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松田喬和の首相番日誌:変貌しても整わず

 ここ1週間、ぶら下がり会見に臨む菅直人首相は大きく変わった。15日の会見では「自分の言葉で、自分が判断したことを、国民に直接伝えたい」と、変貌への決意を語った。

 例えば法人税減税を決めた後の14日は、「減税の重要性を考えてまず方針を決め、財源はさらに努力して実現する」と、指導力を強調。また長崎県の諫早干拓開門訴訟の上告見送りは、自らの指示で決定した。その直後の15日の会見では「(潮受け堤防の)構造も多分、国会議員の中でよく知っている一人」と、豪語した。

 「政治とカネ」を問われている民主党の小沢一郎元代表に対しては、政治倫理審査会への出席を強く求め、引かない姿勢だ。具体的折衝は岡田克也幹事長に委ねていたが、「最終的に判断しなければならない場面がくれば、当然判断します」と強調した。来週中には小沢氏と会談することになっている。

 首相が党代表選で小沢氏に勝利した9月、毎日新聞の全国世論調査で64%に跳ね上がった内閣支持率は、11月は26%にまで下がった。急落傾向に歯止めがかからない。要因の一つは、菅首相の指導力不足であり、もう一つは「政治とカネ」問題にまだけじめをつけられない民主党の体質にあることは、世論調査から見ても明白だ。

 5年近くもの長期政権を記録した中曽根康弘元首相は著書「自省録」の中で「その政権がどれだけのことを達成し得るかは、スタートダッシュの勢いで決まる」と、記している。

 政権発足後、ほどなくしてつまずいた菅首相は、指導力の誇示に加え、小沢氏への政倫審出席要請で「脱小沢」路線を改めて鮮明にすることによって支持率回復を目指しているようだ。政権の求心力が高まれば、「ねじれ国会」を解決する新たな策も浮上してくるかもしれない。

 だが、現状のままではせっかく菅首相が指導力を発揮して法案をまとめても、成立させる手順が整っていない。菅政権の前途は依然多難だ。(専門編集委員、65歳)

毎日新聞 2010年12月18日 東京朝刊

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