【萬物相】「進歩」「保守」の正しいネーミング

 2009年、野党はネットユーザーを相手に「李明博(イ・ミョンバク)政権第二次改造内閣のネーミング募集」を行った。李政権の第一次内閣発足当時は、「カン・ブジャ(江南・不動産・富者)内閣」「コ・ソヨン(高麗大・ソマン教会・嶺南<慶尚道>出身)内閣」などと、女優の名にちなんだネーミングに成功したため、次の内閣も、との思惑があったのだろう。ネットユーザーからは200以上ものネーミングが寄せられた。無鉄砲内閣、羊飼い政権、天気予報政権、後進内閣…。だが、インパクトは最初の内閣ほどではなかった。

子路は孔子に「もし、衛の君主が先生をお呼びして政治を任せたとすると、先生はまず最初に何をされますか」と尋ねた。すると孔子は「名を正す」と答えた。孔子の時代は、名前と実情が一致しない乱世だった。子路が「現実とはかけ離れた考え方ですね」と返すと、孔子はこう答えた。「名を正さなければ、話の筋道が通らず、政治も成功しない」

 2004年の総選挙の際、ヨルリンウリ党は、ハンナラ党を「チャッテギ党(チャッテギ=野菜などをトラック単位で取り引きすること。大統領選で大企業が札束をトラックに積んでハンナラ党に渡したことから)」と名付けて攻撃した。昔も今も、政治の世界においてネーミングというのは、正しいかどうかは別として、どれだけ相手に打撃を与え、自分をそれらしく飾れるかということに集約される。政治勢力は扇動効果を高めるため、うそや偽りもいとわない。2年前、「米国の牛=狂った牛」というスローガンは、多くの人々を狂牛病(牛海綿状脳症〈BSE〉)の恐怖に陥れ、ろうそくデモを巻き起こした。

 巧妙なネーミングの強者といえば、やはり左派の従北主義者だろう。従北主義者は統一・平和・民族勢力を自負し、自身らのイデオロギー路線に従わない人々は「反統一・冷戦・反民族勢力」で片付ける。スパイを捕らえる対共捜査官を「拷問(ごうもん)技術者」と名付け、北朝鮮支援を批判すれば、「戦争狂」と呼ぶ。

 韓国学中央研究院の梁東安(ヤン・ドンアン)名誉教授がきのう、本紙とのインタビューで、「韓国社会では、進歩と保守という言葉が誤って使われている」と指摘した。一般的に、「進歩」には肯定的、「保守」には否定的なイメージが付きまとうが、いつからか「進歩」は左派の代名詞となり、右派は、旧式で変化を嫌う「守旧・保守」として受け止められるようになった。梁教授は、普段何気なく用いる「進歩系の教育監(教育長に相当)」という呼び方も、「左派(左傾)の教育監」とすべきと指摘した。考えてみれば、国民の貴重な税金が使われる学校給食を拡大し、「給食の無料化」と巧妙にすり替えたのも、左派の教育監による「作品」だ。韓国社会の理念・価値観の混乱を正すためには、まず「進歩・保守の名を正す」ことから始める必要がありそうだ。

金泰翼(キム・テイク)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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