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菅政権:「たちあがれ」に連立打診 野党との橋渡し期待 通常国会へ苦肉の策

 <分析>

 菅直人首相がたちあがれ日本に連立政権入りを打診したのは、11年度予算案をはじめ来年の通常国会審議を乗り切るために野党協力を得る第一歩とするためだ。自民党や公明党との連携が進まない中、たちあがれに他の野党との橋渡し役を期待する狙いがある。ただ、野党協力を取り付けるには、たちあがれも賛成した問責決議を受けた仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国土交通相の交代を含めた内閣改造と、野党が証人喚問を求めている小沢一郎元代表の国会招致問題を進めることが不可欠。首相がこうした障害をクリアできるかが課題となる。【野口武則、横田愛、葛西大博】

 ◇党内外から「野合」批判

 たちあがれは衆参両院議員3人ずつの計6人。参院で否決された法案を衆院で再可決できる3分の2(欠員と議長を除くと319議席)に現在の与党は8議席足りないが、たちあがれが加わり、衆院で6議席の社民党が協力すれば、再可決が可能になる。

 予算を執行するには、赤字国債発行を定めた特例法案など予算関連法案が参院で否決された場合、衆院で再可決する必要がある。関連法案が成立しなければ歳入が確保できなくなるおそれがあるからだ。

 ただ、首相にとっての障害は小さくない。首相は25日、小沢氏、鳩山由紀夫前首相らと小沢氏の国会招致を巡り東京都内のホテルで意見交換する。党分裂を懸念する連合の古賀伸明会長が話し合いを呼びかけたためだ。岡田克也幹事長は24日の記者会見で小沢氏の証人喚問について「(27日の役員会で)提案があれば議論する」と改めて強調。首相もインタビューで小沢氏招致について「国会の場で説明するとはっきり言っていたので、政治家として国民に対する約束をきちんと果たしてもらいたい」と語った。

 だが、小沢氏に近い党幹部は「27日の役員会では問題にする」と語り、小沢氏排除への動きに徹底抗戦する姿勢を示している。

 執行部の一手は苦しまぎれの側面もある。24日、国会内で開いた民主党国会対策委員会の役員会で、国対幹部は古川元久官房副長官に「召集日を早く決めてもらわないと困る」と迫った。しかし、岡田幹事長ら執行部はたちあがれへの連立打診の可否、小沢氏の国会招致問題、内閣改造という三位一体の問題に挟まれ、年末になっても召集日を確定できていない。

 参院(242議席)では民主106、公明19議席。公明党との協力関係を築けば過半数を回復できる。しかし、内閣支持率の急落などで公明党の菅政権離れは加速。山口那津男代表は24日、来年度予算案について「財政健全化への確固たる視点がない」と批判。菅政権に距離を置く姿勢を鮮明にした。自民党の谷垣禎一総裁も24日の記者会見で「国づくりの理念、哲学がうかがえない。これだけいいかげんな予算は初めてだ」と強く批判した。

 野合批判も障害だ。たちあがれは保守色が強く、リベラルな社民党を同時に取り込もうとしていることに、「典型的な数合わせ」との批判が党内外から既に出始めている。

 首相は12月10日の北朝鮮による拉致被害者家族との会合で、朝鮮半島有事の際に拉致被害者の救出に自衛隊を派遣する可能性に言及。たちあがれの平沼赳夫代表が15日の記者会見で「いいことだ。我々も協力していくことにはやぶさかではない」と評価していた。

 だが、民主党幹部は「社民党にお願いしながら、たちあがれと組むなんて矛盾」と指摘。公明党幹部は24日夜、「政権維持のための数合わせでまさに野合だ」と批判した。社民党幹部は「民主党が平沼氏と組むということは自分たちに出ていけということだ」と不快感をあらわにした。

毎日新聞 2010年12月25日 東京朝刊

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