2010年12月20日
菅・小沢会談
正念場を迎えた首相
永田町の力関係はポストとは無関係だ。また位階勲等ともかかわりがない。すべては実力で決まる。その実力たるや本当に予想外の権威を発揮する。
例えばきょう、菅首相と小沢元代表が会談することになっている。菅氏は首相、代表であり、小沢氏は無位無冠の一兵卒だ。菅氏が小沢氏を呼びつけ、小沢氏が首相官邸に伺候する形になるが、実体はその逆だ。
その証拠には菅氏の方がオドオドし、小沢氏はふんぞり返っている。内容も容易に想像できる。「どうぞ政倫審に出席して、『政治とカネ』の件を説明してください」と頭を下げるのは菅首相だ。これに対し小沢氏は「イヤだ」とニベもない。
決裂か歩み寄りかは今の段階では不明だが、頭を下げる回数は首相の方が遥かに上であることは確実だ。両氏を比べると年齢や経歴の差ばかりではなく、人品骨柄のすべてが異なる。うるさい比較はともかく、菅氏にとって小沢氏は一生の大恩人だ。早い話が小沢氏にめぐり会わなければ菅氏の総理大臣はなかった。これは自他共に認める事実だ。
ところが、その大恩人がいまや民主党のお荷物になっている。小沢氏の存在そのものが民主党の足を引っ張ってやまない。菅内閣の支持率の急降下、民主党の不人気がその証しだ。
もし、小沢氏が政倫審に自主的出席を拒めば、菅氏は離党か除名を求めるしかない。弱腰の菅氏にとっては身を切られるくらい辛い仕事だ。引導渡す側が、逆に引導を渡されかねない。
小沢氏は「顧みてやましいことはやっていない」との信念があり、「強制裁判では必ず勝つ」と自信満々だ。「そこを何とか」と詰め寄られると、分裂も辞さないと開き直る可能性さえある。考えただけでも小沢氏には手を焼く。
いずれにしても、政権政党の党首が一兵卒のクビも切れないようでは鼎の軽重が問われる。その意味ではきょうは首相の正念場だ。
思い出してみると、菅氏はこの件については最初から逃げ腰だった。岡田幹事長にすべてを一任して知らん顔をキメ込んだが、とうとうお鉢が回ってきて本人直々の出番となった。とんだ赤恥をかくことになるかもしれない。
タダほど怖いものはないというが、菅氏は小沢氏のお蔭でタダ同然で位人臣を極める最高ポストに立った。今、そのツケを後払いさせられているところだ。ともかくきょうの会談を何とか乗り切ることが最重要課題だ。
(I)