従来より、特開2001−347786号公報に記載の万年筆のように、軸筒内にインキタンクを形成したインキタンクの容積が大きい万年筆では、インキタンクとペン芯とを遮断する構造が重要視されている。理由として、インキタンクの容積が大きいと内在する空気の量が多くなり、気温が高くなったり気圧が低下することによって変化するインキタンク内の空気の膨張量も大きくなることから、ペン芯にたまったインキをインキタンク内の膨張した空気が押し出してインキ漏れを生じさせることがあるためである。
したがって特開2001−347786号公報に記載の万年筆では、未使用時においてはインキタンク内の中芯を前進させ、中芯の先端に設けた前方当接部を軸筒前方に配したペン芯やペン芯装着孔に当接させることにより、外部と連通しているペン芯の空気溝やインキ溝とインキタンクを遮断して、インキ漏れの防止を行っている。また筆記時においては中芯を若干後退させ、前方当接部をペン芯やペン芯装着孔から離間させた状態にして、ペン芯へのインキ流入を可能としている。尚、特開2001−347786号公報に記載があるような吸入式の万年筆では、筆記時にインキを吸引させるための弁体(本発明における移動弁)を小径孔(本発明における小径空間部)にまで後退させないようにする必要がある。理由としては、弁体を小径孔まで後退させてしまった場合、筆記時に誤って中芯を押してしまうことで、ペン芯に連設したインキタンクの大径空間部を加圧してしまい、逃げ場のなくなったインキがペン芯から飛び出さないようにするためである。したがって、筆記可能状態においては前方当接部をペン芯やペン芯装着孔からわずかに離間させた状態でペン芯へのインキの流入を可能としてあり、結果的に筆記時において前方当接部や移動弁がペン芯に近い状態となることから、インキの吐出量に応じてペン芯から生じる気泡が前方当接部や移動弁に付着しやすく、インキタンクの後方へ行くことなく徐々に気泡がペン芯の近くで大きくなって、インキの流出を阻害し、筆記を妨げる場合があった。
「特開2001−347786号公報」
軸筒2のインキタンク3a内に配した中芯9の前方にある前方当接部14aを前進させ、前方当接部14aをペン芯5及び/又はペン芯装着孔4aに当接させてインキタンク3aを密閉する構造の万年筆1に関し、インキタンク3a内に発生した気泡30aが前方当接部14aや移動弁15に付着しにくい構造の万年筆を提供する。中芯9の前方部に前方当接部14aを自重で該中芯9に対して可倒させる連結部13を設けることにより、前記前方接部14aをペン芯5及び/又はペン芯装着孔4aから離間させた際に、前方当接部14aが自重によりインキタンク3aの下方へ傾斜する。
本発明はこうした問題を鑑みて、インキタンク内に発生した気泡が前方当接部や移動弁に付着しにくい構造の万年筆を提供することを目的とする。
インキタンク内に発生した気泡が、ペン芯の近くにある前方当接部や移動弁に対して付着しにくい構造の万年筆を実現した