社説
税と社会保障 暮らしの安心を前提に(1月10日)
急速な少子高齢化で、社会保障と税制の抜本改革が待ったなしだ。
菅直人首相は年頭の記者会見で、社会保障の財源確保のため「消費税を含む税制改革を議論しなければならない」と述べ超党派協議を呼びかけた。6月までに方向性を示す方針だ。
年金、医療、介護などの社会保障給付費は年1兆円ペースで増え続けている。2010年度は財源が約10兆円不足し国債や埋蔵金で穴埋めしている。このままでは財政面で立ち行かなくなるのは明らかだ。
首相は、国民に説明を尽くし合意形成に向けて指導力を発揮しなければならない。
民主党の「税と社会保障の抜本改革調査会」は昨年12月、社会保障を支える有力財源として「消費税が非常に重要」とする報告をまとめた。
さらに政府の有識者検討会も消費税率の引き上げを提言し、与野党議員や有識者による「社会保障諮問会議」(仮称)の新設も求めた。
いずれも消費税アップを強調しているが増税論の前に考えるべきことがある。社会保障の将来像である。
10年度の給付費は一般、特別会計などを合わせて105兆5千億円に上る。11年度からは戦後間もなく生まれた団塊世代の年金受給が増え、25年度には給付費の総額が141兆円と3割以上も増える見通しだ。
社会保障の柱である年金、医療、介護の各分野で、負担と給付のバランスをどう取るのか。まず大きなビジョンを描かなければ持続可能な制度構築はおぼつかない。
大事なのは安定した財源を確保し暮らしの安心につなげることだ。
そのためには消費税を含む税制の抜本改革と社会保障の内容を一体で議論する必要がある。
社会保障の財源は、税のほか個人や企業が負担する年金保険料や介護保険料などによって賄われている。
政府の社会保障国民会議は08年、年金、医療・介護、少子化対策を充実させた場合の追加財源を試算した。保険料方式で年金制度を維持するには15年度に消費税換算で3・3〜3・5%分が必要になるという。
どの程度の負担でどのようなサービスが受けられるのか。政府は財源の裏打ちのある具体的な選択肢を国民の前に示すべきだろう。
忘れてならないのは消費税の目的である。国の予算の基本ルールを定めた「予算総則」は年金など福祉分野に使い道を限定している。
財政の帳尻合わせだけが狙いの負担増では納得は得られまい。
少子化が続けば社会保障を支える生産年齢人口が先細りになる。若者の就労や育児面での支援など新たな視点からの取り組みも欠かせない。
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