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社説

政治この1年 失望の先に何がある 12月27日(月)

 政権交代への期待が急速にしぼみ、政治の信頼が大きく崩れた1年だった。

 民主党政権は鳩山由紀夫前首相の退陣で菅直人首相へと看板を掛け替えて出直しを図ったものの、そこでも失点を重ねた。菅政権は「危険水域」まで支持率を下げたまま、低空飛行を続けている。

 昨年の政権交代が歴史的な出来事だっただけに、反動は大きい。「国民の生活が第一」はどこに行ったのか。有権者の期待は失望や怒りへと変わりつつある。

   <迷走と自壊が続く>

 「迷走」と「自壊」。残念ながらこの1年の民主党政権には、そんな言葉が当てはまる。

 鳩山前首相が衝撃の退陣表明をしたのは6月初めだった。鳩山氏は沖縄県の米軍普天間飛行場の移設をめぐり「最低でも県外」と明言していた。「5月末決着」を目指すと期限を区切ってもいた。

 だが、実現への展望や交渉の中身がないことが次第に明らかになり、最終的に「辺野古案」に回帰した。沖縄県民の期待を裏切ったばかりか、政権の信頼も失い、退陣へと追い込まれた。迷走の末の自壊というほかない。

 続く菅首相はどうか。就任直後に支持率を回復させたが、それもつかの間。消費税率について「自民党が提案する10%を参考にしたい」と表明し、参院選は過半数を割り込む惨敗である。

 選挙後、菅首相は「唐突に消費税問題を挙げたから、こういう結果になり、大変反省している」などと述べている。自らの敗因を認めた格好である。

 「ねじれ国会」になってからの菅政権も、いいところがない。

 尖閣諸島、北方四島の領土問題で外交面での弱さを露呈したのに加え、柳田稔前法相の「国会軽視」発言など閣僚の問題発言が相次いでいる。

   <海図のない民主党>

 ここにきて、今度は「たちあがれ日本」に対する入閣要請である。「ねじれ国会」を何としても乗り切ろうとの思惑からだろうが、どこまで検討を重ねたうえでの連立構想なのか、疑問と言わざるをえない。

 「たちあがれ日本」は、「政策宣言」に自主憲法の制定を掲げ、「その中核になる」と宣言している政党だ。永住外国人の地方参政権や夫婦別姓に反対しているほか、靖国神社参拝を掲げる。

 これまでの民主党幹部の発言や党の方針と相いれない面が多いのではないか。

 例えば、菅内閣は今夏、靖国参拝を見送った。永住外国人の地方参政権や夫婦別姓についても、政権交代を果たしたときの「政策集2009」では実現の方向を掲げている。

 しかも、菅首相はつい最近、社民党に閣外協力を求めたばかりである。憲法堅持の社民党と「たちあがれ日本」とでは、落差はあまりに大きい。

 菅首相は「石にかじりついても頑張りたい」と述べている。まったく方向の異なる二つの政党とも連携を探ることが、その具体的な姿だとすれば、無定見との批判を免れない。

 鳩山・菅政権が迷走を続ける背景はどこにあるのか。

 両氏の政治思想やリーダーシップに疑問があるのは確かだけれども、それ以上に民主党そのものが構造的な問題を抱えているとみた方がよさそうだ。

 かねて民主党は右から左までの寄り合い所帯と言われていた。その寄り合い所帯を束ねる党の綱領がないまま、政権交代を最優先させて突っ走ってきた。

 政権交代を果たしたときのマニフェスト(政権公約)も、どこまで煮つめたものなのか、いまとなってははなはだ疑わしい。

 いざ政権をとってうまくいかないとなると、政策の方向がころころ変わる。「海図なき航海」のような民主党政権にとって、当たり前なのかもしれない。

 政策決定の仕組みも、はっきりしていない。政治主導と言いながら、どのようなプロセスが政治主導なのか、政府と党との関係はどうあるべきなのか、あいまいなまま政権運営を続けている。

 急な交代なので大目に見ようとの声がある。だが、もう「仮免」の時期は過ぎた。とばっちりを受けるのは国民である。

 民主党は土台を固めるべきである。そこが不十分では今後も迷走と自壊を繰り返しかねない。

   <統治能力の行方は>

 はたして迷走と自壊は民主党政権だけのことなのか。そんな疑問が頭をもたげる。自民党政権時代、安倍晋三、福田康夫両首相は続けて政権を放りだした。その後の麻生太郎政権は有権者の信頼を著しく欠いていた。

 それに愛想が尽きての政権交代ではなかったか。どの政党が政権に就いても統治能力が欠如しているとしたら、事態は深刻だ。

 再建の芽が出るのか、あるいは政治の力がこのまま衰弱の一途をたどるのか。来年は日本の将来を占う重大な節目となるだろう。

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