「レジェンド旗揚げ戦」(10日、後楽園ホール)
プロレス名勝負数え歌が、13年5カ月ぶりに再び奏でられた。炎の飛龍・藤波辰爾(57)と革命戦士・長州力(59)が、黄金虎戦士・初代タイガーマスク(53)との3人で立ち上げた「レジェンド」の旗揚げ戦で27度目の一騎打ちを行い、藤波がエビ固めで丸め込んで3カウントを奪取。プロレス黄金時代の再現に、超満員札止め2054人のファンは熱狂した。
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往年の名勝負数え歌をコールしてきた田中秀和リングアナが「昭和57年10月8日、ここ後楽園ホールでそれは始まった」と口上を述べた。後楽園は長州がいわゆる「かませ犬発言」で藤波に牙をむいた、ライバル物語のスタート地点だ。
「パワーホール」で臨戦態勢の長州が、「ドラゴン・スープレックス」で白いガウンの藤波が入場する。最後の一騎打ちから4901日。立ち見も売り切れ、期待感が最高潮に達した午後2時7分、ゴングが鳴った。
藤波が左張り手で先制すれば長州はリキラリアートで逆襲。サソリ固めは藤波がステップオーバー前にロープに逃げ、ドラゴンスクリューから4の字固めで反撃する。
藤波は抱え投げ、ダイビングニードロップとたたみかけるが、長州は起き上がってラリアート。カウント2で返されるとトドメの一撃をねらうが藤波は両腕でブロックし、延髄斬り、卍固め、コブラツイストとたたみかけて回転足折り固め。90年12月26日の決め技だ。藤波はブリッジできなかったが長州は返せず、3カウントが入った。
藤波は「再び長州選手とシングルマッチができるとは本当に思ってもみませんでした」と、マイクで語りかけた。
昨年12月、総胆管結石の除去手術を受けた。医師の許可が出ないままの強行出場とあって「リングに立って長州に立ち向かえて感無量」は本音だ。「雰囲気や迫力は健在で1発1発に重さを感じた。彼がコンディションを整えてくれていてありがたかった」と、好敵手に素直に感謝した。
負けん気だけでぶつかり合った時代は遠くなり、今の2人にあるのは「今日のような雰囲気をプロレス界に取り戻したい」(藤波)という願いだ。藤波は「次に彼からシングルをやりたいと言われたら自分は逃げられない」と、再戦を示唆。“アラ還”の名勝負数え歌は、黄金時代を呼び戻すために奏でられる。