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クローズアップ2010:たちあがれ連立不調/「小沢招致」長期化 浮揚「改造」頼み

 ◇首相「苦肉の強硬論」 根強い「仙谷交代論」

 菅直人首相が27日、来年1月召集の通常国会前の内閣改造に言及したのは、たちあがれ日本との連立工作に失敗し、小沢一郎元代表の国会招致問題の長期化が決定的となる中、低下一途の政権の求心力を取り戻す狙いがある。首相は衆院政治倫理審査会(政倫審)招致議決に応じない場合は自ら離党するよう促し、「小沢抜き」の姿勢を鮮明にさせる一方、野党の審議拒否を回避するには問責決議を受けた政権の要・仙谷由人官房長官の処遇も検討せざるを得ないとの見方が強く、政権浮揚につながるかは不透明だ。菅政権は来年の政権運営の明確な展望が開けないまま年を越す。【中田卓二、葛西大博】

 27日正午から開かれた、たちあがれ日本の全議員総会は1時間半を超える激論となった。積極論を唱える与謝野馨共同代表に、園田博之幹事長は「民主党の体質はひどい。加わっても幻滅するだけだ」と反論した。

 結局、連立参加拒否の流れは園田氏がつくり与謝野氏も含めて了承した。平沼赳夫代表は記者会見で「危急的な政治状況」を打開するための将来的な連立を否定しなかったが、ある幹部は「完全野党」を宣言した。「菅政権は消費税一つ決められないだろう。11年度予算案にも反対だ。この政権は倒さなければだめだ」

 衆参の所属議員が計6人の小所帯で、たとえ連立参加しても参院で与党が少数派の「ねじれ」が解消されるわけではない。そのたちあがれからも拒絶された菅政権は与野党連携の糸口を失い、苦しい立場に追い込まれた。

 自民党の石原伸晃幹事長は「主義主張、信念が揺らいだら国民から愛想を尽かされる。たちあがれ日本のみなさんは賢明な判断をされた」と述べ、野党の足並みの乱れを回避したことに安堵(あんど)感をにじませた。

 菅首相が「あらゆる選択肢」として社民党からたちあがれまで左右勢力を問わず連携を呼び掛けるのは、通常国会では予算案を除いて法案を成立させる手だてがなく、政権が行き詰まるのが目に見えているからだ。「数合わせ批判などを気にして何もしなければ、座して死を待つだけになる」と民主党関係者は語る。

 難局を乗り切るために首相が描く戦略は、(1)小沢氏の「政治とカネ」の問題で妥協を許さず、「小沢切り」を徹底することで支持率アップにつなげる(2)たちあがれ日本を政権内に取り込み、これを糸口に内閣改造を実施し、さらなる連立相手の取り込みへの呼び水とする--が基本だった。だが、いずれも行き当たりばったりだ。

 「きょう決めたい。小沢氏が(政倫審に)出席してまとまるのが一番いい。小沢氏が出てこないでまとまることはあり得ない」。たちあがれの全議員総会直後の午後2時から始まった民主党役員会で首相は強調。小沢氏に近い輿石東参院議員会長は役員会後、鳩山由紀夫前首相に電話で「首相が一番強硬だった」と漏らした。

 だが、強硬姿勢は政権の苦しさの裏返しでもある。小沢氏の国会招致問題は来年の通常国会で野党協力を進めるための障害を除くことが大義名分だが、小沢氏は出席しない意向を重ねて示し、自民、公明両党は招致議決に加わらないと表明している。小沢氏に近い党幹部は、役員会の方針決定はパフォーマンスだと説明してみせた。

 役員会では菅首相のかつての選挙区だった西東京市議選惨敗について「政治とカネの問題が影響した」との指摘が出ると、小沢氏に近い平田健二参院幹事長は「国会では問責決議の問題が大きい」と仙谷氏の交代が先決と反論。岡田克也幹事長が「政府の問題の問責決議を持ち出すのは越権行為だ」と色をなす場面もあった。

 だが、与野党内には仙谷氏らは交代せざるを得ないとの見方は根強い。仙谷氏が続投した場合の通常国会での審議拒否方針について、自民党の石原幹事長は27日、記者団に「まったく変わっていない」と明言した。

 ◇小沢氏、解散を警戒 「心の準備をしておけ」

 首相から「排除の論理」を明確に突き付けられ、出処進退を迫られた小沢氏も苦境に立たされている。

 「下手をしたら衆院解散になる。心の準備をしておけ。首相と仙谷氏は普通の人と違うから絶対に辞めない」。小沢氏は27日夜、国会近くの飲食店に誘った新人衆院議員らを前にこう語った。夕方、国会内であった新人・中堅議員の会合に出席して「地元に帰らないなら一緒に飲もう」と声をかけて集めた会合だった。

 小沢氏らが警戒するのは、与野党連携が進まず、党内対立が激化した末に首相が衆院解散・総選挙に踏み切る展開だ。小沢氏系には政党支持率に勝敗が左右されやすい比例単独の議員や選挙基盤の弱い新人議員が多い。

 「通常国会で、野党が参院で菅首相の問責決議案を提出したら、局面打開のために首相は衆院を解散してしまうのではないか」。小沢氏系の新人議員らは27日、鳩山グループの中堅議員に相次いで不安を訴えた。輿石参院議員会長には「いざとなったら動く準備はできている」と執行部批判を目的とする両院議員総会開催を促す声が押し寄せるが、輿石氏は「そんなことをしたら分裂になる」と制止。27日の小沢氏支持の政務三役会合では「1年生に冷静になるよう呼びかける」と確認。出席者の一人は「ここからは騒がない」と語った。

 小沢氏は内閣改造で仙谷氏を交代させ、小沢氏系議員の登用で「挙党態勢」を築くという復権シナリオを描いてきた。首相は内閣改造に言及したが、「小沢切り」も同時に明確にし、シナリオ実現の可能性は低い。

毎日新聞 2010年12月28日 東京朝刊

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