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'10回顧 政治 期待に背いた混迷ぶり '10/12/28

 「歴史的」と評された昨秋の政権交代から1年半にもならないのに、国民の期待はほとんど失われたかに見える。

 共同通信社が先週末実施した世論調査によると菅内閣の支持率は23%と11月下旬の調査と変わらぬ低水準。一方、内閣の不支持率は67%に達している。

 7月の参院選で民主党が大敗。衆院と異なり野党が参院の多数を占める「ねじれ国会」となった。尖閣諸島付近での中国漁船衝突事件などで露呈した無策ぶりも加わり、内閣は混迷を深めている。

 6月に退陣した鳩山由紀夫前首相から米軍普天間飛行場移設と「政治とカネ」という懸案を引き継いだ。いずれも解決するどころか、糸口も見いだせていない。

 沖縄県民に重い負担を強いている普天間移設問題で鳩山前首相は「最低でも県外」と期待を抱かせた。ところが従来通りの名護市辺野古沖への移設で米国と合意。菅直人首相も同じ立場だ。

 11月の知事選で「県外移設」を掲げて再選された仲井真弘多知事を訪問した首相は理解を求めたが、逆に反発を招いた。「県内移設は認めない」との沖縄の民意はもはや動かしがたいのではないか。地元経済振興策の充実だけでは、局面の打開は難しそうだ。

 「政治とカネ」の象徴となった小沢一郎元代表の国会招致問題は民主党内での「神経戦」が続く。

 国民の批判を受けて、前首相の退陣と同時に党幹事長を辞任した小沢氏。収支報告書虚偽記入事件で、検察審査会の議決による強制起訴が決まった。

 しかし政治家としての説明責任はいまだに果たしていない。あれこれと言い訳を重ね、国会での釈明を拒み続けている。司法の場で決着を図ると言っても、国民はとても納得できないだろう。

 菅首相は国民受けする「脱小沢」をアピールした組閣や党代表選後の改造人事で、支持率をその都度高めてきた。しかし直接会談でも、小沢氏を説得できなかった。首相の指導力が十分に発揮されているとはいえまい。

 野党側は小沢氏の証人喚問で足並みをそろえる。今後は参院で問責を受けた仙谷由人官房長官らの処遇も焦点になる。政権にとって予算関連法案や国会承認人事を通過させるハードルは高い。対応を誤れば、混迷はさらに深まる。

 民主党はここにきて、たちあがれ日本や社民党に連立や協力を呼び掛けたが、実現は難しかろう。単なる数合わせにしか見えない。

 むしろ政府が予算案などの説明を尽くし、野党に建設的な対案を求めて熟議を重ねることこそ、議会政治の本領のはずである。

 この間、首相は参院選直前には唐突に消費増税を口にし、批判を浴びると封印。税制の抜本改革をめぐる論議を遅らせ、予算編成にも悪影響を及ぼした。そんな姿勢も指導力が問われる一因だろう。

 本格政権を目指すのなら、懸案解決への道筋をはっきりさせる必要がある。進退を賭してでもやり遂げる覚悟が試される。




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