小沢“生け贄”公開処刑へ 集団リンチで国民のガス抜き

★菅、証人喚問で徹底追及か

2010.12.21


菅首相の延命のため、小沢氏は証人喚問に引きずり出されるのか【拡大】

 民主党の小沢一郎元代表(68)が追い込まれている。菅直人首相(64)との会談で、政治倫理審査会(政倫審)への出席を拒否したことで、偽証罪に問われる公開の証人喚問に引きずり出されそうなのだ。菅首相は危険水域まで落ちた内閣支持率を回復させるため、生け贄のごとく小沢切りに邁進。国民不在の党内抗争は、剛腕政治家の人民裁判に発展しかねない情勢になってきた。

 「再考していただいた方がいい。証人喚問は質問の仕方にもよるが、政倫審の方がふさわしい。(来年1月の通常国会前というのは)1つのケジメをつけていい時期だ」

 「影の宰相」こと仙谷由人官房長官は21日午前の記者会見で、こう語った。小沢氏に政倫審への出席をうながす発言だが、「拒否すれば証人喚問だ」と静かに恫喝したようにも聞こえた。

 注目の頂上会談。菅首相は20日午前11時過ぎ、官邸5階の執務室に小沢氏を招き入れた。2人は1年4カ月前、鳩山由紀夫前首相を含めたトロイカ体制で政権交代を成し遂げた仲だが、菅首相は単刀直入、「政倫審に自ら出てもらいたい」と切り出した。

 小沢氏もおもむろに茶封筒から2枚のペーパーを取り出し、「裁判を今後行うことが確定している私が、政倫審に自ら出席しなければならない合理的な理由はない」との文面を読み上げた。両者の間には「党の同志」といった配慮や絆は見られなかった。

 その後、菅首相は小沢氏のウソを暴きにかかった。

 小沢氏が「(政倫審に)出ると言ったのは起訴議決前の話だ」と主張すると、菅首相は秘書官を呼び、起訴議決公表後3日後の10月7日に、小沢氏が記者団に「国会で決めた決定に私はいつでも従う」と語っていた発言記録を示した。

 また、小沢氏が「司法手続きに入っているから、出席できない」というと、菅首相は「加藤紘一(自民党元幹事長)も、(ヤミ献金事件の)捜査中に政倫審に出ている」などと過去の事例を示して反論。事前に綿密な「小沢対策」の準備をしていたようだった。

 結局、両氏の主張は平行線のまま。小沢氏は「国会運営や選挙への影響は、『政治とカネ』以外の影響が大きい」「仙谷氏の問責決議はどうするんだ」などと抵抗したが、菅首相は「政倫審に出ないなら、次の手段を取らせてもらう」といい、席を立ったという。

 小沢氏は会談終了後、盟友の鳩山氏に電話を入れ、「首相は感情的だった。離党勧告どころか、証人喚問までやるかもしれん…」と漏らした。

 菅首相がたくらむ証人喚問は、政倫審と並び、疑惑を晴らすために国会で事実関係を説明する場だが、政治家にとっては天と地ほどの差がある。

 政倫審が、非公開の席で国会議員に疑惑について説明・確認するのに対し、証人喚問はテレビ中継も入った公開の場で、疑惑について1つひとつ厳しく追及される。「大衆受けする集団リンチ」(与謝野馨元財務相)という指摘もある。

 証人喚問は強制出席であり、拒否すると「1年以下の禁固、1万円以下の罰金」。ウソの証言をすると偽証罪に問われ、「3カ月以上 10年以下の懲役」となる。

 小沢氏は1993年、東京佐川急便事件に絡み、証人喚問を受けているが、これが国民の間に「小沢氏=ダーティー」という印象を植え付けた面は否めない。強制起訴を前にして、小沢氏としては新たなマイナス材料を抱え込むことは決して得策ではない。

 これに対し、菅首相サイドには最高の延命策といえる。衆参ねじれで政権浮揚の秘策が見あたらない中、小沢氏の「政治とカネ」の問題を徹底追及することは、「世論調査で8割近くが賛成するテーマで、支持率回復が期待できるうえ、小沢氏を敬遠する野党各党との共闘も模索できる数少ないカード」(官邸周辺)というわけだ。

 現に、21日の新聞各紙の社説は「もはや証人喚問しかない」(産経)、「実現には証人喚問しかない」(読売)、「執行部は強い姿勢で臨め」(朝日)などと、菅首相を後押しする内容となっている。

 これを受けてか、自民党も21日午前の役員会で、小沢氏に対する政倫審招致議決には応じず、あくまで証人喚問を求める方針を決定した。

 永田町では「菅首相が『脱小沢』で政権を浮揚させたうえで、衆院解散・総選挙に打って出るのでは。来年の通常国会を乗り切る展望が見えない中、捨て身で政界再編まで突っ走る気ではないか」(永田町関係者)との見方も浮上している。

 菅首相は、小沢氏との会談後、官邸で記者団に対し、「きちんと(小沢氏が)国民に説明することが必要だ」と強調。岡田克也幹事長も「(27日の党役員会で)1週間の状況を踏まえて意思決定していく」と述べ、野党の出方を見極めつつ、小沢氏に対する最終判断をする考えを示した。

 小沢系議員が猛反発する中、菅首相は小沢切りを実現できるのか。

 

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