地方から霞が関へ包囲網を
国の出先機関の原則廃止は、補助金の一括交付金化と並び地域主権改革の重要な柱である。
しかし今後の工程などを盛り込んだアクションプラン案は全くもの足りない。具体策に乏しく、関連法案提出も年明けの通常国会ではなく2012年に先送りするとある。
理由は権限や予算、人員の地方移譲を嫌う中央省庁の抵抗を抑えられなかったためだ。これでは政治主導の看板が泣く。
■「集権」から「分権」へ■
全国知事会が、6月に閣議決定した地域主権戦略大綱の内容より後退していると批判し、重要項目に挙げているハローワークの地方移管を強く求める緊急声明を出したのは当然のことだ。
出先機関改革は、「集権国家」から「分権型国家」に転換する上で不可欠の課題である。また民主党のマニフェスト(政権公約)に掲げた、「国家公務員人件費の2割削減」を実現するための有力な手段にもなりうる。
一つの都道府県で完結する国道や1級河川の維持管理権限はその都道府県に移譲するとの地方分権改革推進委員会の勧告を受け、国土交通省と各都道府県が協議した経緯がある。首相官邸が移管に当たっての障害除去や条件整備に努めるべきだ。
大幅な前倒し実施や特区の適用により、出先機関改革を目に見える形で進める決意をアクションプランに明記すべきだ。支持率低下が著しい菅内閣の政権浮揚策にもなるのではないか。
アクションプラン案では、出先機関の事務・権限をブロック単位で移譲するとし、推進に必要な広域的な実施体制の枠組みをつくるための法整備を行うとした。
■移譲渋る理由が解消■
ブロック単位の移譲は、例えば道路や治山治水、国営公園などを担う国交省の地方整備局を丸ごと地方に移すということだ。地方分権改革推進委員会では出先機関に残す権限と地方に移譲する権限を区分けしようとして、うまくいかなかった。アクションプラン案のようにまず丸ごと地方に移譲する発想が必要だ。
またアクションプラン案は、丸ごと移譲の受け皿にブロック単位の広域連合や新たな広域行政制度を想定している。具体的には大阪など7府県が参加する関西広域連合や、九州の7県が設立を構想している「九州広域行政機構」があるようだ。
今月発足した関西広域連合は、地方自治法の規定に基づき、近畿地方整備局の権限の一括移譲などを国に要請する方針を掲げている。関西広域連合や九州広域行政機構が活動開始すれば「地方に受け皿がない」と各省庁が地方移譲を渋る理由が解消される。
広域連合の動きは首都圏や東北地方にもある。出先機関移譲の先延ばしが見え見えの霞が関に対する「包囲網」を、地方からどんどん広げてもらいたい。
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