小沢、与謝野とニコ動“謀議” 保守結集で党分裂へ着々

2010.12.18


政界屈指の囲碁の打ち手で、策略家でもある小沢氏と与謝野氏(写真)。対局中には、生々しい会話が交わされる!?【拡大】

 菅直人首相(64)と民主党の小沢一郎元代表(68)が、週明け20日に会談する。小沢氏の衆院政治倫理審査会(政倫審)への出席をめぐる初の直接対決実現は、分裂含みの党内抗争がまた1段階、警戒レベルを上げたことを意味する。その直前の19日、小沢氏はたちあがれ日本の与謝野馨共同代表(72)と、囲碁対局を行う。2007年に福田政権下で持ち上がった大連立騒動の発火点となった顔合わせだけに、「政界再編の布石では」との憶測を呼んでいる。盤上で交わされる謀略は−。

 17日午後、国会近くの小沢氏の個人事務所。政倫審への出席を求めにきた民主党の岡田克也幹事長と小沢氏の会談は、「幹事長対一兵卒」とはまるで思えないほど、始まる前から小沢氏のペースだった。

 午後2時、小沢氏は党本部に秘書を送り込み、岡田氏に文書で出席拒否を伝えた。これを受けた岡田氏は面会を申し込み、30分後、指定された時間どおり小沢事務所に急行した。しかし小沢氏は別の事務所で待機し、岡田氏を約20分待たせてから会談に臨んだ。

 約20分間の会談のなかで小沢氏は「裁判で潔白を証明する。政倫審に出る必要はない」と完全拒否。岡田氏は「この問題が来年の通常国会の妨げになる」と食い下がった。

 しかし、小沢氏に「国会運営とか選挙は幹事長が責任を持ってやることだろう」とスゴまれると、「それはその通りです」と応じるしかなく、会談は決裂。週明けに菅首相と小沢氏の会談が設定された。

 一兵卒の取り扱いでトップが引っ張り出される異常事態となった対立の行方はどうなるのか。

 菅首相に近い若手議員は「小沢氏は続けて出席を拒否するだろうから、政倫審で招致議決をするしかない。幹事長、代表が丁寧に説得したのに拒否した、という形をつくり、議決に正当性を持たせるのが執行部の狙いだ」と解説した。

 執行部は小沢氏を国会に突き出すことで、内閣支持率を上げたうえで来年1月からの通常国会で野党の協力を得たい考え。招致議決に逆らう民主党委員はさしかえも辞さず、小沢氏がどこまでも拒否するなら、離党勧告や除名も検討する。

 対する小沢系議員は、党執行部の解任もできる両院議員総会開催に必要な、党所属議員の3分の1以上の署名を「もう集まった」(中堅)と宣言。議員半数以上の出席で両院議員総会が成立し、その過半数が賛成すれば、代表や幹事長の解任も可能だ。

 民主党中堅議員は「菅首相が出てきても収拾はつかず、かえって党内の亀裂は深まるだろう。指導力が問題視される事態になる。両院議員総会が開かれれば、それをきっかけに党が分裂するかもしれない」と危機感を語った。

 そんななか、小沢氏と与謝野氏の対局が19日、都内で実施。インターネットサイト「ニコニコ動画」の企画で、午後3時から対局し、4時から対談というスケジュールだ。与謝野氏は「ただのお遊びの世界だよ」とおどけるが、額面通り受け止める向きはない。

 07年に自民党の福田康夫首相(当時)と民主党の小沢代表で大連立構想が持ち上がる直前、両者の公開対局が行われた前例があるからだ。このときは小沢氏が圧勝した。

 自民党ベテラン秘書は「この大連立は、与謝野氏が秘書として仕えた中曽根康弘元首相と盟友の渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長が絵を描いていた。与謝野氏は都内のホテルの囲碁サロンで小沢氏と頻繁に囲碁を打って、いろいろ話していたようだ」と振り返った。

 今回も、なんらかの動きの前兆なのか。民主党中堅議員が話す。

 「小沢氏は菅首相を見限り、強制起訴を控えているため自らは表に出ずに政界再編をすることを考えているのでは。民主党を自ら割るのか、子飼いの議員に割らせるのかまでは不明だが、目指すのは菅−仙谷ラインと真逆の『保守の救国内閣』だ。自民党から安倍晋三、麻生太郎両元首相、伊吹文明元幹事長ら。国民新党の亀井静香代表もここに加え、キャスチングボートを握りたい」

 「政権を取れるなら、頭の本命はたちあがれ日本の平沼赳夫代表だろう。保守の結集という意味では象徴的だ。平沼氏には健康不安があるので、与謝野氏でもいいと考えているフシもある」

 タイミングとしては、(1)年内(2)年明けて通常国会冒頭ごろなども囁かれているが、本命視されているのは、通常国会で菅内閣が立ち往生する3月頃だ。

 ただ、年明けに強制起訴を控える小沢氏にどれだけ力が残っているかは懐疑的。菅首相に近い民主党中堅議員は「苦し紛れでしょ。小沢氏の保身に協力する勢力はない。大丈夫だ」と話した。

 小沢氏の政治生命は終局に向けたヨセに入ったのか、それとも起死回生の一手があるのか。

 

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