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福岡・太宰府の車衝突転落:乳児と高3ら7人死亡 2台並走中に衝突か

 福岡県太宰府市の県道で、ワゴン車が道路脇の篠振池(しのふりいけ)(水深約2・5メートル)に転落した事故で、県警筑紫野署は25日、ワゴン車と乗用車が衝突し、ワゴン車に乗っていた9人のうち、男性2人と女性3人、生後6カ月の男児の計6人が死亡したと確認した。男性2人と女性1人は軽傷で自力で車から脱出した。乗用車を運転していたとみられる男性も池から見つかったが、死亡が確認された。【島田信幸、関谷俊介、扇沢秀明】

 現場は片側2車線の緩い左カーブ。ワゴン車の右後部、乗用車の左前部に車同士で衝突したような損傷があり、県警は2台が同じ方向に並走中に衝突した可能性が高いとみて詳しい原因を調べている。

 死亡したのは、ワゴン車の▽同県八女市黒木町木屋、県立八女農業高校3年、井手綾美さん(17)▽同県久留米市荒木町藤田、同、石原瞳さん(18)▽同県筑後市山ノ井、同、末吉泰子さん(18)▽八女市黒木町大淵、農業手伝い、佐藤慎一郎さん(18)▽同町湯辺田、アルバイト、山本翔さん(18)▽山本さんの息子悠斗(ゆうと)ちゃんの計6人と、乗用車を運転していたとみられる太宰府市青葉台4、アルバイト、秦(しん)智之さん(26)。

 脱出した3人はいずれも八女市黒木町在住の▽山本さんの妻佑紀(ゆき)さん(18)▽パート従業員、木村光志(みつゆき)さん(18)▽私立高校生、堀川達也さん(18)。

 県警や筑紫野太宰府消防本部などがクレーン車や救急車を出動させ、25日午前4時過ぎまでに救助したが、計7人の死亡が確認された。県警によると佐藤さんと山本翔さんの死因は水死、他の人も水死の可能性が高いという。悠斗ちゃんは病院搬送時は心肺停止状態で、救命措置を受けて蘇生したが、事故から約19時間半後の25日午後7時10分ごろ死亡した。ワゴン車は木村さんの父親名義だった。

 秦さんの乗用車は近くのガソリンスタンドに止まっていたため、県警は事故後、秦さんが池に落ちたワゴン車の人たちを助けようと、車をガソリンスタンドに置いて池に入ったとみている。池の水温は25日午前2時50分ごろには約5度だったという。

 井手さん、石原さん、末吉さんは八女農高生活科学科の同級生。悠斗ちゃんを除くワゴン車の8人は友人関係で、福岡市内にクリスマスのイルミネーションを見に行く途中だったという。

 県警によると、ワゴン車には定員7人を上回る9人が乗り、チャイルドシートは装着されていなかった。同署は道交法違反(定員外乗車)の疑いでも調べている。

 ◇「助けて 子供が中に」

 現場そばのマンションに住む会社員、柚木藍さん(20)は、クラクションの音に気付き外に出た。周囲数百メートルの篠振池の脇の柵が約10メートルにわたって折れ曲がり、岸から約10メートルの池に黒いワゴン車が浮かんでいた。

 「ロープはないか」と叫ぶ男性の声が聞こえ、岸に向かって泳ぐ女性が見えた。女性は池の周りに集まった人たちが投げたロープにつかまり、歩道へ引き揚げられた。

 近くの会社役員、古賀博樹さん(55)も「助けて」という声を聞いて外に出ると、水面に4人の姿が見えた。近所の人が総出でロープなどを投げたが、なかなか届かない。「3人は何とか岸に着いたが、1人は力尽きて沈んでいった。どうしようもなかった」と振り返った。

 古賀さんの妻優子さん(50)は毛布を持って駆けつけ、救助された山本佑紀さんの体を温めた。山本さんは「子供が中にいる。まだ6カ月なのに。助けて」と叫び、池に向かって悠斗ちゃんの名を呼び続けた。

 池からワゴン車が引き揚げられたのは事故から約2時間半後。中から次々に男女が助け出されたが、動きのある人はいなかった。乗用車の秦智之さんが最後に収容されたのは午前4時過ぎだった。【関谷俊介、扇沢秀明】

 ◇プレゼント渡せぬとは

 亡くなった7人のうち井手綾美さんは幼いころから活発で、剣道やバレーボールなどスポーツが好きだった。24日夕、祖父の見明(みあき)さん(74)に、福岡県久留米市の焼き肉店の食べ放題に行くとうれしそうに話し、迎えに来た男友達と出掛けたという。見明さんが「気をつけて行っておいで」と声をかけると「はい」と元気に答えたといい、孫の突然の死が信じられない様子だった。

 石原瞳さんは「クリスマスパーティーに出かける」と、自宅をバイクで出たという。祖母の鶴長サユミさん(74)は「靴下やショールなどクリスマスプレゼントを用意していたのに渡せなくなるなんて。私が代わってやりたかった」と泣き崩れた。

 昼のテレビニュースで事故を知ったという末吉泰子さんの祖母(80)は「今年の正月に会ったきりだが、明るくて活発ないい子だった。専門学校への進学が決まっていたのに……」と肩を落とした。

 佐藤慎一郎さんの祖母ミツヨさん(77)は24日夕、出掛けようとした佐藤さんに「顔ば見せていかんね」と語りかけた。「虫の知らせだったんですかね。やんちゃでしたが心の優しい子。悲しすぎて涙も出てきません」【丸山宗一郎、金秀蓮、遠藤雅彦】

毎日新聞 2010年12月26日 北海道朝刊

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