平成23年1月9日
内閣改造、弱気のぞく仙谷氏−官房長官交代論に理解も
内閣改造・民主党役員人事で仙谷由人官房長官の処遇が最大の焦点となっている。これまで仙谷氏は参院で問責決議を受けても強気の姿勢を崩さず、辞任を否定し続けてきた。しかし、任命権者の菅直人首相が交代させる方向で検討に入り、仙谷氏からも弱気な言動が漏れている。
「僕は(問責を理由とする審議拒否は)憲法違反だと思うが、いろいろ考えるところはある。現実の問題はありますな」。6日に藤井裕久元蔵相の事務所を訪ねた仙谷氏は、こう述べた。「問責決議に法的拘束力はない」と主張してきた仙谷氏は野党の辞任要求を拒否してきたが、藤井氏への発言は自身の交代論に一定の理解を示したものと受け止められた。
仙谷氏の問責が可決されたのは昨年11月下旬。通常国会冒頭から審議拒否に入る構えを見せて辞任を迫る野党に対し、仙谷氏は記者会見などで「衆院では不信任案が否決され、信任された」と反論。周辺には「審議拒否は長続きしない」と自信を示してきた。
一方、仙谷氏は「理論武装」にも努めた。衆院の優越を規定する憲法と問責決議の関係について、休日も利用しながら有識者や弁護士仲間と意見を交換。官房長官続投の「正面突破」を見据え、説得力のある説明方法を練っていただけに、「自発的に辞めることはない」と仙谷氏の周辺は声をそろえていた。
しかし、野党の対決姿勢は強く、民主党では小沢一郎元代表を支持する議員を中心に仙谷氏の交代論が拡大。首相支持派からも「交代やむなし」の声が伝わり、強気一辺倒の仙谷氏の発言も後退した。7日の記者会見では内閣改造に伴う交代論に対し「直線的に突進すればいいという話ではない」と力なく語り、心境の変化をうかがわせた。
昨年9月の内閣改造・党役員人事で、仙谷氏は首相の傍らで調整役を担った。当時の裏舞台を知る関係者は「今回は仙谷氏が動いている様子がない」と明かす。仙谷氏が交代した場合は「党代表代行」などのポストが取り沙汰されているが、実際、首相から人事の相談は受けていないもよう。仙谷氏は周辺に「菅さんは改造の話をする人じゃない」と強調しているという。
仙谷官房長官の主な言動
【2009年】
9月16日 鳩山内閣発足。行政刷新担当相に就任
【2010年】
1月 7日 国家戦略担当相を兼務
6月 8日 菅内閣発足。官房長官に就任
9月 7日 尖閣諸島沖で中国漁船衝突事件。「日本の国内法に基づいて厳正に対処し、粛々と
捜査を行っていく」と説明
17日 菅改造内閣発足。官房長官に留任
25日 那覇地検が中国人船長を処分保留で釈放。「地検の判断」と政府の関与を否定
10月12日 中国漁船衝突事件の政府対応について国会で「『柳腰』というしたたかな腰の入れ
方もある」と答弁
14日 報道を引用した自民党議員の質問を「最も拙劣な質問方法だ」と批判
15日 政府の公務員制度改革への取り組みを批判した官僚の政府参考人出席に「こういう
やり方は彼の将来を傷つける」と発言
11月 9日 答弁資料のカメラ撮影を「盗撮された」と批判
18日 自衛隊について国会で「暴力装置でもある」と答弁
22日 柳田稔法相が「失言」で辞任。法相を兼務
26日 自身の問責決議が参院本会議で可決
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