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政治を動かす2011:キーマンに聞く/5止 元首相・森喜朗氏(73)

=梅田麻衣子撮影
=梅田麻衣子撮影

 ◇大連立は無理 オールジャパンの議論で国難打破

 07年、当時与党だった自民党が参院選で大敗後、「ねじれ国会」を乗り切ろうと、福田康夫首相と民主党の小沢一郎代表との大連立工作を仲介した。このときは小沢氏が民主党内をまとめられず、大連立は頓挫。昨年12月、首相官邸に菅直人首相を訪ねたときには「再び大連立の仲介か」との臆測を呼んだ。

 「(大連立は)できない。福田・小沢の間に入ったとき、小沢君に『どうする、次の選挙』と聞いたら『大連立が終わったら、また自由にやろう』と。小沢君はそこで選挙制度(を見直す)とは言えなかった。今の小選挙区制度にこだわったのは小沢君だから」

 2大政党の候補者が1議席を争う衆院の小選挙区制度が続く限り、大連立は困難だと認識した。そうなると、自民党が政権を奪還するには次期衆院選で民主党に勝つしかないが、「衆院解散・総選挙に追い込む」と声高に対決を叫ぶ谷垣禎一総裁ら党執行部の姿勢には苦言を呈する。

 「『どうするんですか、この国は?』という思いの人はいっぱいいる。一度、民主党にやらせてみたらと思ったけど、何だったの、と。それで解散に追い込んで、ムードで勝ってもチルドレン(当選1回議員)が入れ替わるだけ。そんなことを繰り返しても仕方ない。日本の政治が発展しなかった責任は自民党にもある」

 05年衆院選の自民党圧勝で「小泉チルドレン」と呼ばれる新人議員が大量に当選し、09年衆院選の民主党圧勝で「小沢チルドレン」が生まれた。その間、森氏らベテランは「古い自民党」として若手から煙たがられ、谷垣氏は野党に転落した自民党の三役を石原伸晃幹事長ら50代で固めた。

 「テレビに映る回数が多い方がいいとか、若い方がいいとか、男より女がいいとか、まさに映像の時代。日本人が劣化していると言うけど、一番劣化しているのは国会議員ですよ。礼儀がないでしょう」

 昨秋の臨時国会では首相を「すっから菅」などと言う若手議員の姿が目立った。

 「一国の総理大臣に吐く言葉じゃない。それを見て、国民は自民党がいいとは思わない。こんな時期だから、政権と手を結ぶのではなく、政権に協力して国民を救うんじゃないの? 外交、安全保障、新エネルギー、税や福祉。そういうものはオールジャパンで議論して国民を安心させるのが政治の責任だ。それで民主党の点数になるからといって国民が自民党を笑うとは思わない。自民党を評価すると思うよ」

 政権との政策協議を唱える一方、民主党も厳しく批判する。

 「菅さんがやろうとしているのは、働いても働かなくても同じものがもらえる政策。農業(の戸別所得補償)も子ども手当も高速道路(無料化)もそうでしょう。社会主義の思想だ。戦後の日本の政治は自民党が(社会主義に)勝ったんだよ。だからといって、今度は民主党をつぶして天下を取るという姿勢ではダメ。お互い、いい機会だから議会制民主主義を定着させましょうと言う方がいい」【聞き手・高山祐】=おわり

毎日新聞 2011年1月11日 東京朝刊

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