合は2番目。与野党の首脳が顔をそろえる中、遅れて到着した菅首相はまず公明党・山口那津男代表の脇に寄り、話を始めた。近くの社民党・福島瑞穂党首には目もくれず、あいさつを終えて初めていることに気付き、ようやく言葉を交わしたほどだった。
支持率低下に悩む菅政権は、まさに内憂外患。内憂の一番は「政治とカネ」問題を抱える小沢一郎元代表の処遇問題だ。一方、最大の外患は「ねじれ国会」の下、法案成立に道筋が付けられないでいること。打開策として、これまでも自民党との大連立から、たちあがれ日本、社民党などとの連立話が浮かんでは消えた。
参院で過半数を制するには「大連立」だけでなく、公明党との「中連立」でも可能だ。5日、会合を終えた後のぶら下がり会見で、菅首相は公明党が提唱する福祉社会ビジョンを前向きに検討する意向を改めて表明した。
この日、公明党に秋波を送り続けた首相だが、3度目となった時事通信社主催の会合には各党党首がそろい、それぞれの立ち位置が一段と明確になった。自民党・谷垣禎一総裁は「全部をリセットしないと新しい出発点はない」と注文を付け、みんなの党の渡辺喜美代表に至っては「(我々は)民主党最大の天敵と言われている」と反民主を前面に掲げた。福島党首も「ぜひ、社民党が組めるような民主党政権になっていただきたい」と、要求した。
これに対し、公明党の山口代表は「与野党通じて、大きな直面する課題にそう認識が異なることはない」と述べ、首相が野党に再三呼び掛けている与野党協議の可能性にも言及。意味深長だ。
事件取材には現場は付き物だが、政治取材で現場に遭遇することは極めて難しい。公明党の動向を即断することはできないが、菅首相からの期待度が高いことは明白だ。(専門編集委員、65歳)
毎日新聞 2011年1月8日 東京朝刊